Presentation Information
[T12-O-4]Linkage between the transient oxygenation of the ocean-atmosphere system and the intence volcanism during the mid-Proterozoic
*Kazumi OZAKI1, Yasuto WATANABE2 (1. Institute of Science Tokyo, 2. National Institute for Environmental Studies)
Keywords:
Mid Proterozoic,Oxygen,Biogeochemistry,Biogeochemical model,Large Igeneous Province
大気海洋の酸化還元状態は気候状態や生命進化と密接に関連し、その安定性や変動性を明らかにすることは地球環境と生命の共進化の理解につながる重要な問題である。この視点で地球史を眺めた際、中期原生代(約18~8億年前)はその前後の時代に比べて生命進化や環境変化に顕著な変動が認められず、安定な地球環境が長期にわたって継続した時代として注目される。しかしながら、近年の地球化学データ(酸化還元敏感元素の濃集やクロム同位体比の正異常、炭酸塩のI/(Ca+Mg)、Ce異常)の蓄積により、約16億年前から14億年前にかけて少なくとも3回にわたり一時的な(~100万年)大気海洋系の富酸素化現象が生じたことが分かってきた。さらに、これらのイベント期間中には大陸風化の促進や海洋の富栄養化が生じていたことを示唆するデータが得られており、炭素同位体比や硫黄同位体比にも異常が認められることからグローバルな環境変動が生じたことは確からしい。これらの一時的な大気海洋の富酸素化の究極的な原因は未解明であるが、イベント層準の直下でHg濃集やHg同位体異常が検出されていることから、巨大火成岩区の形成に伴う大規模な火成活動が引き金ではないかと議論されている。しかしながら、これまでに得られている一連の地質記録が大規模な火成活動に起因した物質循環の応答として定量的に説明可能なのかという問題は明らかではない。
本研究では、大気-海洋-地殻間の生元素(C, N, P, O, S)循環を包括的に考慮した理論モデルCANOPSを用い、中期原生代の一時的富酸素化現象と大規模な火成活動との間の因果関係を明らかにするための数値実験を行った。中期原生代の地球システムを模擬した初期状態(大気O2濃度=~2%現在比、大気CO2濃度=~100現在比、海洋P濃度=10%現在比、全球平均地表面気温=290 K)に対し、顕生代の巨大火成岩区形成シナリオで想定されるCO2や還元ガスの脱ガスフラックスをモデルへと与え、その後の環境変動を予報した。典型的な脱ガスシナリオでは、大気CO2濃度の増加に伴う温暖化(>+10 K)によって陸域での化学風化が促進されることで海洋への栄養塩供給が増加し、海洋の富栄養化が進行(海洋P濃度=~60%現在比)するという結果が得られた。温暖化と富栄養化に伴い、海洋の貧酸素化が進行する。しかしながら、有機物や黄鉄鉱の埋没も卓越するために、噴火開始から10~20万年程度が経過すると大気中O2濃度が増加(>~15%現在比)する結果、その後はイベント前よりも酸化的な海洋環境が形成されることが分かった。火成活動による同位体的に軽いCO2の流入に加え、大気O2濃度の増加によって陸域での有機炭素の酸化風化が促進されることでも同位体的に軽い炭素が大気海洋系へと流入するため、生物生産の増大にもかかわらず炭素同位体比は1~2‰程度の負異常を示す。一方、硫黄同位体比は、ユーキシニアの拡大や黄鉄鉱埋没フラックスの増加を反映して大きな正異常(~50‰)を示した。
以上の数値実験結果は、近年得られている一連の大気海洋環境変動の推定と整合的な結果である。このことは、中期原生代における一時的な大気海洋系の富酸素化現象は巨大火成岩区の形成に伴う火成活動が究極的な原因であるとの仮説を支持するものである。一方、本研究結果は、イベント初期に温暖化や一時的な海洋の貧酸素化が生じたことを予測している。このような環境変動を実際に伴っていたかどうかについては、今後地質記録に基づく検証が必要である。
本研究では、大気-海洋-地殻間の生元素(C, N, P, O, S)循環を包括的に考慮した理論モデルCANOPSを用い、中期原生代の一時的富酸素化現象と大規模な火成活動との間の因果関係を明らかにするための数値実験を行った。中期原生代の地球システムを模擬した初期状態(大気O2濃度=~2%現在比、大気CO2濃度=~100現在比、海洋P濃度=10%現在比、全球平均地表面気温=290 K)に対し、顕生代の巨大火成岩区形成シナリオで想定されるCO2や還元ガスの脱ガスフラックスをモデルへと与え、その後の環境変動を予報した。典型的な脱ガスシナリオでは、大気CO2濃度の増加に伴う温暖化(>+10 K)によって陸域での化学風化が促進されることで海洋への栄養塩供給が増加し、海洋の富栄養化が進行(海洋P濃度=~60%現在比)するという結果が得られた。温暖化と富栄養化に伴い、海洋の貧酸素化が進行する。しかしながら、有機物や黄鉄鉱の埋没も卓越するために、噴火開始から10~20万年程度が経過すると大気中O2濃度が増加(>~15%現在比)する結果、その後はイベント前よりも酸化的な海洋環境が形成されることが分かった。火成活動による同位体的に軽いCO2の流入に加え、大気O2濃度の増加によって陸域での有機炭素の酸化風化が促進されることでも同位体的に軽い炭素が大気海洋系へと流入するため、生物生産の増大にもかかわらず炭素同位体比は1~2‰程度の負異常を示す。一方、硫黄同位体比は、ユーキシニアの拡大や黄鉄鉱埋没フラックスの増加を反映して大きな正異常(~50‰)を示した。
以上の数値実験結果は、近年得られている一連の大気海洋環境変動の推定と整合的な結果である。このことは、中期原生代における一時的な大気海洋系の富酸素化現象は巨大火成岩区の形成に伴う火成活動が究極的な原因であるとの仮説を支持するものである。一方、本研究結果は、イベント初期に温暖化や一時的な海洋の貧酸素化が生じたことを予測している。このような環境変動を実際に伴っていたかどうかについては、今後地質記録に基づく検証が必要である。
