The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Oct 7 - Oct 9, 2017Nagoya Congress Center
The Japanese Association of Educational Psychology
The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Oct 7 - Oct 9, 2017Nagoya Congress Center

[ksympo02]教育心理学から考える“チーム学校”

湯澤正通1, 植阪友理2, 高橋美保3, 藤澤信義#4, 水野治久5, 西幸代#6(1.広島大学, 2.東京大学, 3.東京大学, 4.倉敷市立大高小学校, 5.大阪教育大学, 6.ワーキングメモリ学習塾ぽえちか)
 平成27年12月,中央教育審議会では「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(答申)」を取りまとめた。学習指導要領の改訂に当たっては,「何を教えるか」という知識の質や量の改善だけでなく,「どのように学ぶか」という学びの質や深まりが重視されており,子どもたちが学校で習得した基礎的な知識・技能を実社会や実生活で活用することが求められている。そのためには,教員が,学校や子どもたちの実態を踏まえ,学習指導等に取り組むための指導体制の充実が求められている。加えて,生徒指導上の課題や特別支援教育など,学校が抱える課題は,複雑化・困難化する中,教職員が心理や福祉などの専門家や関係機関,地域と連携し,チームとして課題解決に取り組む体制の構築が必要である。
 しかし,現場ではこのような「チーム学校」はうまく構築され,運営されているのだろうか。学校にチームが形成され,チームとして機能するためには何が必要なのだろうか。
 本シンポジウムではチーム学校に求められる専門性に焦点を当て,チーム学校のモデルとなる実践や研究に関して話題提供を行う。その中で,チーム学校に教育心理学が貢献できることを議論する。
学習指導の観点から:「大学との連携による
心理学を生かした授業改善・学習支援」
植阪友理
 発表者は,心理学者としての立場から,学校における学習指導と地域連携の双方を取り入れた実践に長くかかわっている。例えば,昨年度末に終了した岡山県下での実践は11年38校園(小中学校36校,幼稚園保育園2園)に及ぶ。藤澤先生にご紹介いただく事例も,連携させていただいた学校の一つである。本発表では背景となった授業や子どもの問題と対処策を論じ,教授学習系教育心理学者がチーム学校に果たしうる役割を考える。
 発表者の専門領域は教授学習であり,「〜がわからなくて困っている」という子どもたちに対する個別学習相談「認知カウンセリング」に長年かかわってきた。こうした実践から,子どもたちの授業の受け方や家庭での学習の仕方の問題につまずきの原因があることが伺える。学習方略研究では,学び方の改善につながるような知見が数多く蓄積されているが,子どもの学習にはあまり活かされていないのだ。また,その背景には,学校において,学び方を教えることがほとんどないという課題も存在する。この問題意識をふまえ,学校現場とともに子どもの学習改善につながるような授業作りを行ってきた。具体的には,心理学を踏まえて提案された「教えて考えさせる授業」をベースに学校にかかわっている。また,子どもが将来的には市民として生きていくことを念頭に,地域の学びに子どもを積極的に送り出し,学校では育てにくい力の育成もあわせて促してきた。
 また,上述した実践とは別に,本学がある文京区教育センターと連携し,公的な事業として認知カウンセリングを展開している。これは,「どのようにして学ぶのか」について困難を抱えた子どもが,教育センターにおいて無償で相談を受けることができるシステムである。事例事例をまとめた報告書を発行するとともに,年に一度,学校の先生に対して事例発表会を開催している。子どもたちのつまずきから見える授業改善の方向性についてもこの場で議論している。教育センターと連携することで,学校外からチーム学校を支える関係機関の一つとなりうるだろう。
学習指導および学校マネジメントの観点から:
「学校・地域・大学が連携した子どもの自立支援ー自己学習でき,自己肯定感の高い子どもの育成
 を目指してー」
藤澤信義
 発表者は,校長であった際に2つの小学校において教育心理学者とも連携しながら,学校における学習指導と地域連携の双方を充実させるような実践を行った。本発表では,これらの2つの学校(倉敷市立柏島小学校及び倉敷市立大高小学校)での実践を踏まえて,チームとしての学校をどのように構築可能か考えていきたい。なお,柏島小学校の実践は教育心理学会において話題にしたことがあるため,大高小学校での実践を紹介する。
 まず,答申では,教職員がそれぞれの力を発揮し,伸ばしていくことができるようにする環境整備の大切さが論じられている。こうした環境の構築のため,「教えて考えさせる授業」(e.g., 市川, 2008;市川・植阪,2016)を学校全体で取り入れた。この指導法は,学習方略や学習観の改善といった学び方の改善に寄与するものであったが,従来の問題解決型授業とは異なっていたため,教職員全体で取り組む必要があった。大高は大規模学校であり(約1100人),研修を重ね,多くの研究授業を共有することで,教師の授業力の向上にもつながっていった。また,自立した子どもを育成するための家庭学習指導も併せて行い,授業改善と組み合わせることで子どもの学力の向上にもつながった。特に,低学力層は通常学年が上昇するにつれて学力高位層との差が開くが,その開きが全国と比較しても小さなものとなっていた。
