The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Oct 7 - Oct 9, 2017Nagoya Congress Center
The Japanese Association of Educational Psychology
The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Oct 7 - Oct 9, 2017Nagoya Congress Center

[JH01]英語教育における深い学びとコミュニケーション

マナロ エマニュエル1, 李沐陽2, 小山義徳3, 田中瑛津子4(1.京都大学, 2.京都大学, 3.千葉大学, 4.名古屋大学)
企画趣旨
 効果的にコミュニケーションを行う能力は,21世紀スキル(e.g.,Griffin,McGaw,& Care,2012)の議論の中でも中心的な課題である。21世紀における日々の学習や仕事,余暇活動を取り巻く環境がますますグローバル化していることを考えると,英語でのコミュニケーション能力が必須なことは明らかである。
 英語学習の重要性が増しているにもかかわらず,日本の英語教育には多くの問題や課題が残されている。たとえば,たとえば,2015年のEF English Proficiency Index(www.ef.edu)では,日本の成人の英語習熟度は72カ国中35位である。他のアジアの国と比較すると,日本よりも低いランクにあるのは,モンゴル,カンボジア,ラオスなどの発展途上国のみである。
 この問題を打破するためには,反復や暗記中心の学習ではなく,深い学びを促進し,実際のコミュニケーションに使える英語の習得を目指す必要がある。
 以上を踏まえ,本シンポジウムでは,効果的な英語学習に関する研究および実践の報告を行う。

偶発的語彙学習における情報端末の使用および
使用頻度に及ぼす要因
——外国語学習者 (EFL)を対象に——
(李 沐陽)
 語彙はEFLが外国語を活用できるようになるための非常に重要な言語知識の一側面である。十分な語彙力がなければ外国語力および外国語でのコミュニケーション力を向上させるのも難しい。しかし,語彙学習はEFLにとっては決して簡単なことではない。近年,情報端末による語彙学習と語彙学習用のアプリの開発などについての研究が数多くあるが,EFLがどのように自主的に語彙学習に情報端末を使用しているのかについては,いまだに検討されていない。そこで,本研究はEFLの自主的な情報端末の使用に着目した。語彙学習は意図的語彙学習と偶発的語彙学習に分けられる(Nation, 2001)。集中的に語彙を覚える学習方法としての意図的語彙学習と異なり,偶発的語彙学習は付随的な学習方法である。例えば,偶発的語彙学習では,多読や多聴を行う中で遭遇する未知の語彙の意味を文脈から推測する(Huckin & Coady,1999)。先行研究は,多読による偶発的語彙学習が母語の学習において効果的であるということを示した(Day & Swan,1998)。
 しかし,EFLは既有の語彙知識が少ないために文脈から言葉の意味を推測できず(Gu,2003),偶発的語彙学習が効果的に機能しない。先行研究は,情報端末の使用によって偶発的語彙学習を促進できるということを示してきた。例えば,Song & Fox(2008)の研究では,学習者が偶発的語彙学習で携帯情報端末を数多く活用していることを見いだした。
 EFLの偶発的語彙学習における携帯情報端末活用の頻度は,教育背景や学習環境,既有の語彙量,英語学習に対する態度の違いなどの影響を受ける可能性がある。しかし,先行研究は,これらの要因について論じてこなかった。
 これを踏まえ,本研究では,EFLの偶発的語彙学習での情報端末の使用頻度や,英語語彙量,及び英語学習に対するモチベーションなどについて質問紙調査を行なった。調査対象者は英語を母語としない英語学習者363名であり,日本(2校),タイ,または中国の大学(各1校)に在学していた。質問紙調査の二週間後に,各大学から5名の参加者に対して半構造化面接を実施した。本発表では,調査の結果を報告する。(本研究はエマニュエル・マナロ, Jiraporn Yiamkhamnuan, 劉凌との共同研究です。)

