The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Sep 15 - Sep 17, 2018Keio University Hiyoshi Campus
The Japanese Association of Educational Psychology
The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Sep 15 - Sep 17, 2018Keio University Hiyoshi Campus

[JC06]発達障がいがある子どもの触法行為と教育心理学予防と社会復帰をめぐって

守谷賢二1, 宍倉悠太#2, 北村耕太郎#3, 斎藤富由起4, 小野淳5(1.淑徳大学, 2.国士舘大学, 3.NPO法人 D-Support, 4.千里金蘭大学, 5.千里金蘭大学)
企画趣旨
 教育領域の臨床活動に携わっていると,教育現場で発達障がいを持ちながら(あるいは予感させながら),不良行為や触法行為に及んでしまう子どもに出会うときがある.教員やスクールカウンセラーあるいは警察やスクールソーシャルワーカーは協働してケースに当たっていたものの,その行為が止められないケースもある.
 また,企画者である守谷は,児童自立支援施設に併設する中学校でスクールカウンセラーの経験があるが,その当時福祉職員から「2000年前後から発達障がい傾向の児童が入所してくるケースが増えたように感じる」という話を聞き,発達障がいと触法行為には大きな関係があることを認識するようになった.
 こうした中で,私たちは発達障がいのある子どもたちの触法行為の事例に出会ったとき,「非行防止としてできることはなにか」,そして不幸にも触法行為に及んでしまったのち,「発達の特性を踏まえつつ,どのような支援体制の下で,どのような関わりがなされるべきなのか」といった諸点を自らの課題として引き受けなければならない.
 しかし,教育心理学の中でもこうしたテーマが議論になることは少ないように思われる.そこで本シンポジュウムでは,現状の少年保護司法システムの問題点も含めて,発達障がいがある子どもの非行防止と社会復帰の要因について議論を深めたい.

発達障がいと触法行為
 児童の触法行為と関係する施設の1つに児童自立支援施設があるが,厚生労働省(2009)の調査によれば,児童自立支施設に入所している児童の中にADHDなどの発達障がいの診断がされている子どもたちが増えていることが示されている.
 藤川(2009)は,発達障がいと非行の関係について研究を行っており,少年非行において広汎性発達障がいとADHDが一般の出現率よりもやや上回っていることを明らかにしている.また,犯罪内容としては性犯罪,暴力犯罪,放火の率が高く,非行動因を「対人接近型」「実験型」「パニック型」「清算型」「本来型」の5つに分類している.
 このように,発達障がいと非行・触法行為の関係については,近年さまざまな調査が行われるようになっているが,発達障がいと触法行為について,発達障がい者の器質上の特性が触法行為の直接の原因となると考える一次障害説にエビデンスはなく,触法行為に及んだ場合でも環境との相互作用の結果であると考える交互作用説が支持されている.
 高橋(2012)は,非行について「発達障害が直接の原因になるわけではないものの,発達障害の無理解・誤解・放置,いじめ等の不適応的な対応の結果として非行・触法行為・犯罪行為につながっている可能性を十分に考慮する必要がある」と指摘している.
 また,松本・斎藤(2018)はいわゆる重大事件を質的に検討した結果,発達障がいやサイコパス(psychopath)と呼ばれる特性がみられた事例においても,それが単独で触法行為の原因となるケースは見られず,「成育環境の劣悪さ」「精神疾患」「性的逸脱」が複合的にケースに影響を与えていることを示した.北村(2018)が指摘するように,真の危険因子は発達障がいではなく,発達障がいを取り巻く「社会の障壁」であり,二次障害に至らせる配慮なき社会の在り方なのだろう.
 以上のように,発達障がいと触法行為を安易に結びつけることは避けるべきであり,支援においてもいくつかの取り組みがなされている.堀江・内山・浦崎・安藤・野沢・枡屋・水藤・大石・関口(2014)は,成人の発達障がい者の支援として,矯正施設を出所した人に対する「出口支援」の1つである「地域生活支援センター」の定着は見られるものの,それだけでは不十分であり,矯正施設に至る前の段階において司法と福祉が連携した「入口支援」重要性を指摘している.「入口支援」については,平成21年から23年にかけて長崎県で行われ,平成24年度には,長崎,仙台,大津の3地域で施行され,平成25年度にはこの3地域に加えて和歌山,島根でも施行がなされている.
 以上のように,触法行為を行った発達障がい者への支援はいくつか行われているが,その一方で,わが国では発達障害者支援法が,十分整備されていないことから,発達障がいを持ちつつ,触法行為に及んでしまった子どもの再犯防止や社会復帰についての議論が不足しているのも事実である.発達障害者支援法の成立以降,発達障がい者の早期発見と早期療育体制の整備と,医療・心理・福祉・教育の協働的な支援体制が求められてはいる.しかし,それらを実現するための社会資源は十分とは言いがたく,社会認識も立ち遅れている.その中で,非行や不良行為,触法行為に及んだ発達障がいのある子どもへの支援体制はさらに遅れているといえるだろう.
 宍倉(2016)は,「実際,犯罪・非行を繰り返すケースというのは,成人になる前段階において発達障害が学校・職場でのコミュニケーションに困難を来したことにより,その居場所が狭められ(被害者化),ひいては逸脱行動へと至る(加害者化)」ことを指摘している.すなわち,発達障がいと触法行為の関係には「被害者化から加害者化への変化」と「居場所」や「ソーシャルファーム」の要因が関与しており,この点を追究することにより再犯防止や円滑な社会復帰が示唆される可能性がある.
 そのため,教育心理学的な観点からこうした諸点を議論し,(1)現状の少年保護司法システム上の制約や問題点は何か,(2)それを踏まえた上で,発達障がいをもつ子どもたちとどのようなかかわりが現実的で有効なのかを検証することが求められる.

