The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Oct 7 - Oct 9, 2017Nagoya Congress Center
The Japanese Association of Educational Psychology
The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Oct 7 - Oct 9, 2017Nagoya Congress Center

[jsympo01]心理危機研究をどのように現場実践に生かすか 研究の場と臨床現場の往還

金子一史1, 窪田由紀2, 柴田一匡3, 樋渡孝徳4, 小倉正義5, 渡辺弥生6(1.名古屋大学, 2.名古屋大学, 3.名古屋大学・プティ ヴィラージュ, 4.九州産業大学, 5.鳴門教育大学, 6.法政大学)
企画趣旨
 いじめやハラスメント,事件および事故,自然災害や犯罪被害,もしくは自死による喪失体験などの心理的危機は,周囲を含めた家族や職場の関係者までを含めれば,全ての人が否応なしに巻き込まれていることは,疑いがない。自身の関係者に大きな心理危機が発生した場合には,同時に自身にも大きな衝撃をもたらし,危機的な状態に陥ることもある。これらの点で,全ての現代人は心理的危機から無関係ではいられない。
 臨床現場と研究との間で望まれる関係のあり方とはどのようなものなのかについては,これまでにも科学者実践者モデル(scientist practitioner model)などによって,古くから盛んに議論されてきた。一方,今日におけるグローバル化の急速な進展や日本社会が急激に複雑多様化していく中で,国民全体に漠然とした不安が,以前にも増して広まりつつある。このような情勢の中で,心理学という学問が,現場の社会的問題に対して具体的にどのような貢献ができるのかを,現在ほど問われている時代はないと言えよう。
 本シンポジウムでは,若手の研究者が取り組んでいる臨床現場での心理的危機について,具体的な研究成果を提示してもらった上で,それらをどのようにして実践へつなげていくかという点に焦点を当てて議論を行う。その上で,心理学における研究と臨床現場との望ましい関連のあり方とは何か,改めて検討を加えることを試みる。研究の成果を,臨床の現場にどう活かしていくのか,また,現場の問題をどのように研究の土台に乗せていくのかという問題について,ここで今一度検討を加えておくことは,今後ますます複雑多様化する社会において,重要な意義を持つものと思われる。今こそ,心理学が社会に対してどのような貢献できるのか,自らの足元を見つめ直しておくことが求められている。


心理危機研究に取り組む社会人大学院生の意識と研究成果の現場への還元について
柴田一匡
 今日,自然災害や事件・事故,犯罪被害,いじめやハラスメント,自死などの危機はいつでも起こりうるという前提で,組織が適切に備え対応することの重要性が指摘されている。これらの時代的要請の中で,名古屋大学大学院教育発達科学研究科心理発達科学専攻博士後期課程には平成20年度に社会人対象の心理危機マネジメントコースが設置され,平成29年度で開設10年目を迎える。
 本コースでは,これまで医療・教育・福祉・司法・産業等の領域で働く社会人大学院生が在籍し,それぞれの現場の心理危機に纏わる事例検討や研究指導が行われてきた。本コース主催の研修会開催や心理危機マネジメント事例集の発行等も積極的に行い,心理的な視点から危機的事態への対応および予防に関する研究の成果を集約し,幅広く発信してきた。このような現場に則した心理危機研究の成果を集約し,現場に還元できるのも,社会人大学院生が在籍する大学院の特徴である。
 本発表では,本コースのOB・OGおよび現在籍院生を対象に行った「社会人大学院生の意識と研究成果の職場等適用に関する調査」の結果より,心理危機研究に取り組む社会人大学院生の意識と研究成果の現場への還元について報告する。


学校危機への心理的支援の効果検証の取組み
樋渡孝徳
 学校危機とは「構成員の多くを巻き込む突発的で衝撃的な出来事に遭遇することによって,学校コミュニティが混乱し本来の機能を発揮できない状態に陥ること」と定義される(窪田,2005)。児童生徒の自殺,学校管理内外の事故といった児童生徒に関わるものは勿論であるが,教師の不祥事や突然死といった事案も学校コミュニティを揺るがすものであり,学校危機ということができる。学校危機への臨床心理士による支援体制は徐々に整備され,2009年11月の調査では,児童生徒の自殺を含む重大な事件・事故が生じた際に,都道府県臨床心理士会の約7割が学校・教育委員会の依頼によって支援を行うとの回答が得られた(窪田,2010)。だが,広く行われるようになったにも関わらず緊急支援の効果は明らかにされていない。
 筆者らは学校危機への心理支援についての効果検証の試みを続けてきた。これまで主に学校コミュニティの中核的な成員である教師を対象に調査を行い,緊急支援の一定の効果を見出している(樋渡ら,2016ほか)。
 本報告ではこれまでの研究結果を提示し,その結果を実際の支援にどう活かしていくかということについて論じる。



いじめ研究をいじめ防止に活かすために
小倉正義
 いじめ問題の克服のため,2013年9月にいじめ防止対策推進法が施行され,学校関係者は一層努力されているが,心理学研究者としても自分たちに何ができるかをなお一層求められていると言えよう。本報告では,「学校におけるいじめ」(ピーター・K・スミス著)を参考にしながら,世界各国のいじめを概観し,2011年に報告者らが行ったいじめ(ネットいじめも含む)に関する大規模調査の結果等と比較検討することで,わが国におけるいじめの特徴と,これから求められる研究について改めて議論する。
 また鳴門教育大学では,重大な教育課題となっているいじめ問題の克服に寄与する事業の実施を目的として,2015年4月から「いじめ防止支援機構(BP-CORE)」やそのBP-COREを構成する組織である生徒指導支援センターを新設し,宮城教育大学・上越教育大学・福岡教育大学とともに,いじめ問題の根本的な克服を目指していじめ防止支援プロジェクト(BPプロジェクト)に取り組んできている。本学での学校現場支援や生徒指導分野に卓越した教員の養成のための取り組みを紹介しながら,いじめ研究をどのようにいじめ防止に活かすかを提案する。