Presentation Information
[T9-O-5]The Current Status and Issues in the Management of Geological Heritage Sites in the San'in Kaigan UNESCO Global Geopark. In Response to the IUGS Guideline for the assessment of the international significance of geological heritage in UNESCO Global Geopark applications.
*Noritaka MATSUBARA1,2, Yuki FUJIHARA2 (1. Graduate School of Regional Resource Management, University of Hyogo, 2. San'in Kaigan Geopark Promotion Council Secretariat)
Keywords:
geopark,geological heritage,assessment,international significance
ジオパークは,国際的に重要な地質遺産を有する地域を,保護,教育,持続可能な開発の包括的なアプローチで管理する統一された地域である.ユネスコ世界ジオパークは,正しく評価された「国際的に重要な地質遺産」を有することが重要だが,それも含むすべての地質サイト・地質遺産について,リスト化やそれぞれの学術情報に基づいた価値の評価,適切な管理運営が求められる.山陰海岸ユネスコ世界ジオパーク(以下山陰海岸UGGp)における,地質サイト・地質遺産の定義と管理について,その現状と今後の取組について論ずる.
<山陰海岸ユネスコ世界ジオパークにおける“ジオサイト”の定義と管理>
2010年に世界ジオパークになった山陰海岸UGGpは,世界的価値としての玄武洞のほか日本海拡大を記録した地層群,日本海拡大前のユーラシア大陸の一部だった時代の花崗岩などからなる岩石海岸,日本海形成後の火山活動や地形形成に関わる火山岩類や砂丘など,多数の地質サイト・地質遺産を有する.山陰海岸では,2010年の世界審査を前に,これら地質サイト・地質遺産の評価と区分を行い,旧町村程度のある程度の地理的広がりを持った範囲を「ジオエリア」,徒歩で散策可能な小範囲を「ジオサイト」,個々の露頭などを「ジオスポット」と定義し,管理運営を行った.それぞれの価値や保全レベルの評価については,国立公園内であるかどうかや国の名勝や国指定天然記念物かどうか,あるいは市町指定文化財なのか,などに基づいてジオサイトやジオスポットのレベルで行った.ジオエリアは必ずしも法の下で保全されていない範囲も含まれ,まれにジオサイトでも法の下にない範囲も含んでいた.2010年の審査では「ジオエリア」という用語が単一の統一された地理的エリアである「ジオパーク」と混同されよろしくないと指摘され,その後使用を見合わせた.一般向けの地図や冊子を作成するにあたって,「ジオサイト」という言葉が一般に普及しておらずわかりにくいという意見が学術部会で出され,視認できるわかりやすい露頭や地形,サイトを「見どころ」と呼ぶことにした.その後の山陰海岸ジオパーク保護保全管理計画の策定(平成26年7月)と改訂(平成30年5月)に当たっては,上記の分類やサイトの呼び名を再定義し,以下のようにした.まず,地質遺産について,ジオパーク保全推進区域を定義し,地質遺産は必ずこの範囲に入っているものとした.ジオパーク保全推進区域とは,山陰海岸ジオパークの保護保全に有効な各種法令のうち,「鉱物の掘採」を規制する4つの法令(自然公園法,自然環境保全法,文化財保護法,景観法)の範囲である.次に,構成要素を「見どころ」とし,このうち,地形・地質的価値が認められているものを「見どころ(ジオ)」,生物的価値が認められているものを「見どころ(自然)」,歴史文化的価値が認められているものを「見どころ(文化)」と分類した.このうち,「見どころ(ジオ)」は,前述のジオパーク保全推進区域に含まれるものであり,この法的保護下にある見どころ(ジオ)の集まりを「地形地質遺産」と呼ぶこととした.ジオパーク保全推進区域外で新たに地形・地質的価値が認められる見どころが見つかった場合は,法令の整備により区域の拡大を行なうなど,見どころの保護保全に必要な措置を講じる.こうして定義した地形地質遺産の「見どころ(ジオ)」を対象に,学術部会・保護保全部会委員や環境省職員,府県市町担当者,地元ガイドが,定期的に見どころに出向き,現地の現状や保護保全活動の状況について調査,分析を行う.それらを踏まえ,各地質遺産や「見どころ(ジオ)」について,それぞれの科学的特徴,保全・活用状況,課題などについてリスト化・管理している.一方で,各地質遺産や「見どころ(ジオ)」の重要度などによるランク付けなどはしていない.そのため,特にどこを優先的に整備すべきか,調査・研究すべきか,などは判断しづらい状況にある.加えて,「見どころ(ジオ)」に明確な境界を設けていないため,どこまでをどのように保全すべきかの議論が明確にできていない.
