The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Oct 7 - Oct 9, 2017Nagoya Congress Center
The Japanese Association of Educational Psychology
The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Oct 7 - Oct 9, 2017Nagoya Congress Center

[JG05]学校と地域とのよりよい協働を目指して学校支援地域本部事業の成果と課題から

岡田涼1, 大久保智生2, 時岡晴美#3, 平田俊治#4, 東海林麗香5, 赤木和重6(1.香川大学, 2.香川大学, 3.香川大学, 4.赤磐市立高陽中学校, 5.山梨大学, 6.神戸大学)
企画趣旨
 学校を取り巻く問題を考えるとき,その学校が置かれている地域に目を向けることが必要である。学校は地域の一部としてそこに存在しており,地域との関係のあり方が学校で生じる様々な問題にも影響を及ぼす。教員の多忙化の解消や地域の教育力といった学校側の視点,あるいは地域住民の学習や生きがいといった生涯学習の視点からも,学校と地域との関係のあり方が注目されている。次期学習指導要領では,社会に開かれた教育課程の実現が謳われ,そのなかで学校と地域との連携や協働が重視されている。学校と地域とのよりよい協働をいかにして実現するかは,今後の重要な課題である。
 これまで学校と地域の協働を目指して様々な取り組みが行われてきた。その一つに,学校支援地域本部事業がある。学校支援地域本部事業は,平成20年度から文部科学省の委託事業として始まったものであり,地域コーディネーターと学校支援地域本部を設置し,そこを中心として地域住民が学校支援ボランティアとしてその地域にある学校での活動に参画する。学校支援地域本部事業に取り組むことの効果について,児童・生徒の学力やコミュニケーション力の向上(文部科学省, 2010),学校生活の楽しさの向上(山崎他, 2010)などが報告されている。同時に,地域の側にとっても,地域活性化や町づくりの契機になり得ることが指摘されている(高橋, 2011)。ただし,学校支援地域本部事業による学校と地域との協働には,成果だけでなく多くの課題があることも報告されており(中山他, 2010),学校と地域との望ましい協働のあり方を模索しているのが現状である。
 本シンポジウムでは,中学校での学校支援地域本部事業の事例をもとに,学校と地域のよりよい協働のあり方について考えたい。学校と地域との連携・協働についての動向をおさえたうえで,学校支援地域本部事業に取り組む公立中学校の事例について,実践の具体的なあり様とデータに基づく成果と課題について考える。その後,学校と地域を取り巻く今日的な状況や学校文化の問題などの視点から,学校支援地域本部事業の成果と課題を多角的に捉えたうえで議論する。本シンポジウムを通して,学校と地域とのよりよい協働の本質について考え,今後の方向性を探っていきたい。

学校と地域の協働としての「学校支援地域本部事業」
時岡晴美(香川大学)
 近年は「地域の教育力が低下した」と指摘されており,この10年来,かなり対応策が図られてきた。例えば,文部科学省政策評価基本計画(平成14~16年度)では施策目標として「地域教育力の活性化」が挙げられ,平成17年度文部科学白書では「第1部 教育改革と地域・家庭の教育力の向上」の中で「地域教育力の再生」という表現が用いられており,平成17年度には「地域教育力再生プラン」が立ち上げられた。これらに依拠すれば,現在,地域の教育力は,まさに国を挙げて再生に取り組む状況に陥っていると考えられる。しかし一方では,地域において登下校を見守るボランティアが定着しており,近年では全国の多くの地域で,児童・生徒の登下校時刻に「見守り隊」が活躍している。また,「放課後子ども教室」や「学校支援ボランティア」など,地域全体で子どもを育成する活動は活発化しているとみられ,活動内容や地域で関わる人も多様化が進んでいる。ここでは,学校が支援を必要とする活動に地域住民をボランティアとして派遣する組織を整備する「学校支援地域本部事業」に注目したい。
 「学校支援地域本部事業」は,学校が支援を必要とする活動について地域住民をボランティアとして派遣するための組織を整備するもので,文部科学省が2008年度から新たな重要政策課題の一つと位置付けて実施している。地域のボランティアによる学校の活動支援を推進するため地域本部を立ち上げてコーディネーターを置くもので,発足当初は全国867市町村に2,176の地域本部が立ち上げられて以降,年々全国で増加している。これまでの活動実績では小学校の事例が比較的多いが,中学校の活動では「学習支援」「環境整備」などの取り組みが多い特徴があり,地域住民が中学校に出向いて中学生の活動や学習を支援するという画期的な取り組みが展開されている(時岡他,2010)。その成果として,子どもたちにとっては学校に居場所ができ勉学や学校行事に積極的に取り組むようになり実際に効果が表れていること,地域住民にとっては学校との協働により新たな関係が生じていること,地域における子育て環境を考える契機になっていることなどが明らかにされている(大久保他,2011)。本発表では,特に中学校における学校支援地域本部事業の概要と展開事例に注目して,その効果について検証する。

