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[T1-P-7]Reactions responsible for the formation of the reaction zones associated with mable in Ryoke metamorphic complex in the Yanai area.

*Kaito Nagaoka1, Takeshi Ikeda1 (1. Department of Earth and Planetary Sciences, Graduate School of Science, Kyushu University)
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Keywords:

Retrograde metamorphism

 山口県柳井地域の領家変成帯の最高変成度のざくろ石―菫青石帯には、石灰岩と珪質岩が反応帯を伴って産する。本研究では、反応帯形成時の反応を明らかにした。
 反応帯は、石灰岩内に発達する反応帯Aと石灰岩-珪質岩境界に発達する反応帯Bに区別される。反応帯Aの構成鉱物は、単斜輝石(Cpx)、斜長石(Pl)、スフェーン(Sph)、カリ長石(Kfs)、ゾイサイト(Zo)であり、反応帯Bでは、これに珪灰石(Wo)が加わる。Cpx、Plは反応帯全域に遍在している。Kfs、Sphは反応帯中心部に産する。Woは石灰岩側と珪質岩側の両方に産し、反応帯に対して斜交して発達する。Zoは石灰岩側と反応帯中央部側の両方に産し、反応帯に対して直交して発達する。反応帯A中央部のZoはPlリムを置換している。反応帯B中央部のZoは単結晶として産する。
 石灰岩と珪質岩のバルクはほぼCaCO3とSiO2と近似できる。これらの成分では反応帯に産するWo以外の鉱物を説明することはできない。反応帯中心部に産するSph、Cpx、KfsはそれぞれTiとMg(+Fe)とKを含む唯一の鉱物である。それらの元素が系外から反応帯中心部にのみ供給されることは考えにくい。言い換えればSph、Cpx、Kfsは元々存在していたと考えられる。PlリムをZoが置換する組織は、Plも元々存在していたことを示唆する。これらの鉱物を含む層として、塩基性岩層が考えられる。反応帯は石灰岩、珪質岩、塩基性岩層の間の交代反応によって形成されたと考えられる。
 反応帯の縁辺部に産するWoは、石灰岩と珪質岩との以下の反応で生成したと解釈される。
石英 + 方解石 = 珪灰石 + CO2 ―反応①
(SiO2 + CaCO3 + CaSiO3 = CO2)
 反応帯縁辺部と中央部に産するZoは、石灰岩と反応帯中央部のPlとの以下の反応で生成したと解釈される。
斜長石 + 方解石 + H2O = ゾイサイト + CO2 ―反応②
(3CaAl2Si2O8 + CaCO3 + H2O + 2CaAl3Si3O12(OH) + CO2)
 反応①は定圧で右辺が高温、反応②は左辺が高温である(Kerrick, 1974)。左辺は高CO2環境下において安定で、右辺は低CO2環境下において安定である。したがって、両反応が右辺に進行するためには、粒間流体のXCO2が減少する必要がある。XCO2の減少の原因は系外からのH2O流体の流入と考えられる。   
 ざくろ石―菫青石帯の最高変成時には、粒間流体が存在しない脱水融解反応が進行していたと考えられている(Ikeda, 2004)。そのような条件では、系外からのH2O流体の流入は期待されない。H2O流体の流入及び反応帯の形成は、後退変成作用時に生じたと考えられる。

引用文献
Ikeda(2004)CMP
Kerrick(1974)AM