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[T1-O-2]Partial melting of lower crust and compositional variation in S-type granitic magma in the Osuzuyama acidic rocks, Miyazaki prefecture, SW Japan.

*Takuto Kitashiro1, Toshiaki SHIMURA1 (1. Yamaguchi Univ.)
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【ハイライト講演】  西南日本全域で生じた中新世中期のフレアアップを記録する尾鈴山酸性岩体を対象としている。野外調査および岩石記載を元に主岩相(溶結凝灰岩、花崗閃緑斑岩)の層序や他岩相(安山岩質MME、堆積岩起源ゼノリス)との地質学的関係性を明確にし、主岩相の全岩化学組成だけでなく他岩相の岩石学的解析を展開することで、尾鈴山酸性岩体のマグマ進化過程を構築しており、フレアアップ発生機構への理解が深まることが期待される。 ※ハイライト講演とは...

Keywords:

Outer zone of Southwest Japan,Osuzuyama acidic rocks,Granite,Metamorphic rock xenolith,MME


 西南日本外帯地域には外帯花崗岩類と総称される花崗岩類が、多様な産状で見られる。これら外帯花崗岩類は、より海溝側の地域ではS-type、中央構造線側ではI-typeの花崗岩類が見られ、どちらも西南日本全域にわたる同時多発的なフレアアップであるとされている。外帯花崗岩類のすべての活動は13.5~15.5 Maの非常に短期間で活動を終了しているとされている(Shinjoe et al., 2019)。 
その他で西南日本地域における同時期の火成活動として、高Mg安山岩(Tatsumi, 1981; 1982)に特徴づけられる瀬戸内火山岩類や、最も海溝寄りの地域で見られる外帯苦鉄質岩(例えば, 三宅, 1981)が挙げられる。これらはすべて中期中新世の火成活動であるが、それぞれの火成活動におけるマグマの成因に対する議論は現在でも続いている。宮崎県東部に位置する尾鈴山酸性岩体は、中田(1983)により、外帯花崗岩類の一単位とされ、主に溶結凝灰岩からなる噴出岩体が四万十帯の堆積岩を不整合に覆う形で分布している。これら主岩体に対し、北東から南西に向けて花崗閃緑斑岩がおよそ15 ㎞で貫入している。また、岩体南部には、花崗閃緑岩の岩脈も見られる。岩体の花崗閃緑斑岩中には、安山岩質のMMEや堆積岩起源のゼノリス、スピネルを含む包有物などが報告されている。 岩体の溶結凝灰岩(W.T.)はそれぞれW.T.1とW.T.2に分類されており、噴出・貫入の順序は層序的特徴からW.T.1→W.T.2→花崗閃緑斑岩とされている。それぞれの層の全岩化学組成や鉱物化学組成から、尾鈴山酸性岩体は層状マグマだまりを形成しており、これらは単純な結晶の沈降によって説明されるとしている。
本研究における調査では、花崗閃緑斑岩を中心に組成変化と岩体中に包有されている包有物に注目して行った。その結果、岩体中にはMMEが多くみられ、単位面積当たりのMMEの数は北東部で最も多く、南西部にかけて減少していく結果が得られた。MMEは斜長石・直方輝石・オージャイト・ピジョン輝石からなるハンレイノーライト質のもので、ピジョン輝石温度計(Ishii, 1975)より温度は約1100℃が得られた。スピネルを含む自形の珪線石の包有物やザクロ石のゼノクリストも見られ、これらもMMEと同様に北東部では多く見られるが南西部にかけて減少に転じる。 花崗閃緑斑岩は角閃石を産さず菫青石斑晶が見られ、黒雲母やアルカリ長石は比較的細粒で石基にのみ見られる。全岩化学組成は、SiO2 = 66~69 wt%の範囲で北東部ほどMgO,CaOに富み、南西部ほど減少する傾向が見られる。一方、溶結凝灰岩の組成は、SiO2 = 69~73 wt%で全体を通して花崗閃緑斑岩よりもMgO,CaOに乏しい特徴が見られる。それぞれの岩体における斜長石斑晶の鉱物化学組成は溶結凝灰岩では正累帯構造を示すのに対し、花崗閃緑斑岩では一部特徴的な高An含有量の累帯構造が見られる。岩体中に見られる変成岩ゼノリス由来の融け残りのゼノクリストから、最高温度ではGrt + Sil + Spl + Plの4相が共存しており、温度圧力条件は2-feldsper温度計(Whittney & Stormer, 1977)から810~860 ℃、GASpP圧力計(Shimura et al., 2023)から515~573 MPaである。
尾鈴山酸性岩体では、活動の時期が後になるほどMMEの量やMgO,CaOの量が多くなる。噴出・貫入は、マグマだまり上部から順に起こったと考えられるため、マグマだまり下部ほどMMEが多くMgOやCaOに富むマグマであったと言える。さらに、マグマだまり下部では斜長石斑晶が逆累帯構造を示す。これらは結晶沈降によるマグマだまりの組成変化ではなくよりマフィックなマグマとの混合の記録であると考えられる。また、下部地殻の変成岩ゼノリス由来のゼノクリストが非常に高温状態であったことや、花崗閃緑斑岩が菫青石を晶出するほどパーアルミナスな組成を示すのは、下部地殻の部分溶融の証拠であると考えられる。これらのマグマ混合や下部地殻の部分溶融はピジョン輝石を晶出するMMEのマグマが熱源となり起こったと考えられる。

Ishii (1975) Miner. Jour. 8, 48-57. 三宅(1981)地雑 87, 383-403. Nakada(1983) J. Petrol., 24, 471–494. Shimura et al. (2023) JMPS. 118, S008. Shinjoe., et al. (2019) Geol. Mag., 158, 47-71. Tatsumi (1981) EPSL., 54, 357-365. Tatsumi (1982)EPSL., 60, 305-317. Whitney & Stormer(1977) Amer. Mineral., 62, 687-691