発達障がいのある子どもの触法行為と支援体制
宍倉悠太
 近年,発達障がいのある成人の支援体制が検討されるようになってきているが,発達障がいのある子どもの触法行為や非行行為に対する支援体制については,依然として大きな課題を残していると考えられる.
 そこで,本シンポジウムでは,成人の触法行為と支援体制について具体的なデータを示しながら,発達障がいのある子どもの非行行為の背景と社会復帰を行うための要因について解説する.
 具体的には,司法システムにおけるさまざまな問題を解説し,現行の司法システムについて問題提起を行う。さらに,発達障がいのある子どもの触法行為や非行行為の再犯防止に関する支援や実態について問題提起を行う.

発達障がいがある子どもの触法行為のタイプ
北村耕太郎
 広島県警において少年事件を担当していた経験から,現在NPO法人D-Supportにおいて発達障害がいのある者の触法行為とその後の司法への福祉的介入について研究を行っているが,警察官として少年犯罪に関わっていた際,現場において「発達障がい」という言葉を聴く機会はほとんど無かった.そのため,刑事司法や矯正領域に関わる実務家やその関係者は,刑事事件と障害の関係性についてさまざまな誤解をしていると考えられる.
 そこで,本シンポジウムでは,これまで支援を行ってきた複数の事例から,発達障がいのある子どもの触法行為のタイプについて報告を行う.さらに,現場の現状を踏まえ,二次障害を促進してしまう社会の障壁の内容と,触法行為後の社会復帰要因について,犯罪と発達障害の関係性の視点を重視して,話題提供を行う.

居場所論と教育臨床の立場から
斎藤富由起・守谷賢二
 私たちには,触法行為が生じたとき,その原因を目立つ要因(ここでは「発達障がい」)へと帰属する傾向がある.しかし,発達障がいは触法行為の原因ではない.この問題に対しては,その障がいゆえに抱える「生きにくさ」を社会がどう理解し,どのように支援するかが問われるべきである.本シンポジュウムを通じて,発達障がいのある子どもの非行行為や触法行為の偏見解消と,支援策の示唆を探っていきたい.
 具体的には,重大事件は一要因では成立せず,3要因から5要因の複合で生じていることを示した斎藤(2018)は,司法システムの問題点について居場所論の立場から指定討論を行う.
 また児童自立支援施設に併設する中学校において臨床経験を持ち,現在も地域の公立中学校でスクールカウンセラーをしている守谷は,教育臨床において発達障がいのある児童の非行や触法行為の予防的な関わりをどのように行うかという視点から指定討論を行う.

引用文献
堀江まゆみ・内山登紀夫・浦崎寛泰・安藤久美子・野沢和弘・升屋二郎・水藤昌彦・大石剛一郎・関口清美(2014) 障害触法行為者支援に向けたトラブルシューターと性犯罪再販防止のSOTSEC-ID 公益財団法人日工組社会安全財団 2014年度一般研究助成報告書.
藤川洋子(2009)発達障害と少年非行 障害者問題研究,37(1),39-45.
北村耕太郎(2018)発達障がいと触法行為 「よくわかる臨床心理学」福村出版.
厚生労働省(2009)児童養護施設入所児童等調査結果.
松本麻紀・斎藤富由起(2018)重大事件の背景要因と犯罪防止に関するケーススタディ- 千里金蘭大学紀要.
斎藤富由起(2018)重大事件と複合システム 「よくわかる臨床心理学」福村出版
高橋 智(2012)発達障害の視点から見た非行少年の自立支援に関する研究―児童自立支援施設・少年院・自立援助ホーム等の調査を中心に― 平成24年度広域科学教科教育学研究経費研究成果報告書.
宍倉悠太(2016)発達障害を有する非行少年・不良行為少年の再犯防止に関する考察-実態調査結果をもとにー 国士舘法学(49),425-463.