The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Oct 7 - Oct 9, 2017Nagoya Congress Center
The Japanese Association of Educational Psychology
The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Oct 7 - Oct 9, 2017Nagoya Congress Center

[JB02]合理的配慮におけるICT活用の可能性ICT活用の動向と実践

吉森丹衣子1, 守谷賢二2, 田実潔#3, 小川修史#4, 山口禎恵#5, 斎藤富由起6, 小野淳7(1.法政大学大学院, 2.淑徳大学, 3.北星学園大学, 4.兵庫教育大学, 5.つくば市立春日学園義務教育学校, 6.千里金蘭大学, 7.千里金蘭大学)
企画主旨
(守谷 賢二・吉森 丹衣子)
 昨年,我が国で「障害者の権利に関する条約」締結に向けて「障害者差別解消法」が施行された。これにより,障害を理由とした不当な差別が法的に禁止され,障害者に対する合理的配慮の法的義務および努力義務が明示された。
 合理的配慮の実施は教育機関にも適用される。中央教育審議会初等中等教育分科会報告(2012)は条約の定義に照らし,合理的配慮を「障害のある子供が,他の子供と平等に「教育を受ける権利」を享有・行使することを確保するために,学校の設置者及び学校が必要かつ適当な変更・調整を行うことであり,障害のある子供に対し,その状況に応じて,学校教育を受ける場合に個別に必要とされるもの」と定義している。
 この定義に添えば,学校は子どもの障がいの状態に応じて,適切な支援(環境整備等)を行う必要がある。その具体例の1つとして,「弱視の児童生徒に対する拡大教材映像装置の設置や,文字を拡大するソフトウェア等の活用」などICTの活用がある。
 ICTの活用は,近年,文部科学省が策定した「教育の情報化の推進」により,急速に環境整備と実践が進められている。文部科学省(2016)が行った教員のICT活用指導力に関する調査によれば,授業にICTを活用して指導する能力について,「わりにできる」,「ややできる」と答えた割合は70%におよんでいる。このことから,教育現場においてICTの活用が進んでいると推察される。
 文部科学省(2009)が作成した「教育の情報化に関する手引き」によれば,ICTの活用は,児童生徒の学習意欲や効果を高めるだけではなく,特別な支援を必要とする児童生徒のニーズに合わせて活用することで,学習・生活上の困難の改善にも有用とされている。 
そのためICTの活用が「教育の情報化の推進」の一部であると同時に,合理的配慮に基づいた特別支援にもなりえることがわかる。
 しかし,「合理的配慮」,「ICT活用」ともに導入されてからまだ日が浅く,教育現場における合理的配慮の理解と実践は,十分なものとは言えないだろう。また,先述したように,合理的配慮に基づいたICTの活用は,特別支援教育に大きな効果をもたらすと考えられるが,これに関する研究や実践も乏しい状態にあるのが現状である。
 そこで本シンポジュウムでは,合理的配慮の理解とICT活用の可能性について北星学園大学アクセシビリティ支援室室長の田実潔氏をお招きし,基調報告をいただく。また,小川修史氏からは,ICTの活用における動向と活用の意義について話題提供いただく。さらに,実際の学校現場における実践については山口禎恵氏からご報告をいただく。
 本シンポジュウムを通して,合理的配慮の目的を確認し,ICTを活用した支援の意義と実践について検討したい。また,参加者とともに,よりよい支援の方法について検討・共有できれば幸いである。
 
基調報告
合理的配慮とICT活用の可能性
(田実 潔)
 障害者差別解消法が2016年4月に施行され1年が経つ。本法律により,公的機関および民間の双方に障がい者に対する合理的配慮の実施が求められることとなった。これにより,教育機関においても特別な支援を要する児童生徒に対して,合理的配慮を実施することが義務づけられた。
 文部科学省は平成24年から,国連における障害者の権利に関する条約の採択などの動きを受け,共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システムの構築を検討しており,このシステムの構築においては合理的配慮の提供が必要条件とされている。
 文部科学省(2012)が行った調査で,特別な支援を必要とする児童生徒の増加が指摘されていることからも,合理的配慮の理解と実践は教育現場において急務と言える。
 そこで本シンポジュウムでは,障害者差別解消法に基づく合理的配慮が,教育機関に対して求める実践とは何であるかについて検討したい。また,障害者差別解消法を機に,本学に設立されたアクセシビリティ支援室の実践について報告を行いながら,ICT活用の可能性についても検討したい。
 
特別支援におけるICT活用の意義と動向
(小川 修史)
 近年のグローバル化や情報化の進展により,子どもたちを取り巻く環境は大きく変化している。これを受け,21世紀を生きる子どもたちにはICTを最大限活用した学びが求められている。
 この流れを受け,文部科学省は平成23年に,教育の質の向上を目的として「情報教育」,「教科指導のける情報通信技術の活用」,「公務の情報化」の3つの側面に通じた「教育の情報化ビジョン」を策定し,教育現場におけるICT活用を推し進めた。
 加えて平成23年から25年にかけて「学びのイノベーション事業」としてICTを活用した指導方法の開発,学習者用デジタル教科書・教材の開発,それらの授業内での活用について効果検証等を行っている。
 この調査において,8割以上の教員がICTを活用した授業は,児童生徒の意欲,理解,表現や技術,思考の深化・広がりなどに対して効果的であると評価した。このことから授業内でのICT活用によって児童生徒の学習の質の向上が期待された。
 しかし,ICTは子どもたちの学習意欲等だけではなく,特別な支援を要する児童生徒の学校生活における困難の克服や改善においても期待が寄せられており,文部科学省(2013)によって特別支援におけるICTの活用例も示されている。
 そこで本シンポジュウムでは,教育現場におけるICT活用の動向について報告するとともに,ICT教材を活用する意義について話題提供を行う。


特別支援学級でのICT活用の実践
(山口 禎恵)
 特別支援学級には,LDやADHD,自閉症スペクトラムなど,さまざまな障がいを抱えた児童生徒が多数在籍している。障がいに伴い求められる支援は,同様の診断を受けていても状態像によってさまざまであり,個々のニーズに合わせた支援が必要とされている。
 文部科学省は平成21年に「教育の情報化の手引き」を公表し,その第9章において特別支援教育におけるICTの活用をまとめている。そこでは各障がいに合わせた教科指導等におけるICT機器の活用,教材の工夫,環境整備によって,指導効果を高めることが求められている。しかし,特別支援学級におけるICT活用の実践については,未だ報告は乏しいのが現状である。
 そこで本シンポジュウムでは,ICT教育モデル校であるつくば市立春日学園義務教育学校の特別支援学級における実践について話題提供を行う。

指定討論
 本シンポジュウムの指定討論は,大学教員として学生相談の運営に携わる守谷賢二と,情報教育を専門とする小野淳,長年スクールカウンセラーとして学校に勤務し,子どもの支援について研究・実践を行っている斎藤富由起である。
 守谷は大学における合理的配慮の観点から,学内での支援の取り組みについて指定討論を行う。小野はICT活用の観点から,斎藤は子どものニーズに応じた支援方法の観点から,それぞれ指定討論を行う。
 「合理的配慮」および「ICT」は,今後の学校教育における特別支援において欠かせない概念である。特にICTの活用は教育現場において急激な速さで広がりをみせている。
 本シンポジュウムにより,学校現場でのより適切な支援とICTの活用について,新たな知識と気づきを与えるものとなれば幸いである。