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[T2-P-2]Cathodoluminescence pattern and titanium concentration in quartz in the Shiraishino granodiorite, central Kyushu, Japan: Implication on the crystallization process of quartz in magma chamber
*Yasuhiro OGITA1,2, Yota JOSAKI1, Takenori KATO3, Takashi YUGUCHI1 (1. Kumamoto Univ., 2. Yamagata Univ., 3. Nagoya Univ.)
Keywords:
Shiraishino granodiorite,Quartz,Cathodoluminescence pattern,Ti concentration,Magma chamber process
プレート収束帯での火成活動は地史を通して一定ではなく,フレアアップと呼ばれる大規模なマグマ活動が存在する(Paterson and Ducea, 2015, Elements).白亜紀のフレアアップを示す深成岩体のうち,九州中部の白石野花崗閃緑岩体(以下,白石野岩体)は,朝鮮半島南部~九州中部に分布する白亜紀深成岩類の中で最南端に位置し,貫入時期(121±14 Ma;全岩Rb-Srアイソクロン年代)が最も古いと推定されている(亀井ほか, 1997, 岩鉱).ゆえに,白石野岩体の形成に係るマグマ溜りプロセスを明らかにすることは,白亜紀のフレアアップをもたらした火成活動のメカニズムを解明するうえで重要な知見となる.白石野岩体は肥後深成岩類を構成する1岩体であり,Rb-Sr全岩アイソクロン年代は121 ±14 Maであることが報告されている(亀井ほか, 1997, 岩鉱).肥後深成岩類は臼杵-八代構造線の北側に位置し,肥後深成岩類の中で白石野岩体は東西に伸びる帯状の分布を持つ(Yamamoto, 1962, Bull. Fukuoka Gakuin Univ.; 亀井ほか, 1997, 岩鉱).本研究では,白石野岩体に産出する石英に着目し,石英のカソードルミネッセンス(CL)像解析とTi濃度定量分析に基づき,マグマ溜り内での石英の結晶化プロセスを解明する.石英のTi濃度定量分析には,名古屋大学 宇宙地球環境研究所のEPMA(JEOL JCXA-733)を用いた.Ti濃度は,白石野岩体の4地点,5サンプル(東西約5 kmの領域)の岩石サンプル,18粒子の石英の94スポットにおいて取得した.偏光顕微鏡による観察の結果,白石野岩体の石英には,①他形で,寄木細工状(Granoblastic)組織を有する石英と,②波動消光を示す石英が顕著に産する.CL像解析により,オシラトリゾーニングは認めらないものの輝度が漸移的に変化する「Gradual zoning」を示すパターンと,輝度が均質な「Homogeneous」パターンが観察された.これらの石英に対するTi濃度定量分析の結果,最大166±11 ppmのTi濃度を得た.それぞれの粒子で最もTi濃度の高い地点をTiO2活動度1.0として,TitaniQ温度計(Wark and Watson, 2006, Contributions to Mineralogy and Petrology)を用いて各粒子の結晶化温度を算出したところ,白石野岩体の石英の結晶化温度は638±41℃から812±22℃の幅を有することが分かった.また,分析を実施した5サンプルでの石英の結晶化温度の相違は認められなかった.同一の岩石サンプルのジルコンからは,約107Maで約800℃から650℃の結晶化年代と結晶化温度が得られている(坂元ほか, 2025, 地質学会T2セッションにて発表).石英とジルコンが同程度の温度で晶出したことから,白石野岩体の5サンプル(4地点)において一様な冷却過程を経たことが推定される.また本研究では,Ti濃度とCL輝度の相関を示さないCL低輝度領域の分布を新たに見出した.このCL低輝度領域は石英粒子内に網目状に分布する.波動消光やGranoblastic組織は,応力が加わることにより形成される組織である(田切・堀江, 1998, 岩鉱; 酒匂ほか, 1971, 岩石鉱物鉱床学会誌).また,CL輝度は含有されるTi濃度あるいは結晶の欠陥に依存すると報告されており,CL低輝度分布のTi濃度が輝度に依存しないことは,結晶の欠陥に原因を求めることが妥当である.このため,CL低輝度領域はサブソリダス期に岩体への応力が加わった記録であることが推察される.
