The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Oct 7 - Oct 9, 2017Nagoya Congress Center
The Japanese Association of Educational Psychology
The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Oct 7 - Oct 9, 2017Nagoya Congress Center

[JF05]発達的行動遺伝学の現在児童期・青年期・成人期の双生児コホート研究

安藤寿康1, 藤澤啓子2, 川本哲也#3, 鈴木国威#4, 本多智佳#5, 滝沢龍#6(1.慶應義塾大学, 2.慶應義塾大学, 3.慶應義塾大学, 4.大阪人間科学大学, 5.大阪大学, 6.東京大学)
主   旨
 遺伝要因が環境要因とともに人間の心的・行動的形質の発達に無視できない影響を及ぼしていることは,長年にわたる双生児法による行動遺伝学の頑健なエビデンスによって明らかにされている(eg, Plomin et al.,2013; 安藤, 2014)。双生児法は,遺伝要因と家庭環境を共有する一卵性双生児と,家庭環境は共有するが遺伝要因は一卵性の半分の未共有する二卵性双生児の分散・共分散の情報から,遺伝要因・共有環境(家族を類似させる環境)・非共有環境(一人一人に固有の環境)の影響を明らかにすることができる。
 近年は,特に発達過程において,多時点で複数の関連ある心的・行動的形質や教育的・社会的環境に及ぼす遺伝要因と環境要因の影響が,どのように変化し,また安定を保つのかを,縦断的・横断的なデータベースを組織的に構築して検討する双生児プロジェクトが国際的に数多く立ち上がっており,わが国も例外ではない。
 このシンポジウムでは,現在わが国で大規模双生児研究プロジェクトを遂行する二つの研究拠点,すなわち「慶應義塾ふたご行動発達研究センター」と「大阪大学大学院医学系研究科附属ツインリサーチセンター」のデータベースから,最新の知見を紹介する。前者は主として乳児期から成人期まで心理学的変数を中心に,また後者は児童期から老年期まで医学的変数を中心に,調査を実施しているが,互いに共有する関心領域も多い。世界的な双生児研究に関わる指定討論者も交え,日本における双生児研究の現状と将来展望を考えたい。


幼児期における実行機能の発達と親の養育態度との関連
(慶應義塾大学 藤澤啓子)

 実行機能とは,行為や思考のモニタリング及びコントロールの役割を担う高次の自己制御的認知スキルである。幼少期における実行機能の高さと,後のさまざまな面における適応的な発達との関連が知られている。
 近年,家庭の社会経済的地位などの家庭環境以外に,子どもの行動への反応性や自律的行動へのサポートといった親の養育態度が,幼児期における実行機能の発達に関連することが分かってきた。しかし,多くの研究において,実行機能の個人差を説明する生物学的要因(遺伝要因)が考慮されておらず,実行機能を育む環境要因やその効果量について十分な検討ができているとは言えない。 そのため,生物学的要因と環境的要因の双方の影響を同時に検討する行動遺伝学的研究が,実行機能を育む要因に関する知見の蓄積に貢献することが期待できる。
 慶應義塾大学ふたご行動発達研究センターでは,首都圏在住の双生児とその保護者から,双生児が乳児期より各種調査にご協力をいただき,縦断データを収集するコホート研究プロジェクト(首都圏ふたごプロジェクト)を続けている。本発表では,プロジェクトの一部として収集された,双生児幼児の実行機能と双生児の母親の養育態度に関する二時点の縦断データ(在胎週数で修正した36及び48か月齢)を分析した結果を報告する。具体的には,潜在変化スコアモデルと行動遺伝学モデルを統合させたモデルを用い,一時地点目の実行機能及び養育態度が,一時点目から二時点目にかけての変化に対してどのような関連を持つか,またその関連の背後にはどのような媒介要因(遺伝要因・環境要因)がみられるのかについて検証した結果を報告する。それを踏まえ,幼児期における親の養育態度が子どもの実行機能の発達に及ぼすプロセスについて議論をしたい。


