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[T2-P-15]Emplacement pressure estimates for plutonic rocks distributed in the Inner Zone of Southwest Japan (Chugoku and Shikoku regions) — Using a machine learning-based geothermobarometer for amphibole—

*Kai Nakahashi1, Satoshi SAITO2 (1. Hiruzen Institute for Geology and Chronology Co., Ltd., 2. Graduate School of Science and Engineering, Ehime University)
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Keywords:

Granitoids,Machine learning thermobarometry,Emplacement pressure,Inner Zone of Southwest Japan

 はじめに 西南日本内帯は花崗岩質岩が広く分布しており, 含有鉱物, 形成年代などによって日本海側から中央構造線側へ, 山陰帯, 山陽帯, 領家帯に区分されている (例えば, 石原, 1973; Ishihara, 1977など). 特に中国・四国地域の花崗岩質岩については, 化学的組成や形成年代の広域的な変化などが研究されている (例えば, Iida et al., 2015; Ishihara and Ohno, 2016). しかしながら, 花崗岩質岩定置時の温度や圧力条件について, その広域的変化の詳細については理解されていない. 花崗岩質岩の定置圧力条件を制約するために, しばしば鉱物組成を用いた地質圧力計が用いられている (例えば, Suzuki et al., 2022; 中山ほか, 2025など). 一方で近年, 機械学習を用いた高温高圧実験データの多変量解析に基づく経験的地質温度圧力計が提案されている (例えばPetrelli et al., 2020; Thomson et al., 2021など). このような経験的地質圧力計は熱力学的な背景を持たないが, 基となる高温高圧実験条件の範囲内において, 共存する鉱物の組み合わせによらず広く適用できる (石橋ほか, 2021). この特徴を利用して, 本研究では中国・四国地域の花崗岩質岩について,機械学習に基づく経験的地質圧力計を用いて広域的な圧力条件解析を行ったので, その結果を報告する.
研究手法 本研究は山陰帯から川本花崗閃緑岩, 大東花崗閃緑岩, 小木石英閃緑岩, 阿毘縁花崗閃緑岩, 奥津花崗閃緑岩, 湯原南斑れい岩, 山陽帯から日近花崗岩, 領家帯から松山花崗閃緑岩, 森上トーナル岩, 志度花崗閃緑岩を対象に試料採取を行った. それぞれの試料について薄片の作成, 観察を行った. また, 愛媛大学理学部設置のSEM-EDSを用いて, 角閃石の鉱物化学組成の分析を行った. 圧力条件見積もりは, Higgins et al. (2022)により提案された機械学習に基づく経験的地質圧力計を用いて行った. この地質圧力計は, 個々のデータについて圧力見積もりの誤差を算出する。本研究では, 誤差範囲が200 MPaを超えるものについては考察から除外した.
結果 山陰帯深成岩類に含まれる角閃石は, 累帯構造を持ち, そのリム部は変質していた. そのため, 変質したリム部については圧力見積もりから除外した. これにより本研究で得られた各岩体の圧力見積もりは, 川本花崗閃緑岩で220~300 MPa, 大東花崗閃緑岩で200~440 MPa, 小木石英閃緑岩で210~280 MPa, 阿毘縁花崗閃緑岩で230~430 MPa, 奥津花崗閃緑岩で220~370 MPa, 湯原南斑れい岩で220~270 MPa, 日近花崗岩で270~460 MPa, 松山花崗閃緑岩で310~450 MPa, 森上トーナル岩で300~400 MPa, 志度花崗閃緑岩で350~430 MPaとなった.
考察 得られた圧力は, 角閃石の結晶化圧力と解釈されるが, 各岩体において見積もられた最低圧力は最終的なマグマの定置圧力に近いものと考えられる. ただし, 本研究のうち山陰帯深成岩類については, 変質作用の影響により角閃石のリム組成を圧力見積もりに適用することができていないため, 最終的なマグマの定置圧力はより低圧である可能性がある. 一方で, 研究対象とした山陰帯から領家帯までの各岩体の最低圧力を比較すると, 南に向かってより圧力が増加する傾向がある. 本研究の手法により, 明らかとなった深成岩類の圧力見積もりの広域変化は, 深成岩形成後の西南日本内帯の構造運動を反映したものと考えられる.
引用文献 Higgns et al. (2022), CMP, 177:10; Iida et al. (2015), Island Arc, 24, 205-220; 石橋ほか (2021), 火山, 66, 2, 119-129; 石原 (1973), 鉱山地質, 23, 13-32; Ishihara (1977), Min Geol, 27, 193-305; Ishihara and Ohno, (2016), Bull. Geol. Surv. Japan, 67 (2), 41-58; 中山ほか (2025), 地質学雑, 131, 1, 123-133; Petrelli et al. (2020), JGR Solid Earth, 125, e2020JB020130; Suzuki et al. (2022), Island Arc, 31, e12462; Thomson et al. (2021), JGR Solid Earth, 126, e2020JB020604.