Presentation Information
[G-O-7]Creation of the contact metamorphic map of Kyushu for risk assessment of slope hazards
*Makoto Saito1, Seira Katagiri1, Yayoi Muraoka1 (1. Geological Survey of Japan, AIST)
Keywords:
landslide,Seamless Digital Geological Map of Japan (1:200000),Kyushu,contact metamorphism,biotite
産総研地質調査総合センターでは,2005年以来20万分の1日本シームレス地質図の作成・公開を行ってきた.2005年の初期版では,100万分の1日本地質図第3版の地質区分を援用したため,接触変成についての凡例はなかった.2017年公開のV2版の作成時には,岩相を細分した新凡例を作成し,接触変成岩の凡例も作成した.しかし出版済みの20万分の1地質図幅を元にして編集したため,接触変成作用の表示のない20万分の1地質図幅が多く,接触変成を被った領域の図面表示には至らず原岩表示となっている.
一方,斜面崩壊について,従来から地質が素因として関係していると考えられてきた(例えば,黒田, 1986).土志田(2015)は旧版のシームレス地質図を用いて地質の関与を調べている.同V2版では,岩相区分が詳細になり,斜面崩壊の種類や発生頻度に素因として地質がどう関係しているのかをより正確に検討できる条件がある程度整った.しかし,接触変成情報は,変成鉱物の晶出,面構造の消失など,原岩の性質を変えるため,斜面崩壊の種類や発生頻度に影響を及ぼすと考えられるため,接触変成情報の追加は必須である.
例えば,三波川変成岩類のような高圧型変成岩類の分布域で,地すべりの発生頻度が高いことはよく知られており,接触変成作用を被った場合は,地形は急峻になり,地すべりは減って土石流型の斜面崩壊が主になるように見える. 2014年の広島豪雨で発生した土石流(斎藤ほか, 2015)の多くや,2023年の久留米の土石流の発生地域(阿部ほか, 2024)はどちらも接触変成作用を被った三畳紀〜ジュラ紀の高圧型変成岩類(周防変成岩類)である.また,5万分の1地質図幅「椎葉村」(斎藤ほか, 1996)の中期中新世の市房山花崗岩周辺の白亜紀付加体の諸塚層群,古第三紀付加体の日向層群では接触変成の分帯がなされており,その地域では非変成部分に比べて,防災科研の地すべり地形分布図で認められる地すべりは少ない.
そこで,現在九州を対象に行っている”産総研における斜面災害リスク評価のための地質情報整備”プロジェクトの中で,九州全域において,20万分の1シームレス地質図V2にオーバーレイできる接触変成マップの作成を試みた.同地質図で想定していた接触変成岩の変成度と原岩に基づく詳細な区分で表現するのではなく,接触変成領域(まずは,黒雲母帯以上)をオーバーレイする形で表現することを目的としてデータ収集を行った.既存の接触変成の情報を論文や地質図から得ると共に,情報の無いところでは露頭で接触変成の有無を確認し,変成度の判別が微妙なところでは泥岩・泥質片岩を中心に新たに試料を採取し,岩石薄片を作成して検鏡を行った.鏡下では泥岩,砂岩(基質部,泥岩片)については微細な黒雲母ができているかを元に判別した.また,高圧型の変成岩については,石英の波動消光の消失とともに,片理に関係無く成長した新たな変成鉱物として黒雲母が晶出しているかなどに注意して変成度の判別を行った.
今後,この変成分帯の情報を元に,収集しつつある九州の斜面災害データ,また整備しつつある流れ盤受け盤のデータなどと比較検討を行い,斜面崩壊と,接触変成を加えた地質凡例との関係を明らかにしていく予定である.その際,泥岩,砂岩,安山岩,泥質片岩,珪質片岩といった凡例ごとに斜面崩壊に対する接触変成作用の効果が異なってくることが予想され,原岩によって変成作用を受けた場合の発生確率がどう変化するかを明らかにしたいと考えている.