 また答申では,家庭,地域,関係機関との連携についても,その重要性が強調されている。これについても,同時に取り組み,一体的に学校改革に取り組んだ。具体的には,地域の人たちに,学校支援ボランティアとして積極的に学校にはいってもらった。内容は多岐に渡り,教科の支援のみならず,夏休みの水やりなど教員の負担軽減にもつながった。さらに,大高独自の授業外学習ポイント制度(「いきいき大高っ子ポイントラリーカード」)を作り,子どもたちを学校区内にある各施設等で行われる学校外の学びに送り出し,地域の学びに積極的に送り出す仕組みを作っている。調査結果からも,地域の人たちを触れ合うことで,子どもの意識が地域や社会に向かい,夢や目標につながっていると考えている。
 生徒指導の観点から:コーディネートできる
  教員の育成
水野治久
 チーム学校答申は,学校現場に様々な提案をしているが,中心的な提案の一つはスクールカウンセラー(SC),スクールソーシャルワーカー(SSW),学校外の諸機関と連携し,子どもの多様な背景を視野に入れ,援助することである。これは学校における生徒指導分野での役割に変化をもたらす。
 水野(2017)では,チーム学校に関わる研究や実践をレビューし,チーム学校を,援助チーム,コーディネーション,マネジメントの「マクロなレベル」,援助要請・被援助志向性,コンサルテーションの「ミクロなレベル」の2つの側面から検討している。
 まずチーム学校をマクロな眼で見てみたい。学校の中にチームを作るためには,援助チーム(田村,2001;田村・石隈,2003)を設置する必要がある。効果的に援助を提供するためには,その学校にどのような援助が提供されているか把握する必要がある。これがコーディネーション委員会の役割の一つである(家近・石隈,2003)。また,虐待の通告の決定やケース会議での外部関係者の招聘(SSWなど)については,マネジメントレベルの判断が重要だ(山口,2012)。
 ミクロな視点は,援助要請とコンサルテーションである。援助のためには,子ども,保護者が学校側(教師やSC)に援助要請する必要がある。しかし学校適応に課題のある子どもは援助要請に消極的だ(水野,2014;後藤,2017)。加えて教師の援助要請も大事だ。校内の様々な教職員との連携,外部専門家からのコンサルテーションにおいても,教師自身の援助要請が必要である。Mizuno(2016)によると,生徒指導の困り感は,チーム連携に結びつかない。子どもの指導や理解に困ることとチーム連携は関連がない可能性がある。そのための解決の鍵は,学校全体を俯瞰し,子どもの援助ニーズをアセスメントし,援助をコーディネートできる教員の育成である(水野・家近・石隈,印刷中)。こうした教員の役割は何か,どう育成したらよいのかについて議論を重ね,行政(国レベル,地方自治体レベル)に学会として具体的な提言を行う必要がある。
特別支援の観点から:「教科担当の教師と連携
した特別支援の実践:予習的補習の意義」
西 幸代
 予習的補習の対象者は,ワーキングメモリ(WM)に弱さがあるIQ70-90程度,抽象思考が必要となる小学校3年生頃から通常学級での学習につまづいた生徒である。特別支援学級や通級指導教室の担任などが予め,教科担任から授業で使用する学習プリントを入手して,対象生徒に個別支援を行う。事前に「一問だけ」解けるようにして,本番授業の手掛かりを持たせて参加させる。「全部」ではなく,「一問」。級友とかかわるための余白をおく。その事前の「一問」を解くには,WMの弱さを補う支援,例えば,長期記憶の中にある馴染みの言葉を用いて負荷を軽くするなどして指導する。自信をなくした生徒は「わかる・できそう」の期待を持ち,通常学級の授業へ参加する。学習についていけない劣等感でなく,「自分にも級友に教えられる」という状況が級友との対等な関係を作る。
アクテイブラーニングをとり入れた学びでは,「できる」一問が核となり,級友にも認められて共有の学びの時間は双方向の学びあいの時間となる。そこから「できる」核は広がっていく。
 心理学者ヴィゴツキーの「最近接領域」の概念「誰かに助けられながら,誰かを助けながら」の相互関係であり,教科内のつながりは,社会的なつながり(通常学級)に自然に育ち,普段の学級生活で存在を表現して生きることができる。
 一度,フェードアウトした生徒の学びを教科担任だけで支援することは難しい。だから教師はチームを組み,特別支援担当と対等な関係となり,互いに違う「役割」を担い,敬意と感謝を持ちながら進めると実践はとても楽しくなる。支援者一人で達成できる水準の外側に,協働者間の相互作用によってはじめて触発され,発揮される潜在的能力の領域が隠されていたことにたびたび気づく。生徒が分かるようになることも喜びだが,教師自身が自分の職能領域を拡大できる喜びも大きい。
 生徒も支援者も自力で全てを成そうとせず,協働者に委ねて引き出される余白,のりしろのあるかかわりを楽しむ。その余裕が,各々の資質を高め合う。チーム学校に大切な一要素だと考える。