Presentation Information
[T9-O-4]Comparison between basalt stone used in stone structures by Kawaroku, a stonemason active in Inaba during the late Edo period, and rocks from Maruyama-zaki in Aoya-cho, Tottori City, Tottori Prefecture
*Ayaha Emura1, Norihito Kawamura1, Kyohei Sano1 (1. University of Hyogo Regional Resource Management)
Keywords:
geopark,magnetic susceptibility,cultural property,stone
山陰海岸ジオパークエリア西部である鳥取市青谷地区を中心に,江戸時代末期に活躍した石工である尾崎六朗兵衛(通称「川六」,生年不明-慶応元(1865)年没:鳥取市あおや郷土館,2016)は,地元産の安山岩を用いて狛犬や灯籠を作製したとされている(大森,2007)。しかし,川六の作品について岩石学的な記載はされておらず,使われている岩石の産地は明らかとなっていなかった。そこで榎村ほか(2025a,b)は,川六作品の石造物の肉眼観察を行い,石材は安山岩と玄武岩に大別できることを明らかにした。本発表では,川六の石造物と露頭について,岩石記載と帯磁率に関するデータを加え,採石地に関する議論を深める。本研究は,江戸時代末期の因幡地方における,石材という地質資源とその消費の一端を明らかにするための基礎資料となるものである。有名な石工の石造物の石材産地を推定することで,山陰海岸ジオパーク内の地元住民の郷土愛を育むことや,観光に活かせるといった地域活性化に繋がると考える。
調査地の地質は,鳥取市青谷町亀尻地区を模式地とする鮮新世亀尻玄武岩を,鮮新世鉢伏安山岩と呼ばれる安山岩質溶岩が覆っており,各溶岩流でできた山の合間に河川が流れ,平野部は河川堆積物が堆積している(村山・大沢,1957)。亀尻玄武岩は,上部層が玄武岩,下部層が粗粒玄武岩である(村山・大沢,1957)。調査対象は,鳥取市あおや郷土館(2016)の川六製品のリストにある38基の石造物と,鳥取市青谷町丸山崎の露頭である。石造物は鳥取県鳥取市西部と鳥取県湯梨浜町東部に分布している。露頭は亀尻玄武の露出箇所である。調査では,岩石の肉眼観察の上,帯磁率計測と検鏡記載を行った。
帯磁率計測の方法は,岩石の表面が出来るだけ平らな箇所で,帯磁率計のセンサー中央部から石造物の端の半径が 64 mm以上,石造物の厚さが 38 mm以上になる場所を選定し,20回測定し平均値を求めた(Emura et al., 2024)。
丸山崎では,採石のための矢穴痕が複数見つかった。転石の岩相観察の結果,転石は暗灰色の斑状組織で,斜長石・橄欖石・普通輝石を含み,それらの大きさは斜長石については最大約8mm,その他の鉱物は最大約3mm であった。亀尻玄武岩上部層と,玄武岩の石造物の一部(灯籠の柱の多く)の岩相は類似している。玄武岩の石造物の帯磁率平均値の最小値は9.17×10-3[SI] ,最大値は39.5×10-3[SI] ,亀尻玄武岩の露頭の帯磁率平均値の最小値は29.8×10-3[SI] ,最大値は30.8×10-3[SI]であった。5点 の石造物部材と2点の露頭の帯磁率の平均値における T検定では有意差がある。そのため,丸山崎のみで採石していた可能性は低い。今後の展望として,石材の産地候補となるほかの露頭を探し,石造物との比較を行う予定である。
引用文献 : Emura,A. et al.:Magnetic susceptibility measurement using simulated rock samples and application to the stone used in Himeji Castle, a World heritage site. The 37th International Geological Congress ; T27-S11。榎村彩羽・川村教一・佐野恭平(2025a):江戸時代末期に因幡で活躍した石工「川六」の石造物における石材の特徴. 第8回文化地質研究会学術大会。榎村彩羽・川村教一・佐野恭平(2025b)江戸時代末期に因幡で活躍した石工「川六」の石造物に使われている石材の産地推定. JpGU2025年大会MIS10-02。村山正朗・大沢穠(1957):5 萬分の 1 地質図幅説明書 鳥取北部・鳥取南部。大森昌衛(2007):石工物語(8)一山陰地方の石材と石工一。65ページ,地学教育と科学運動,55。鳥取市あおや郷土館(2016):没後150年記念川六因州が誇る幕末の名石工。
調査地の地質は,鳥取市青谷町亀尻地区を模式地とする鮮新世亀尻玄武岩を,鮮新世鉢伏安山岩と呼ばれる安山岩質溶岩が覆っており,各溶岩流でできた山の合間に河川が流れ,平野部は河川堆積物が堆積している(村山・大沢,1957)。亀尻玄武岩は,上部層が玄武岩,下部層が粗粒玄武岩である(村山・大沢,1957)。調査対象は,鳥取市あおや郷土館(2016)の川六製品のリストにある38基の石造物と,鳥取市青谷町丸山崎の露頭である。石造物は鳥取県鳥取市西部と鳥取県湯梨浜町東部に分布している。露頭は亀尻玄武の露出箇所である。調査では,岩石の肉眼観察の上,帯磁率計測と検鏡記載を行った。
帯磁率計測の方法は,岩石の表面が出来るだけ平らな箇所で,帯磁率計のセンサー中央部から石造物の端の半径が 64 mm以上,石造物の厚さが 38 mm以上になる場所を選定し,20回測定し平均値を求めた(Emura et al., 2024)。
丸山崎では,採石のための矢穴痕が複数見つかった。転石の岩相観察の結果,転石は暗灰色の斑状組織で,斜長石・橄欖石・普通輝石を含み,それらの大きさは斜長石については最大約8mm,その他の鉱物は最大約3mm であった。亀尻玄武岩上部層と,玄武岩の石造物の一部(灯籠の柱の多く)の岩相は類似している。玄武岩の石造物の帯磁率平均値の最小値は9.17×10-3[SI] ,最大値は39.5×10-3[SI] ,亀尻玄武岩の露頭の帯磁率平均値の最小値は29.8×10-3[SI] ,最大値は30.8×10-3[SI]であった。5点 の石造物部材と2点の露頭の帯磁率の平均値における T検定では有意差がある。そのため,丸山崎のみで採石していた可能性は低い。今後の展望として,石材の産地候補となるほかの露頭を探し,石造物との比較を行う予定である。
引用文献 : Emura,A. et al.:Magnetic susceptibility measurement using simulated rock samples and application to the stone used in Himeji Castle, a World heritage site. The 37th International Geological Congress ; T27-S11。榎村彩羽・川村教一・佐野恭平(2025a):江戸時代末期に因幡で活躍した石工「川六」の石造物における石材の特徴. 第8回文化地質研究会学術大会。榎村彩羽・川村教一・佐野恭平(2025b)江戸時代末期に因幡で活躍した石工「川六」の石造物に使われている石材の産地推定. JpGU2025年大会MIS10-02。村山正朗・大沢穠(1957):5 萬分の 1 地質図幅説明書 鳥取北部・鳥取南部。大森昌衛(2007):石工物語(8)一山陰地方の石材と石工一。65ページ,地学教育と科学運動,55。鳥取市あおや郷土館(2016):没後150年記念川六因州が誇る幕末の名石工。
