The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Oct 7 - Oct 9, 2017Nagoya Congress Center
The Japanese Association of Educational Psychology
The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Oct 7 - Oct 9, 2017Nagoya Congress Center

[JF02]「セルフ・エスティーム」研究の抜本的再考(3)本当のセルフ・エスティーム教育と評価方法とは?

山崎勝之1, 内田香奈子2, 横嶋敬行3, 賀屋育子4, 村上祐介5, 内山有美6, 永井明子7(1.鳴門教育大学, 2.鳴門教育大学, 3.兵庫教育大学, 4.兵庫教育大学, 5.プール学院大学, 6.四国大学, 7.プール学院大学)
本シンポジウム企画の背景と目的

 セルフ・エスティームは,研究界のみならず,教育界や一般社会からの注目度が高い特性である。とりわけ学校教育においては,児童・生徒の適応上の問題を前にこの特性の不足が原因として指摘されることが多く,それだけにその育成には力が入れられてきた。
 しかし近年の研究は,このセルフ・エスティームが思いのほか,健康や適応,それに遂行力に好影響を与えていないことが明らかにされつつあり,悪影響を与えることも指摘されている(e.g., Baumeister et al., 2003)。この現況のなか,セルフ・エスティームの概念が再構築され,それにともない測定方法も新たに開発されている。
 このような動向にもかかわらず,学校教育では,依然として旧来のセルフ・エスティームの概念と測定法が使用され,その結果として,適用される育成教育も誤った概念の育成を目指し,効果評価も誤った測定方法で行われている。
 本シンポジウムでは,まず,これまでのセルフ・エスティーム研究から近年の研究へとその変遷の紹介を進める中,セルフ・エスティームの新規概念と測定方法を紹介する。そして,その新概念に沿ってセルフ・エスティームを育成する教育を紹介し,あわせてその教育効果の測定方法も紹介する。また,実際の教育適用と効果評価結果も提示したい。
 さらに本シンポジウムでは,望ましいセルフ・エスティームのみではなく,問題のあるセルフ・エスティームでさえ瑕疵なく測定できていない現状を指摘し,この点でも概念,測定法,教育の観点から新たな研究を紹介したい。

セルフ・エスティームの概念の問題

 これまでのセルフ・エスティームの概念は,その適応的側面と不適応的側面を弁別していない。この弁別はRosenberg (1965)にその一端が見られるが,近年のDeciらやKernisらの新規概念が弁別を意識した試みになる。そして,近年の弁別的概念構築の極めつけは,山崎ら(2017)の自律的ならびに他律的セルフ・エスティームになる。
 他律的セルフ・エスティームの概念はDeciらの随伴性セルフ・エスティームとほぼ同義であるが,自律的セルフ・エスティームはDeciらの真のセルフ・エスティームと比較して,その要素の構成と結合性において異なり,何よりも,その測定が質問紙のような意識上での測定ではほぼ不可能で,非意識での測定が必須になる。

セルフ・エスティームの測定の問題

 この領域でもっとも頻繁に使用されて来たのはRosenbergによる質問紙である。しかし,この質問紙は,彼が提起する概念が正しいとしても,その概念を測定する出来映えにはなっていない。むしろ,彼が不適応的なセルフ・エスティームとしてとらえた随伴性セルフ・エスティームを測定する特徴が強い。
 そもそも質問紙を使用した測定方法では,適応的なセルフ・エスティームの測定はおぼつかなく,それは山崎ら(2017)が示唆するように,本来非意識下で機能するセルフ・エスティームを意識上で測定しようとするときに付随する測定の歪みに起因する。
 そこで,非意識下での測定を可能にする方法が,潜在連合テストを用いて横嶋ら(2017)が開発した測定法である。そして,この測定法の革新は他律的(随伴性)セルフ・エスティームにも及び,その方向でも精度の高い質問紙が賀屋ら(投稿中)により開発されている。