阿部朋弥ほか(2024) 2023年6月豪雨による九州北部の斜面崩壊地の地質学的検討. JpGU Meeting 2024, HDS08-P03.
土志田正二 (2015) 地すべり地形分布と地質との関係. 日本地すべり学会誌,52, 271-281.
黒田和男(1986) 地すべり現象に関する日本列島の地質地帯区分.地質学論集, no.28, 13-29.
斎藤 眞ほか (2015) 2014年8月20日広島豪雨による土石流発生地域の地質.地質雑, 121, 339-346.
一方,斜面崩壊について,従来から地質が素因として関係していると考えられてきた(例えば,黒田, 1986).土志田(2015)は旧版のシームレス地質図を用いて地質の関与を調べている.同V2版では,岩相区分が詳細になり,斜面崩壊の種類や発生頻度に素因として地質がどう関係しているのかをより正確に検討できる条件がある程度整った.しかし,接触変成情報は,変成鉱物の晶出,面構造の消失など,原岩の性質を変えるため,斜面崩壊の種類や発生頻度に影響を及ぼすと考えられるため,接触変成情報の追加は必須である.
例えば,三波川変成岩類のような高圧型変成岩類の分布域で,地すべりの発生頻度が高いことはよく知られており,接触変成作用を被った場合は,地形は急峻になり,地すべりは減って土石流型の斜面崩壊が主になるように見える. 2014年の広島豪雨で発生した土石流(斎藤ほか, 2015)の多くや,2023年の久留米の土石流の発生地域(阿部ほか, 2024)はどちらも接触変成作用を被った三畳紀〜ジュラ紀の高圧型変成岩類(周防変成岩類)である.また,5万分の1地質図幅「椎葉村」(斎藤ほか, 1996)の中期中新世の市房山花崗岩周辺の白亜紀付加体の諸塚層群,古第三紀付加体の日向層群では接触変成の分帯がなされており,その地域では非変成部分に比べて,防災科研の地すべり地形分布図で認められる地すべりは少ない.
そこで,現在九州を対象に行っている”産総研における斜面災害リスク評価のための地質情報整備”プロジェクトの中で,九州全域において,20万分の1シームレス地質図V2にオーバーレイできる接触変成マップの作成を試みた.同地質図で想定していた接触変成岩の変成度と原岩に基づく詳細な区分で表現するのではなく,接触変成領域(まずは,黒雲母帯以上)をオーバーレイする形で表現することを目的としてデータ収集を行った.既存の接触変成の情報を論文や地質図から得ると共に,情報の無いところでは露頭で接触変成の有無を確認し,変成度の判別が微妙なところでは泥岩・泥質片岩を中心に新たに試料を採取し,岩石薄片を作成して検鏡を行った.鏡下では泥岩,砂岩(基質部,泥岩片)については微細な黒雲母ができているかを元に判別した.また,高圧型の変成岩については,石英の波動消光の消失とともに,片理に関係無く成長した新たな変成鉱物として黒雲母が晶出しているかなどに注意して変成度の判別を行った.
今後,この変成分帯の情報を元に,収集しつつある九州の斜面災害データ,また整備しつつある流れ盤受け盤のデータなどと比較検討を行い,斜面崩壊と,接触変成を加えた地質凡例との関係を明らかにしていく予定である.その際,泥岩,砂岩,安山岩,泥質片岩,珪質片岩といった凡例ごとに斜面崩壊に対する接触変成作用の効果が異なってくることが予想され,原岩によって変成作用を受けた場合の発生確率がどう変化するかを明らかにしたいと考えている.
阿部朋弥ほか(2024) 2023年6月豪雨による九州北部の斜面崩壊地の地質学的検討. JpGU Meeting 2024, HDS08-P03.
土志田正二 (2015) 地すべり地形分布と地質との関係. 日本地すべり学会誌,52, 271-281.
黒田和男(1986) 地すべり現象に関する日本列島の地質地帯区分.地質学論集, no.28, 13-29.
斎藤 眞ほか (2015) 2014年8月20日広島豪雨による土石流発生地域の地質.地質雑, 121, 339-346.