利き手の発達における遺伝的影響の変動
大阪人間科学大学 鈴木国威

 利き手の発達は運動発達や言語発達,空間の選好など様々な心理的要因と関わっている。したがって,利き手の発達を正確に捉えることは,利き手を単に理解することだけに留まらず,発達全般を検討する上で重要であると考えられる。
 利き手が観察され始めるのは誕生前の胎児期であることが報告されている(Hepper, Wells, & Lynch, 2005)。また,Anett, McManusなどの利き手のモデル(Annett, 1978; McManus, 2002)においても,遺伝が利き手の形成に重要な役割を担っている。これらのことから利き手の形成には遺伝的影響が存在すると考えられていた。成人においては,双生児法による多変量遺伝解析(Suzuki & Ando, 2014)や量的遺伝解析(Armor, Davision, & McManus, 2014)などから,遺伝の影響はおおよそ25%程度であり,また影響の強い一つもしくは少数のメジャー遺伝子ではなく,影響度の弱い多数の遺伝子から成立する複数の遺伝因子構造であることが示されている。
 しかしながら,乳児期や幼児期における利き手の遺伝や環境要因を検討するためには幾つかの点を考慮せねばならない。一つは加齢による遺伝的影響及び遺伝要因の変化である。もう一つは遺伝的影響の大きさを変容する環境要因である。特に後者の要因は,成人における利き手の遺伝構造の複雑さからの推察のみならず,乳児や幼児の利き手を測定することの困難さにも関連しており,十分に検討する必要性がある。
 そこで本発表では,1)発達おける利き手の変化や遺伝的影響の変化,2)また複数の課題間における利き手の表れを検討することで環境によって変動する遺伝的影響の大きさを報告する。首都圏双子プロジェクトにおいて,生後1歳頃から4歳ごろまでの双生児からデータを収集したものを報告する。


一般パーソナリティ因子と一般知能との関連
川本哲也(日本学術振興会特別研究員・慶應義塾大学文学部)
 
 一般パーソナリティ因子 (General Factor of Personality: GFP) とは種々のパーソナリティ特性の背後に存在する高次因子である (e.g., Musek, 2007)。GFPは社会における有用性 (social effectiveness) を反映したものと考えられ (Van der Linden, Dunkel, & Petrides, 2016),一般知能と同じく,社会の中で自身の目的を達成するための一つの要因である。
 生活史理論 (Life History Theory) は,ヒトを含む多くの生物種が環境に応じてリソースをどのように分配するのかを理論化したものである。この生活史理論に基づくと,GFPと一般知能の高さは共に安定した環境下で好まれる遅い生活史戦略の指標と考えられ,両者の間には関連が見られることが期待される。しかし近年の知能に関する研究は,一般知能と内容特異的な特殊化された知能がヒトの個体発生の異なる側面に関連することを指摘しており,遅い生活史戦略としては一般知能よりもむしろ特殊化された知能の方が好まれるという (Woodley, 2011)。このように,GFPと一般知能の関連性については異なる理論的示唆が提唱され,さらに実証研究の知見も一貫していない。また,仮に両者の間に関連性があるとして,その関連性が遺伝的要因と環境要因のどちらによるものなのかは,表現型レベルの相関では明らかにできない。
 そこで本話題提供では,GFPと一般知能の関連を双生児データを用いた行動遺伝学的分析から検討した結果を報告する。慶應義塾双生児研究 (Ando et al., 2013) では,1998年に京大Nx式知能検査 (苧阪・梅本, 1973) とNEO-PI-R (Costa & McCrae, 1992; 下仲・中里・権藤・高山, 1999) を実施しており,2005年にも同様に京大Nx式知能検査とNEO-FFIを実施している。この2時点の縦断データを用い,GFPと一般知能の関連性とその背後の遺伝的要因と環境要因の寄与,さらに縦断的に両者がどのように関連しうるのかを検討した。結果,GFPと一般知能に対するそれぞれの非共有環境の間に統計的に有意な関連があることが示唆された (r = .15; 95%CI = [.02, .28])。本話題提供では,この結果をもとにパーソナリティと知能の発達と進化について議論を深めていきたい。

成人双生児を用いた 社会生活機能に関する検討本多智佳 (大阪大学大学院医学系研究科附属ツインリサーチセンター)

 諸外国に例を見ないスピードで高齢化した日本は,平成27(2015)年10月1日現在,65歳以上の高齢者人口は3,392万人で,総人口1億2,711万人の26.7%を占めている(厚生労働省, 2016)。総人口が減少する中,高齢化率は上昇の途をたどり,平成72(2060)年には39.9%に達すると推測されている。
 高齢者のなかでも認知症について,その患者数についてみると,平成24(2012)年は認知症患者数が462万人で,高齢者の7人に1人の割合だったが,平成37(2025)年には約700万人になるとされ,実に5人に1人が認知症となることが推計されている(厚生労働省, 2016)。
 日常生活に制限のない期間(健康寿命)と平均寿命の差は男性で9年,女性では12年となっており, この差の縮小は社会レベル,個人レベルの両方において,重要かつ意義の大きい課題であるが(厚生労働省, 2016),なかでも人が社会で機能するために必要な社会生活機能を保つことが重要である。
 大阪大学大学院医学系研究科附属ツインリサーチセンターでは,大阪大学ツインレジストリに登録されている研究参加者を対象に,郵送による縦断的調査と,対面による横断的調査を実施している。 これらの調査では,抑うつ症状をはじめとした精神,認知機能の評価やIADL(手段的日常 生活動作能力),外出頻度や他者との交流といった社会生活機能の評価およびこれら機能影響を与える因子に関するデータの収集を行っている。
 本発表では,成人期の発達における社会生活機能について,成人双生児データを用いて,関連する精神機能,認知機能の遺伝と環境の影響について検討した結果を報告する。