地域の子は地域で育てる―学校支援地域本部事業の実践を通して―
平田俊治(赤磐市立高陽中学校)
 中学生になると,自我が芽生え自分と社会との関係について考えることができるようになる。貧困や劣悪な家庭環境が原因となって,自分が社会から疎外されていると感じる生徒が多いのが,生徒指導困難校,いわゆる荒れた学校の特徴である。また,こうした生徒は学力だけでなくコミュニケーション能力も不足していることが多く,家庭の教育力もあまり期待できない。
こうした生徒の将来に展望をもたせるため,地域の人々(保護者でも学校の教師でもない人々)と作業を通して関係を深め,学習支援などを行うのが学校支援地域本部事業である。岡山県備前中学校を皮切りに,赤坂中学校,高陽中学校と3つの中学校で地域本部を設立し生徒の支援を行ってきた。
 活動内容は大きく分けて3つある。1つ目は学習支援である。「生徒一人にボランティア1人」を目標に,月曜日の放課後や土曜日に個別指導を行う。小学校早期の段階でつまずいている生徒が多いため,そのレベルまでさかのぼり,学習する。昨年は学校を休みがちな生徒や教室に入らず校内を徘徊する3年生4人を対象に,ボランティア6人が輪番で午前中に学習支援を行った。効果は大きく4人とも登校するようになり,受験の不合格を乗り越え,全員が進学できた。2つ目は環境整備である。学校の美化活動やトイレ掃除を行う。とりわけトイレ掃除は生徒が自主的な組織をつくり企画運営を行う。地域と保護者,学校と生徒が一緒に作業を行い交流する。3つ目はゲストティーチャーである。読み聞かせや花の栽培,門松作りなど専門的な技術をもつ人たちが地域にはたくさんいる。そうした人たちに学校に指導に来て指導していただく。
 また,最近では,中学生が小学校や幼稚園に出向いて読み聞かせを行ったり,小学校が長期休暇中に行う学習支援の手伝いをしたりするなど,今まで支援されたことをさらに下の世代に還元しようとする生徒が増えてきた。
 こうした活動を通して,交流のあった生徒はもちろん学校全体の生徒が自分の学校に対して誇りをもつようになり,将来地域に貢献したいとか地域の支援がこれからも続くことを期待する生徒が増えてきている。
 本発表では,複数の中学校での学校支援地域本部事業の取り組み事例について,具体的な活動内容と生徒や教師,ボランティアの姿を通して紹介する。

学校と地域の連携・協働の継続のために―学校支援地域本部事業に関する研究結果と今後の提言―
大久保智生(香川大学)
 近年,学校支援地域本部事業についての研究(例えば,岩崎・松永, 2011; 清國, 2011; 松永, 2010; 本迫, 2009; 中川他, 2010; 荻野, 2010)が行われてきており,この事業によって学校と地域が活性化されることなどが明らかとなっている。報告者らは,2009年から学校支援地域本部事業によって学校や地域がどのように変化していくのかについて一連の研究を行ってきた。大久保他(2011)は学校支援地域本部事業により荒れが収束したことを示し,学校と地域でギャップはあるものの,これまでの研究と同様に学校だけでなく地域も活性化することを示している。また,大久保他(2013)は学校支援地域本部事業を通して,学校の取り組みが見えるようになることを示している。そして,時岡他(2015)は6年間の活動経過と実績に注目することで学校支援地域本部事業の発展過程を示し,ヒアリング調査や座談会で語られたエピソードから,生徒・教員・ボランティアそれぞれにとって多面的に充実感が得られていることを示している。さらに,岡田他(2016)は,学校支援ボランティアとのかかわりが学校所属感を通して,生徒の学習に対する動機づけを高めることを示している。
 以上の研究も含めた一連の研究成果から得られた今後の提言としては,4つ挙げられる。1つ目は,お互いが意義を理解し,Win-Winの関係を構築していく必要があるということである。学校と地域とが連携・協働を行えばいいという単純なものではなく,学校と地域のどちらかの負担が大きすぎると不満が募ることからも,事業の意義を理解することが重要である。2つ目は,地域の課題を知り,地域の特性に合った連携・協働を行っていく必要があるということである。他の地域と同じ活動をすればよいわけではないため,地域の課題を知り,地域に何が必要でどのようなリソースがあるのかも含めて,地域の特性に合った活動を行うことが重要である。3つ目は,つながっていることが見える仕掛けを作っていき,関係を可視化していく必要があるということである。相手の顔が見えないと不満が募り,日々の活動の意味が見出せないため,相手の現状を理解することや直接的なかかわりを増やし,学校ニーズと地域ニーズを埋めるためにつながっていることを見えるようにしていくことが重要である。4つ目は,取り組んだことは必ず成果としてまとめ,発信する必要があるということである。活動の成果がわからないと続ける意欲がわかないため,成果を可視化し,発信していくことで継続の動機づけを高めていくことが重要である。本発表では,学校と地域の連携・協働の継続にとって重要な点について,実証データをもとに提言を行う。