本当のセルフ・エスティーム教育

 概念が刷新された以上,その育成教育も刷新される必要がある。この新概念の育成に適合した学校での予防教育が,TOP SELFと銘打って開発されている。この教育が正に自律的セルフ・エスティームを育成できるかどうかの決定には,効果評価を参照する必要がある。そこで,この効果評価とともに,この教育の自律的セルフ・エスティームの育成方法としての実際を紹介したい。
 こうして,セルフ・エスティームの概念と測定法,そして教育方法とその効果を紹介した後,3名の精鋭の指定討論の先生がたとともに,今後のセルフ・エスティーム研究と教育のあり方を討議したい。 
新しい概念と評価方法に基づく,これからのセルフ・エスティーム教育  山崎 勝之
 これまでのセルフ・エスティームについて適応と不適応的側面を区別する試みのなか,山崎ら(2017)は自律的ならびに他律的セルフ・エスティームの2概念を提起している。このうち,自律的セルフ・エスティームが健康や適応に好影響を及ぼし,その測定は,質問紙などの意識上での回答では難しく,非意識のままで測定することが必須になる。そこで横嶋ら(2017)は,潜在連合テストを用いて児童に集団で実施できる紙筆版測定法を開発し,信頼性と妥当性も確認している。
 こうして,セルフ・エスティームの概念と効果評価の測定方法が確立され,この概念の育成を目指す教育方法が求められる。この概念の教育という点では,鳴門教育大学で開発され実践が進められている「いのちと友情の学校予防教育」(TOP SELF: Trial Of Prevention School Education for Life and Friendship)が適用できる(山崎,2015)。そして,そこでの多数のプログラム群のうち,「自己信頼心(自信)の育成」が自律的セルフ・エスティームの育成を可能にする教育となる。
 この教育は,無意識と意識の連動の中,情動と感情を十分に喚起し,その状態で教育目標となる高次な心的特性を習得させるという理論と方法論をもつ。実際の授業は,児童・生徒を強く引きつけ授業に引き込ませるほどの魅力がある。理論はもとより,教育目標にまでエビデンスを付与し,教育科学となろうとするこの教育は,どの子どもにも授業での居場所を提供し,すべての子どもを授業の主役にする力があり,学校教育を刷新する。

教育の効果をセルフ・エスティームの多面的な評価からみる  横嶋 敬行
 「自己信頼心 (自信) の育成」プログラムは,自律的セルフ・エスティームの育成を目標とし,教育が構成されている (山崎, 2015) 。一方,セルフ・エスティームの測定法では,世界的に広く使用されてきたRosenbergの尺度(RSES)に適応的側面と不適応的側面が混在していることが指摘され(伊藤・川崎・小玉, 2011),また,適応的側面である自律的セルフ・エスティームの測定には非意識の測定法が必要であると論じられるなか(山崎ら, 2017),プログラムの教育効果評価を行うために,新たな測定法の開発が求められていた。
 こうした研究の展開を受け,横嶋ら (2017) は,非意識の測定法である潜在連合テスト (IAT) の方法論を精査しつつ,学校教育での使用も見据えた児童用紙筆版セルフ・エスティーム潜在連合テスト (SE-IAT-C) を開発した。そこでは,セルフ・エスティームを測定する既存のIATの問題点を整理し,適応的側面に焦点化して測定するための方法論が提示されている。また,開発した測定法の信頼性を確認するとともに,SE-IAT-C得点と担任教師による児童の行動評定の関連から妥当性の検討を行っている。さらに,SE-IAT-Cを用いた教育プログラムの効果評価に関する研究も進められている。
 本発表では,SE-IAT-C開発の理論的背景に触れたのち,SE-IAT-Cおよび児童用RSESを用いた「自己信頼心 (自信) の育成」プログラムの効果評価の結果について扱う。そこでは,プログラムの自律的セルフ・エスティームへの教育効果を示しながら,適応的側面に焦点化した教育の効果評価モデルについて提示したい。

他律的(随伴性)セルフ・エスティームの測定方法と教育への適用  賀屋 育子
 横嶋ら(2017)によってSE-IAT-Cが開発されたことで,自律的セルフ・エスティームに焦点化した研究および教育が進んでいる。一方,概念と測定方法の両観点からセルフ・エスティームの適応的および不適応的側面が精緻化されていくなかで,教育効果評価において適応的側面の高まりをより効果的に捉えていくためには,不適応的側面である他律的セルフ・エスティームの測定も行っていく必要がある。
 他律的セルフ・エスティームは,随伴性セルフ・エスティームとほぼ同義の概念に位置づけられていることから,その測定法を用いることが考えられるが,既存の測定法にはいくつかの課題がある。随伴性セルフ・エスティームの測定法は,自己価値の随伴を領域別 (多因子構造) に捉えるCroker et al. (2003)の尺度と,単因子構造の尺度として作成されたParadise & Kernis (1999)の測定法がある。他律的セルフ・エスティームは単因子構造が優先的に研究推奨されているため,Paradiseらの尺度を用いることが適当である。しかし,近年,Schwinger et al. (2015)の研究では,多因子構造であることが指摘されている。実際の項目内容を見ても,随伴領域を規定する表現が散見されるため,内容的妥当性の側面からも課題がある。
 そこで本発表では,単因子構造からなる他律的セルフ・エスティーム尺度の開発過程とその特徴について紹介する。そして,自律的および他律的セルフ・エスティームの両側面からのアセスメントによるセルフ・エスティーム研究および教育の可能性について提示したい。

指定討論から全体討議へ

 3名の話題提供の後,指定討論者として村上氏,内山氏,永井氏をお迎えしている。これまで指定討論の先生がたとは,セルフ・エスティームの概念,測定法,教育について討議を重ねて来ている。
 そこで,これまでのシンポジウムにはない運営で,指定討論者と話題提供者が相互に意見交換しながら課題の解決へと理解を深める討議時間を設けたい。