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[T1-O-5]Rutiles indicating ultrahigh-temperature metamorphism in a garnet–biotite gneiss from Brattnipene, Sør Rondane Mountains, East Antarctica

*Hiroto GONDO1, Tetsuo KAWAKAMI1, Fumiko HIGASHINO1, Tatsuro ADACHI2, Masaoki UNO3 (1. Kyoto Univ., 2. Kyusyu Univ., 3. Tokyo Univ.)
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【ハイライト講演】  著者らは、東南極セールロンダーネ山地に産するグラニュライト相のザクロ石―黒雲母片麻岩から、ザクロ石中のルチルの産状とZr含有量に着目することで、超高温変成作用の痕跡の検出に成功している。グラニュライト相に達する高温変成帯における超高温変成作用の空間分布やそのテクトニクスの解明に貢献することが期待される。 ※ハイライト講演とは...

Keywords:

Sør Rondane Mountains,East Antarctica,ultrahigh-temperature metamorphism,rutile


 超高温変成作用(UHTM)は、900℃を超える温度条件かつ珪線石-藍晶石相転移線を概ね超えない圧力条件下における広域変成作用である[1]。UHTMの空間的な広がりや継続時間を明らかにすることは、当該超高温変成岩の形成過程を理解する上で重要である。東南極セール・ロンダーネ山地は、主に角閃岩相~グラニュライト相の高度変成岩類からなり[2]、構造境界であるMain Tectonic Boundary(MTB)を境として北東テレーンと南西テレーンに区分される[3]。同山地における超高温変成岩はこれまで、転石[4][5]を除くと、北東テレーンから報告されているのみで、時空間的広がりは不明である[6][7]。そこで本発表では、南西テレーンに属するブラットニーパネ小指尾根西壁の露頭から採取された泥質片麻岩中の高いZr濃度を有するルチルについて報告し、同片麻岩がUHTMを経験した可能性を議論する。本研究で用いたザクロ石-黒雲母片麻岩は、石英に富むQz-rich層と石英に極めて乏しくスピネルを産するQz-poor層を有する。Qz-rich層は、ザクロ石斑状変晶に加え、主として石英、斜長石、黒雲母、ルチル、イルメナイトがマトリクスを構成する。ザクロ石は、石英、斜長石、黒雲母、ルチル、ジルコンを包有し、リン(P)による振動累帯構造を有する。この振動累帯構造で定義される等時面に基づき、ザクロ石は多数の石英包有物をもつコア(Grs4)と、それよりも外側のリム(Grs3-4)に分けられる。ルチルはザクロ石全体に、黒雲母+ルチル(Zr=170-1118 ppm)+石英の多相包有物、ルチル+石英、ルチル単相などの産状で包有される。ルチル+石英の産状のルチル1粒子から極めて高いZr濃度(7633 ppm)が得られた。ルチル+石英およびルチル単相としてザクロ石に包有されるルチルの多くは細粒なため、周囲のザクロ石や石英との混合物として定量分析すると、Zr=348-3620 ppmを与えた。いずれの産状のルチルも、ザクロ石のPによる振動累帯構造で定義される等時面上にジルコンが包有される。Qz-rich層のマトリクスに産するルチルのZr濃度は1303 ppm以下であった。Qz-poor層は、ザクロ石斑状変晶に加え、主として斜長石、黒雲母、珪線石、スピネル、ルチル、イルメナイトがマトリクスを構成する。ザクロ石はPの振動累帯構造をもたず、Grs3-4のコア とGrs4-5のリムをもつ。コアからリムにかけて包有物の組み合わせに変化はみられない。ザクロ石コアは、珪線石やスピネルとともに高Zr濃度(2510-7707 ppm)のルチルおよびジルコンを包有するが、石英を包有しない。Qz-poor層のマトリクスに産するルチルのZr濃度は311-1792 ppmであった。Qz-rich層のザクロ石に包有されるルチル(Zr=7633 ppm)はジルコンや石英と共存することから、Zr-in-rutile地質温度計[8]を適用した結果、952℃以上の超高温条件を得た。一方、Qz-poor層のザクロ石コア中には、ルチルとジルコンが産するものの石英がみられない。そこで、ザクロ石中のルチル(Zr=7707 ppm)に対し、aSiO2を考慮したZr-in-rutile地質温度計[9]をaSiO2=0.5として適用し、珪線石安定領域内で849-971℃を得た。以上のように、本研究試料のザクロ石中には超高温を示すルチルが包有され、UHTMが南西テレーンまで広がっている可能性を示す。このように一部のルチルはUHTMの痕跡を残す一方で、Qz-rich層のザクロ石中には、超高温条件を示さない低Zr濃度のルチルも多数包有される。本発表では、これら2種類のルチルの成因についてさらに考察する。引用文献 [1] Harley 2021 Elsevier [2] Shiraishi et al. 1997 Antarctic Geol. Map Ser. [3] Osanai et al. 2013 Precam. Res. [4] Nakano et al. 2011 Polar Science [5] Baba et al. 2019 Mineral. Petrol. [6] Higashino and Kawakami 2022 JMPS [7] Satish-Kumar et al. 2025 Geol. J. [8] Tomkins et al. 2007 JMG [9] Ferry and Watson. 2007 CMP