Presentation Information

[T2-P-11]Preliminary report of petrography and viscosity of pillow lava and pseudo-pillow lava in the Late Miocene-Pliocene Subari andesite at the Tomari coast in Happo town, Akita Prefecture

*Masataka AIZAWA1, Mitsuhiro YASUI2,3, Takumi IMURA4, Takashi HOSHIDE5, Jun HASHIMOTO6, Ryota SAWAFUJI2, Ryo IMAI2, Tomimasa HATAKEYAMA2, Shigeki KODAMA2, Yoshitada ASAKAWA2, Masao BAN4, Shintaro HAYASHI7 (1. Hokkaido Education University, Sapporo Campus, 2. Sohken Consult. Co. Ltd., 3. Guide group of Happo-Shirakami Geopark, 4. Yamagata University, Faculty of Science, 5. Akita University, Graduate School of International Resource Sciences, 6. Geo-work Science, 7. Professor Emeritus, Akita University)
PDF DownloadDownload PDF

Keywords:

Happo-Shirakami Geopark,Subari Andesite,Pillow lava,Pseudo-pillow lava,Viscosity

 はじめに
 秋田県北西部の上部中新統~鮮新統「素波里安山岩」は東側から西側へかけて最東部岩体,東部岩体および西部岩体に細分される[1]。このうち西部岩体に属する八峰町の泊海岸では,ごく狭い範囲内で玄武岩質の枕状溶岩(SiO2=50.1–50.3 wt%)および安山岩質の偽枕状溶岩(SiO2=60.4–61.8 wt%)が共存して産する[2]。前者は,厚い急冷周縁相(crust)を伴い親枕(1st pillow)から娘枕(2nd pillow)に派生し,その内部断面には放射状割れ目が確認できる。後者は薄い急冷周縁相を伴う多面体として産し,その内部断面において外形に垂直かつ1~2方向の割れ目を伴う。層序関係は,下位に偽枕状溶岩が分布し,火山礫凝灰岩に漸移した後,枕状溶岩が累重する。枕状溶岩と偽枕状溶岩が一箇所の露頭に共存することは珍しく,その成因は未詳である。本論では,泊海岸の枕状溶岩と偽枕状溶岩の関係について,露頭産状,岩石記載的特徴,全岩化学組成,鉱物化学組成に注目して,これらの成因を考察する。

泊海岸における素波里安山岩の噴火活動
泊海岸の枕状溶岩と偽枕状溶岩は,いずれもGill[3]の中間K系列に属し,Zr/NbやBa/Nbはほぼ同じ値を示す。したがって,両者は共通の起源マグマからの分化によって形成されたと考えられる。玄武岩(APL)はかんらん石,単斜輝石,および斜長石斑晶を含み,斜長石斑晶は若干の汚濁帯を有する場合が多いが,正累帯構造を示し,特に外縁部で顕著である。一方,安山岩(PPL)は単斜輝石,直方輝石,斜長石斑晶を含み,玄武岩よりも斑晶の総量が少なく,斜長石斑晶は,丸みを帯びたコア部の周囲を厚くリム部が取り巻いて,自形結晶となっているものが多い。正累帯構造を示す斑晶のほか,波動累帯構造を示すものも多く,一部は逆累帯構造もみられる。石基にはピジョン輝石を含む。今回,枕状溶岩と偽枕状溶岩をセットで観察できたポイントでは,下位に偽枕状溶岩,上位に枕状溶岩が分布する。両者の間に挟在する火山礫凝灰岩は,若干の時間間隙を示す可能性はあるが,大局的には安山岩質マグマが噴出した後,玄武岩質マグマへと噴火が移行している。
偽枕状溶岩中で共存する二種類の輝石について,Wells[4]による両輝石温度計で求めた温度は1,010~1,040℃であった。玄武岩質の枕状溶岩はこれよりも高温(1,100℃)とみなし,温度と全岩化学組成を用いてShaw[5]の式によりマグマの粘性を求めると,枕状溶岩は61~109 Pa・s,偽枕状溶岩は2,620~8,742 Pa・sという値を得た。枕状溶岩の値は,ハワイ諸島キラウェア火山のパホイホイ溶岩流の粘性(実測値)の380 Pa・s[6]に匹敵する。また,偽枕状溶岩の典型例として,阿蘇カルデラで報告された溶岩[7]について計算すると21,876 Pa・sであり,八峰町泊海岸の偽枕状溶岩はやや粘性が低い。 計算した粘性率をみると,玄武岩質枕状溶岩と安山岩質偽枕状溶岩では,2桁~3桁ほどの違いがある。粘性率が大幅に違うマグマは均質に混合することが困難であり[8],噴火時に苦鉄質包有物を形成しやすいことが知られる。本地域では同様な産状が見られなかったことから,両者のマグマは地下深部では同じ起源のマグマから分化したが,噴火時には近傍の異なる噴出源から流出したものと考えられる。

引用文献
[1]相澤正隆ほか(2024)日本地質学会第131年学術大会講演要旨集.
[2]橋本 純ほか(2025)日本地質学会第132年学術大会講演要旨集.
[3]Gill, J. B. (1981) Orogenic andesites and plate tectonics. Springer-Verlag, Berlin.
[4]Wells, P. R. A. (1977) Contrib. Mineral. Petrol., 62.
[5]Shaw, H. R. (1972) Am. J. Sci., 272.
[6]Chevrel, M. O. et al. (2018) Earth Planet. Sci. Lett., 493.
[7]Watanabe, K. and Katsui, Y. (1976) J. Min. Petr. Econ. Geol., 71.
[8]Sparks, R.S.J. and Marshall, L.A. (1986) J. Volcan. Geotherm. Res., 29.