語彙テストのフィードバック活用法指導の
効果の検討
(マナロ エマニュエル,小山義徳)
 英語教育において,大きな課題の一つは,語彙力の向上である。語彙がなければ,言語的なコミュニケーションをとることはできない。多くの学校では,新しい英単語を学ばせるためにテストを課すことが多いが,この方法は本当に有効なのだろうか。
 多くの研究が,テスト後にフィードバックを与えた方が,単に再学習させるよりも効果的であることを示している(e.g.,Metcalf,Kornell, & Finn,2009; Rohrer,Taylor,& Sholar,2010)。しかしながら,Lipko-Speed,Dunlosky,and Rawson(2014)は,テストのフィードバックを与えた方が,与えない場合よりも効果があることは認めつつも,後続のテスト成績は全体的に低いレベルに留まっていることを指摘している。たとえば,彼らの研究では,フィードバックのあるグループの正答率は30%で,フィードバックのないグループの正答率(10〜26%)と比較して有意に高かったものの,非常に低い正答率に留まっている。彼らはその理由の一つとして,学生がフィードバックの効果的な活用方法を知らず,単に教材を読み直すなどの効果の低い学習方略に頼っていることを指摘している。
 本研究では,学生が再学習をする際に,フィードバックの活用方法の教示を行うことによって後続のテスト成績を高めることができるのかを検討する。参加者は日本の中学生4クラスで,全ての学生が英語を外国語として学んでいる。4つのクラスのうち2クラスをフィードバックの活用法指導有り群に,2クラスを指導なし群にランダムに割り当て,未習の英単語の学習場面において,介入の効果の検討を行う。4回の英語授業中に,学生に未習の英単語を学習/再学習する時間を与え,学習成果についての試験を行う。(公平性を確保するため,統制群については研究が終了してから効果的なフィードバックの活用方法について教示を行った。)本シンポジウムでは,以上の研究結果を報告するとともに,英語を外国語として学習する場面においてどのような示唆があるかについて議論を行う。

21世紀型スキルを育成する
英語教育におけるデータ駆動型学習(DDL)
(小山義徳,西垣千佳子,神谷昇,安部朋世)
 一般的に英文法の授業では,教師が英語の文法規則を生徒に説明し,生徒はその文法規則に基づいた英語のフレーズの練習をしたり,英作文を書いたりすることを行う。しかし,この教え方では,生徒が自ら文法規則を発見する機会がなく,ルールを発見するスキルが身に着かない。そこで,本研究では英語の文法学習におけるデータ駆動学習(DDL)を提案する。
 データ駆動学習(DDL)とは,検索ソフトを使ってコーパス(言語データ)からターゲット語を含む用例を検索し,様々な用例を観察して,生徒自身が語法や文法ルールを引き出して学ぶ学習方法である。 DDLによって学習者は,対象となる文法項目を含む多様な例文を観察し,そこから文法規則を自らの力で探究し,気づき,発見するので,帰納的な学習が起こる。このようにDDLは,学習者が能動的に文法学習を行う学習者主体の学習方法であり,文法規則を抽出する経験を通して,学習者のことばを観察する目を育て,自立した学習者の育成を目指すものである。
 一方で,従来型の教師が文法規則を教える授業と比較して,教師が説明すれば済む文法事項を生徒に発見的に学習させるため,DDLは学習にかかる時間が長くなるという弱点がある。しかし,その弱点を補ってなお,DDLには利点があると考えられる。
 教師が説明した場合と比較して,DDLで学んだ学習事項は,意味的に深い処理がなされるために,学習事項が強く,長く定着する可能性がある。また,DDLをとおして学習者に文法規則を発見するためのスキルが身に着くため,今まで習ったことがない文法規則も自力で見つけられるようになる可能性が高いと考えられる。
 そこで,本発表ではDDLで文法項目を教えた場合と,教師が文法項目を教えた場合で,学んだ内容の定着と,新規文法事項に対する文法規則を発見できる度合いに差があるのか比較検討した結果を報告する。

実践的英語力を伸ばす大学院教育プログラム
(田中瑛津子)
 小中高における英語教育のみならず,大学・大学院においても,英語教育の抜本的改革が求められている(成長戦略に資するグローバル人材育成部会提言, 2013)。大学院においては,英語で専門的な内容について議論したり,母語が異なる他者との協働を通じて課題を解決したりする力が求められる。そのような実践的英語力はどのように伸ばすことができるのだろうか。文法や語彙などの基本的な英語教育に加えて,実際に習得したスキルを活用する場も提供する必要があると考えられるが,実際にどのようなプロセスを経て実践的な英語力が育まれるのかは十分に明らかになっていない。
 文部科学省は,グローバルに活躍できるリーダーの育成を実現するため,博士課程教育リーディングプログラム事業を推進している。本発表では,その一つである名古屋大学PhDプロフェッショナル登龍門における英語教育の取り組みを紹介し,学生へのインタビュー結果に基づき,プログラム参加学生がどのように英語力を伸ばしたのかについて考察する。
 当該プログラムでは,英語の4技能を伸ばすための英語授業の他,英語でのディスカッションセッションや短期海外研修を行っている。また留学生とのシェアハウスという形で,日常的に英語でコミュニケーションをするための場の提供も行っている。実際に参加学生のIELTS(International English Language Testing System)の得点が飛躍的に向上していることから,このプログラムの英語教育には効果があることが示唆される。そこで,プログラム参加学生を対象に,プログラムのどのような側面が英語スキルの向上に影響を与えたのか,また,プログラムを通じて,英語に対する信念,学習方略がどのように変化したのか,についてインタビューを行う。それによって,実践的な英語力がどのように獲得されるのか,どのようなサポートが有効なのかについての示唆が得られると考えられる。