Presentation Information
[T2-P-1]Growth process of orthoclase megacrysts in the Yakushima Granite
*Takuma KAKIUCHI1, Nobuo GESHI1, Atsushi TORAMARU1 (1. Kyushu University)
Keywords:
granite,orthoclase megacryst
屋久島花崗岩は四万十層群の付加体堆積物に貫入した、約400 km2の露出面積をもつ大型の深成岩体であり、正長石巨晶を含む一様な斑状組織が特徴である。正長石巨晶は最大14cmに達し、明瞭なカールスバッド双晶と高い自形性を示す。また正長石巨晶の断面では黒雲母などの包有鉱物が結晶の外形に平行に配列し、1~3層程度の累帯構造をしていることが知られている(佐藤・長浜, 1979)。
Kawachi and Sato (1978)は、正長石巨晶がマグマ結晶化の初期段階に形成されたと解釈した。しかし巨晶の成長環境や各鉱物の晶出順序については明らかになっていない。そこで本研究では、正長石巨晶の内部組織観察・鉱物組成分析を行い、その成長過程について議論する。
正長石巨晶の強い自形性や定向配列、巨晶内の黒雲母・斜長石結晶包有物が自形で巨晶外形に平行に配列していることは、結晶が回転できる程度にメルトリッチな環境で巨晶が懸濁していたことを示唆する。また包有結晶の粒径が巨晶内部の包有位置によらず基質の鉱物結晶と比較して明確に小さいことは、正長石巨晶がほとんど完成したあとで基質鉱物結晶がさらに成長したことを示唆する。巨晶正長石のOr#(=K/( Na+K+Ca)×100)の組成幅はOr#=30~90、平均値はOr#=76であり、コアからリムにかけて緩やかに上昇する。一方で基質部にある他形の正長石はOr#=80~90と巨晶に比べ高い値をとる。このような形状と組成の違いから両者の形成ステージが明確に区別でき、巨晶が完成した後で基質正長石が晶出した可能性が高い。加えて、巨晶内のBa成分が累帯構造を示しリムにはほとんど含まれないこと、基質正長石にBaがほとんど含まれないことが明らかになった。これは正長石にBaが取り込まれやすく、巨晶完成後のメルト中Ba濃度が低い環境で基質正長石が形成したことを示唆する。カリ長石中のBa拡散係数は小さいため、累帯構造は巨晶が形成した当時の状態を保持している成長過程の記録として重要な意味を持つ。
(引用文献)
佐藤・長浜 (1979) 屋久島西南部の地質, 地域地質研究報告(5万分の1図幅), 地質調査所.
Kawachi and Sato (1978) Neues Jahr. Mine. Abh., Bd. 132, 136-152.
Kawachi and Sato (1978)は、正長石巨晶がマグマ結晶化の初期段階に形成されたと解釈した。しかし巨晶の成長環境や各鉱物の晶出順序については明らかになっていない。そこで本研究では、正長石巨晶の内部組織観察・鉱物組成分析を行い、その成長過程について議論する。
正長石巨晶の強い自形性や定向配列、巨晶内の黒雲母・斜長石結晶包有物が自形で巨晶外形に平行に配列していることは、結晶が回転できる程度にメルトリッチな環境で巨晶が懸濁していたことを示唆する。また包有結晶の粒径が巨晶内部の包有位置によらず基質の鉱物結晶と比較して明確に小さいことは、正長石巨晶がほとんど完成したあとで基質鉱物結晶がさらに成長したことを示唆する。巨晶正長石のOr#(=K/( Na+K+Ca)×100)の組成幅はOr#=30~90、平均値はOr#=76であり、コアからリムにかけて緩やかに上昇する。一方で基質部にある他形の正長石はOr#=80~90と巨晶に比べ高い値をとる。このような形状と組成の違いから両者の形成ステージが明確に区別でき、巨晶が完成した後で基質正長石が晶出した可能性が高い。加えて、巨晶内のBa成分が累帯構造を示しリムにはほとんど含まれないこと、基質正長石にBaがほとんど含まれないことが明らかになった。これは正長石にBaが取り込まれやすく、巨晶完成後のメルト中Ba濃度が低い環境で基質正長石が形成したことを示唆する。カリ長石中のBa拡散係数は小さいため、累帯構造は巨晶が形成した当時の状態を保持している成長過程の記録として重要な意味を持つ。
(引用文献)
佐藤・長浜 (1979) 屋久島西南部の地質, 地域地質研究報告(5万分の1図幅), 地質調査所.
Kawachi and Sato (1978) Neues Jahr. Mine. Abh., Bd. 132, 136-152.
