Presentation Information
[T2-P-17]Formation processes of the Koyama gabbroic body in the Susa area, Yamaguchi Prefecture, Japan
*Tsubasa SHIMADA1, Keisuke ESHIMA2 (1. Yamaguchi University , 2. Graduate School of Science and Technology for Innovation)
Keywords:
Miocene igneous activity,Opening of Japan Sea,Mafic magma,Koyama gabbro,Intrusive relationships
中新世に発生した日本海拡大イベントは,東北日本弧と西南日本弧がそれぞれの回転軸を中心に回転するモデル(Otofuji et al., 1985, Earth Planet. Sci. Lett., 75, 265–277)や島弧が平行移動に加え回転運動するモデル(Hayashida et al., 1991, Geophys. Res. Lett., 18, 1095–1098)など多様なテクトニクスモデルが提案されてきた.しかし,日本海拡大に関するテクトニクスモデルの議論は依然として収束しておらず,関連する火成活動を含めたプレートモーションには議論の余地がある.また,中新世火成活動に関連する苦鉄質マグマの特徴は対象となる苦鉄質岩体の露出が限られていることから,未だ情報不足である.特に,背弧側の苦鉄質岩体は極めて限定的であり,山口県須佐地域に分布する「高山斑れい岩」と島根県島根半島に分布する「新第三紀貫入岩」のみである.苦鉄質マグマは一般に珪長質火成活動の熱源としての役割を持つほか,マグマ発生機構を含む地下深部情報を有している.そこで,本研究では高山斑れい岩体を対象に野外地質調査を主軸とし,岩体を構成する各岩相の記載岩石学特徴と岩石学的特徴を精査し,貫入関係,形成過程,およびテクトニクス場を明らかにする.最終的には,これらの検討を中新世火成活動に展開し,古地磁気学および年代学的手法では未解決な日本海拡大時の「プレート鉛直方向の動き」の復元を目的としている.
山口県萩市須佐地域の地質は下位から後期白亜紀阿武層群とそれを不整合に覆う中新世須佐層群およびそれらを貫く高山斑れい岩体によって構成される.また,高山斑れい岩体は高山斑れい岩とその活動時期にオーバーラップする山島火山岩類に区分され,両者の活動時期は全岩および黒雲母K–Ar年代測定から15Ma前後とされている(今岡ほか, 1997, 岩鉱92, 302–315; 今岡ほか, 1994, Bull. Res. Inst. Nat. Sci., Okayama Univ. of Sci., No.20).本地域で最も露出面積の大きな高山斑れい岩は一般に,主成分鉱物として斜長石,単斜輝石,直方輝石および角閃石から構成され,石英,磁鉄鉱,チタナイト,二次的に晶出した黒雲母および方解石を少量含む.また,高山斑れい岩は組織とその構成鉱物から以下の3タイプに区分される: 1)Type 1(Kgb-1):二次鉱物が少なく等粒状組織,2)Type 2(Kgb-2):二次鉱物が多く不均質,3)Type 3(Kgb-3):最も優黒質で集積構造を持ち,かんらん石を含む.高山斑れい岩の大部分はKgb-1が占め,母岩である須佐層群および阿武層群との接触部付近と岩体の高標高部にKgb-2が選択的に露出する.また,Kgb-3の露出は調査地北東部に限られている.これら3岩相の野外地質学的関係はすべて漸移関係であり,明瞭な境界を持つことはない.さらに,Kgb-2の不均質部にKgb-3が含まれている産状も確認される.一方,山島火山岩類は安山岩質であり,溶岩,岩脈および同時性岩脈として産する.高山斑れい岩との接触関係は形態ごとに異なり,順にルーフ接触,急冷周縁相を持つ貫入形態およびback veinやnetwork veinが発達する貫入形態が確認される.また,溶岩の一部には高山斑れい岩が見かけ捕獲岩様に包有される産状もあるが,これが固結後に包有されたものなのか,地殻内でクリスタルマッシュとして存在していたものを噴出時に包有したものなのか,判別できていない.
