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[T6-O-4]Reevaluation of phengite K-Ar ages from the Nagasaki metamorphic rocks in the Nomo Peninsula

*Kazumasa Aoki1, Shota Kodaira2, Koshi Yagi3, Taisei Fujiwara3, Ikuo Okada3 (1. Okayama University of Science, 2. Nagasaki City Dinosaur Museum, 3. Hiruzen Institute for Geology and Chronology Co., Ltd.)
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Nagasaki metamorphic rocks

 九州西部の長崎県野母半島、西彼杵半島,および熊本県天草下島には,主に白亜紀高圧変成岩類(三波川変成岩相当)からなる「長崎変成岩類」が分布する。このうち、野母半島に分布する長崎変成岩類の地質構造は、より低変成度の智頭変成岩相当(これまで「三郡変成岩」や「周防変成岩」と呼ばれてきたが、ここでは「智頭変成岩」とする: 磯崎ほか,2010)がより高変成度の三波川変成岩相当の上位にスラスト(野母­構造線)を介して累重しており(西村ほか,2004)、他2つの地域で確認される高変成度岩体がスラストを介してより低変成度岩体の上位に位置するという構造関係とは異なる(守山・山本, 2005)。一方で、野母半島には三波川変成岩相当の上位に、より高変成度の「城山マイロナイト」が薄く(〜30m)スライス状に存在し、他2つの地域においてもこれと同様の地質構造が確認されている(守山・山本, 2005など)。これらの報告は、長崎変成岩類分布域のなかで、野母半島でのみ確認される智頭変成岩相当が特異であることを示している。つまり長崎変成岩類全域の形成プロセスの理解には、智頭変成岩相当と三波川変成岩相当との累重関係を作った造構運動を理解することが必要不可欠であり、その理解は沈み込み帯前弧域で起こる造構運動の包括的理解にもつながると期待される。高圧変成岩の上昇・定置プロセスの理解には、対象とする変成岩の空間分布(地体構造区分)の特定が欠かせない。長崎変成岩類は白雲母K-Ar年代測定を主軸とした年代測定により、これまで智頭変成岩相当は野母半島南西部地域およびその北東延長部域(茂木地域)に分布するとされてきた(西村ほか,2004など)。しかし、茂木地域に分布する泥質片岩に対し水簸法を用いて濃集させた白雲母のK-Ar年代測定(加藤ほか, 2021など)を行ったところ、これまで報告されていた200 Ma前後の年代に比べ有意に若い約80 Maの年代値が得られ、茂木地域における智頭変成岩相当の分布に疑問が呈された(青木ほか,2024)。今回、野母半島における智頭変成岩相当の分布域をより詳しく検証するため、主たる分布域である野母半島南西部地域の泥質片岩に対し白雲母K-Ar年代測定を適用する。まず、茂木地域から得られた年代値の有意性を検討するため、測定試料を構成する白雲母に対しEPMAによる化学組成分析を行ったところ、試料内でのSiの変化は< 0.2(p.f.u)程度であった。この結果は年代測定に使用した試料中の白雲母はEPMAの分析内では組成的に均質であることを示し、水簸法と相まって茂木地域から得られたK-Ar年代値の有意性を高める。また、今回K-Ar年代測定を行う野母半島南西部地域に分布する泥質片岩の白雲母の化学組成分析を同様に行ったところ、Si変化は<0.2(p.f.u)程度であり、試料内における組成の均質性が確認された。本発表では、測定で得られた白雲母K-Ar年代値を報告するとともに、野母半島における智頭変成岩相当の分布域について言及する。また、得られた結果をもとに、長崎変成岩類の構造発達史についても議論したい。
引用文献
磯崎ほか, 2010. 地学雑誌, 119, 999–1053.
西村ほか, 2004. 地質学雑誌, 110, 372–383.
守山・山本, 2005. 地質学雑誌, 111, 765–778.
加藤ほか, 2021. 地質学雑誌, 127, 437–442.
青木ほか, 2024. 日本地質学会第131年学術大会, T9-O-2