The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Sep 15 - Sep 17, 2018Keio University Hiyoshi Campus
The Japanese Association of Educational Psychology
The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Sep 15 - Sep 17, 2018Keio University Hiyoshi Campus

[準企シ]ゲーミングによる主体的学び

杉浦淳吉1, 吉川肇子#2, 甲原定房3, 中村美枝子#4, 松田稔樹#5(1.慶應義塾大学, 2.慶應義塾大学, 3.山口県立大学, 4.流通経済大学, 5.東京工業大学)
企画趣旨
杉浦淳吉
 このシンポジウムでは,ゲームを用いた学習について,シミュレーション&ゲーミングの国内外の最新動向を踏まえ,その理論的な背景と実際の活用方法を提案する。ゲームを用いた学びというと,ユーザーフレンドリーな学習機会を提供することと捉えられがちである。それを必ずしも否定する訳ではないが,ここでは学習者が主体的に学ぶ場を設定し,ゲームであるからこそ学べることは何かを問う。ゲームを実際に教育で活用している専門家から話題提供をいただく。ゲーミングは対話を生み出す装置であり,具体的なゲームを紹介しつつ,ゲーミングによる学びを簡単に実演しながら,教育現場にゲームをどのように導入したらよいか,その実際について検討していく。ゲームだけを行えばよいのではなく,ゲームを行った後にいかなる振り返りの機会を設ければよいのか,カリキュラムの中にどう位置づけたらよいのかなど,教育現場への導入の実際と課題についてフロアの参加者とアクティブに検討したい。

話題提供1
ゲームをアレンジする
甲原定房
 「昔々,あるところで・・・」と言われると,私たちは自分の置かれた現実の諸条件を離れ,おとぎ話の世界に入っていくことが出来る。ゲームもそのような効果を持っているのではないだろうか。
 ゲームそれ自体は仮設されたフレームであるけれども,そのフレームを利用することで,普段であれば明確にならないような思考,判断を行うことを可能にしてくれる。
 既存のゲームを,授業の目的や学生に合わせてアレンジすることは,ゲームのフレームにうまく学生を誘う上で重要な作業であるとともに,制作者の意図を越えた(離れた)意味をもたらす可能性もあると考える。
 ここで,オリジナルなゲームに対してアレンジを加える主な目的の一つは,参加者がそのフレームに上手く入り込むことができるようにすることである。登壇者である吉川先生にご紹介頂いた「私の人生ゲーム」は双六をベースにしたゲームであり,自分の人生への振り返り,見通しを持たせるきっかけを作る効果があると思われる。ところが,実際に行ってみると,自分の将来についてまったく記述できない学生が少なからず存在している。紙の上に記述できなければ,他の学生との参照,共有,比較,吟味するといった作業は困難となり,協同的な関係の中で行われるべき対話も低調になりがちであった。このシンポジウムでは「私の人生ゲーム」の作成に至るまでのアレンジ,作成後のグループによる共有,振り返りのためのアレンジについて紹介したい。
 つぎにアレンジの二つ目の目的は,学生間の相互作用を円滑にすることである。ともすれば主観的になりがちな自分の人生についての振り返りや展望,あるいは数多くの要因が関係している問題に対する態度,意見について,学生間で扱いやすい形にしておく必要がある。単に「よく考えなさい」と指示するだけでは,学生は「いろいろ難しい,悩ましい問題ですね」で終わってしまう。このような困難さも学生間の相互作用を容易にするためのアレンジをすることで,ディスカッションをより幅の広いものにすることができるだろう。限られたものではあるが,これまでの工夫の一部を紹介したい。

話題提供2
ゲーミングによる対話的学習法
吉川肇子
 大学の授業場面で活用可能なゲーミングを紹介する。主に紹介するのは,ゲームデザイナーでありファシリテータでもあるThiagarajan(以下慣例に倣いThiagiと略記) が開発したinteractive learningの手法である。ここでは,対話的学習法と訳して紹介する。
 Thiagiの対話的学習法の特徴は,教授内容(コンテンツ)の如何に関わらず使える手法というところにある。いずれもゲームの形式をとっている。もともとは大学の授業のようなものだけではなく,講演やワークショップなどで学んでもらいたいものがあるときに汎用的に使える方法だが,当日は,大学の授業時間内(90分)に実施可能なものをいくつか紹介していく。紹介できる方法は非常に多いので,当日は次の3つの視点から,技法を選んで紹介する。(1)対話型の授業に慣れていない学生にも抵抗が少なく参加できるもの。(2)20分~30分程度の講義(または教科書を読む活動)とあわせて活用できるもの,(3)半期ないし通年でさまざまな手法を使うとして,それぞれの手法の適切な利用時期(たとえば,講義の初期に活用した方が効果的なもの,後期に活用した方が効果的なもの,など)別の紹介。
 対話的学習法は,学生が授業に参加できるというだけではなく,使う側(教える側)にとっても利点がある。というのは,ゲームというものは,ルールをもとに進行していくものなので,特段の進行スキル(ファシリテーションスキル)がなくても,ルール通りに進行すれば,実施が可能だからである。演者(吉川)も実際に授業で使っているので,その体験なども話せればと考えている。
 なお,本講演では,短い実演を予定している。実際にこのワークショップの他の演者の発表を講義に見立て,対話的学習法がどのように進行していくのかを,参加して体験していただきたいと考えている。
体験の後,これらの手法の活用の可能性についてフロアと共に議論したい。また,基本的な使い方だけではなく,実施時の細かな工夫や,応用的な使い方についても紹介したい。

話題提供3
学びを深めるディブリーフィング
中村美枝子
 ここでいう「ディブリーフィング」は,ゲーム後のふりかえりを中心とした活動のことである。ディブリーフィングには大きく二つの役割がある(Duke and Geurts, 2004)。1)ゲーム中の出来事や結果を概観する事(reviewing the performance of the game)と,2)現実の問題に照らし合わせて考察する事(focusing on the real-world issues)である。前者は「ゲーム中に何が起きたのか,それをどのように受けとめたのか」を吟味し,後者は「現実の世界に応用するとどうなるか」を検討する。そこにはゲームをゲームだけに終わらせず,深く掘り下げ,あるいは範囲を広げることによって,現実の問題へ応用しようとする姿勢がある。すべてのゲームにあてはまるわけではないが,どんなゲームでもこの姿勢でディブリーフィングを行うことで学びが深まるといえる。ここでは,ゲーム後の活動であるディブリーフィングに焦点をあてて,「ゲーミングによる主体的学び」について考えていく。
 Pivec(2011)は,Kolb(2007)の学習サイクルを参考にディブリーフィングの過程を4段階(経験:Experiencing,反すう:reflecting,思料:thinking,応用:applying)に分けている。たとえば,「何をしたか」(経験),「チームとしてうまく機能したか」(反すう),「どうすればもっとうまくいったか」(思料),「現実の場面ではどうなるか」(応用),などである。ゲームの後にこうした問いかけをすると,参加者の主体的な学びが促進される。逆にいうと,こうした問いかけがなければ,主体的学びは進みにくい。もし主体的学びを促したいのであれば,実施前にゲーム後に問いかける質問リストを用意しておくとよい。今回は,こうした質問のコツや留意点について紹介する。ゲームによる学びが,ゲームにとどまらず,現実の様々な場面で活用される,そんなディブリーフィングをめざして議論したいと考えている。