<IUGSによる地質遺産の国際的な重要性に関する評価ガイドラインを受けて>
2023年,IUGSより地質遺産の国際的な重要性に関する評価ガイドラインが出された.山陰海岸UGGpでは,新たにこのガイドラインに従って,地質遺産の再分類と再定義を行い,適切な管理運営ができるよう試みている.具体的には,IUGSが提案する11の地質学的関心のタイプに基づいて地質サイト・地質遺産を分類し,加えてその特徴から明確な地質遺産の範囲を決定する.また,科学的重要度や,文化財としての価値などからランク付けし,優先的に整備すべきサイトの明確化を行う.これらにより,今後より適切な地質遺産の管理運営が行われることが期待できる.
<山陰海岸ユネスコ世界ジオパークにおける“ジオサイト”の定義と管理>
2010年に世界ジオパークになった山陰海岸UGGpは,世界的価値としての玄武洞のほか日本海拡大を記録した地層群,日本海拡大前のユーラシア大陸の一部だった時代の花崗岩などからなる岩石海岸,日本海形成後の火山活動や地形形成に関わる火山岩類や砂丘など,多数の地質サイト・地質遺産を有する.山陰海岸では,2010年の世界審査を前に,これら地質サイト・地質遺産の評価と区分を行い,旧町村程度のある程度の地理的広がりを持った範囲を「ジオエリア」,徒歩で散策可能な小範囲を「ジオサイト」,個々の露頭などを「ジオスポット」と定義し,管理運営を行った.それぞれの価値や保全レベルの評価については,国立公園内であるかどうかや国の名勝や国指定天然記念物かどうか,あるいは市町指定文化財なのか,などに基づいてジオサイトやジオスポットのレベルで行った.ジオエリアは必ずしも法の下で保全されていない範囲も含まれ,まれにジオサイトでも法の下にない範囲も含んでいた.2010年の審査では「ジオエリア」という用語が単一の統一された地理的エリアである「ジオパーク」と混同されよろしくないと指摘され,その後使用を見合わせた.一般向けの地図や冊子を作成するにあたって,「ジオサイト」という言葉が一般に普及しておらずわかりにくいという意見が学術部会で出され,視認できるわかりやすい露頭や地形,サイトを「見どころ」と呼ぶことにした.その後の山陰海岸ジオパーク保護保全管理計画の策定(平成26年7月)と改訂(平成30年5月)に当たっては,上記の分類やサイトの呼び名を再定義し,以下のようにした.まず,地質遺産について,ジオパーク保全推進区域を定義し,地質遺産は必ずこの範囲に入っているものとした.ジオパーク保全推進区域とは,山陰海岸ジオパークの保護保全に有効な各種法令のうち,「鉱物の掘採」を規制する4つの法令(自然公園法,自然環境保全法,文化財保護法,景観法)の範囲である.次に,構成要素を「見どころ」とし,このうち,地形・地質的価値が認められているものを「見どころ(ジオ)」,生物的価値が認められているものを「見どころ(自然)」,歴史文化的価値が認められているものを「見どころ(文化)」と分類した.このうち,「見どころ(ジオ)」は,前述のジオパーク保全推進区域に含まれるものであり,この法的保護下にある見どころ(ジオ)の集まりを「地形地質遺産」と呼ぶこととした.ジオパーク保全推進区域外で新たに地形・地質的価値が認められる見どころが見つかった場合は,法令の整備により区域の拡大を行なうなど,見どころの保護保全に必要な措置を講じる.こうして定義した地形地質遺産の「見どころ(ジオ)」を対象に,学術部会・保護保全部会委員や環境省職員,府県市町担当者,地元ガイドが,定期的に見どころに出向き,現地の現状や保護保全活動の状況について調査,分析を行う.それらを踏まえ,各地質遺産や「見どころ(ジオ)」について,それぞれの科学的特徴,保全・活用状況,課題などについてリスト化・管理している.一方で,各地質遺産や「見どころ(ジオ)」の重要度などによるランク付けなどはしていない.そのため,特にどこを優先的に整備すべきか,調査・研究すべきか,などは判断しづらい状況にある.加えて,「見どころ(ジオ)」に明確な境界を設けていないため,どこまでをどのように保全すべきかの議論が明確にできていない.
<IUGSによる地質遺産の国際的な重要性に関する評価ガイドラインを受けて>
2023年,IUGSより地質遺産の国際的な重要性に関する評価ガイドラインが出された.山陰海岸UGGpでは,新たにこのガイドラインに従って,地質遺産の再分類と再定義を行い,適切な管理運営ができるよう試みている.具体的には,IUGSが提案する11の地質学的関心のタイプに基づいて地質サイト・地質遺産を分類し,加えてその特徴から明確な地質遺産の範囲を決定する.また,科学的重要度や,文化財としての価値などからランク付けし,優先的に整備すべきサイトの明確化を行う.これらにより,今後より適切な地質遺産の管理運営が行われることが期待できる.