本研究は野外地質学的および記載岩石学的情報に基づき,山島火山岩類(山島溶岩,山島岩脈,山島同時性岩脈)と高山斑れい岩(Kgb-1,Kgb-2,Kgb-3)の複雑な貫入関係を検討し,以下にまとめる.高山斑れい岩は母岩である阿武層群と須佐層群に貫入し,両者に接触変成作用を与える.その後,山島溶岩が須佐地域北部に噴出・流出し,厚い溶岩層を形成する.さらに,高山斑れい岩が母岩を含む上記3岩相に貫入する.その際,山島火山岩類マグマも再活動し,山島同時性岩脈として貫入する.一方,高山斑れい岩はマグマだまり内で集積作用を経験しType3,その絞り出しメルトとしてType1および母岩との混合や外部流体の付加を経験し,Type2へと進化した.最後に,山島火山岩類マグマの活発化に伴い,山島岩脈が急冷周縁相を伴う明瞭な境界を持ちその他岩相に貫入する.その後,高山斑れい岩体の火成活動は収束したと結論づけられる.また,山島溶岩の一部にはKgb-3が見かけ捕獲岩様に包有されることから,山島火山岩類マグマ上昇時には高山斑れい岩マグマ溜まりはすでに形成途中であったことも示唆される.以上より,本岩体の火成活動は火山深成複合活動の側面から詳細な検討が必要であると考えられる.
山口県萩市須佐地域の地質は下位から後期白亜紀阿武層群とそれを不整合に覆う中新世須佐層群およびそれらを貫く高山斑れい岩体によって構成される.また,高山斑れい岩体は高山斑れい岩とその活動時期にオーバーラップする山島火山岩類に区分され,両者の活動時期は全岩および黒雲母K–Ar年代測定から15Ma前後とされている(今岡ほか, 1997, 岩鉱92, 302–315; 今岡ほか, 1994, Bull. Res. Inst. Nat. Sci., Okayama Univ. of Sci., No.20).本地域で最も露出面積の大きな高山斑れい岩は一般に,主成分鉱物として斜長石,単斜輝石,直方輝石および角閃石から構成され,石英,磁鉄鉱,チタナイト,二次的に晶出した黒雲母および方解石を少量含む.また,高山斑れい岩は組織とその構成鉱物から以下の3タイプに区分される: 1)Type 1(Kgb-1):二次鉱物が少なく等粒状組織,2)Type 2(Kgb-2):二次鉱物が多く不均質,3)Type 3(Kgb-3):最も優黒質で集積構造を持ち,かんらん石を含む.高山斑れい岩の大部分はKgb-1が占め,母岩である須佐層群および阿武層群との接触部付近と岩体の高標高部にKgb-2が選択的に露出する.また,Kgb-3の露出は調査地北東部に限られている.これら3岩相の野外地質学的関係はすべて漸移関係であり,明瞭な境界を持つことはない.さらに,Kgb-2の不均質部にKgb-3が含まれている産状も確認される.一方,山島火山岩類は安山岩質であり,溶岩,岩脈および同時性岩脈として産する.高山斑れい岩との接触関係は形態ごとに異なり,順にルーフ接触,急冷周縁相を持つ貫入形態およびback veinやnetwork veinが発達する貫入形態が確認される.また,溶岩の一部には高山斑れい岩が見かけ捕獲岩様に包有される産状もあるが,これが固結後に包有されたものなのか,地殻内でクリスタルマッシュとして存在していたものを噴出時に包有したものなのか,判別できていない.
本研究は野外地質学的および記載岩石学的情報に基づき,山島火山岩類(山島溶岩,山島岩脈,山島同時性岩脈)と高山斑れい岩(Kgb-1,Kgb-2,Kgb-3)の複雑な貫入関係を検討し,以下にまとめる.高山斑れい岩は母岩である阿武層群と須佐層群に貫入し,両者に接触変成作用を与える.その後,山島溶岩が須佐地域北部に噴出・流出し,厚い溶岩層を形成する.さらに,高山斑れい岩が母岩を含む上記3岩相に貫入する.その際,山島火山岩類マグマも再活動し,山島同時性岩脈として貫入する.一方,高山斑れい岩はマグマだまり内で集積作用を経験しType3,その絞り出しメルトとしてType1および母岩との混合や外部流体の付加を経験し,Type2へと進化した.最後に,山島火山岩類マグマの活発化に伴い,山島岩脈が急冷周縁相を伴う明瞭な境界を持ちその他岩相に貫入する.その後,高山斑れい岩体の火成活動は収束したと結論づけられる.また,山島溶岩の一部にはKgb-3が見かけ捕獲岩様に包有されることから,山島火山岩類マグマ上昇時には高山斑れい岩マグマ溜まりはすでに形成途中であったことも示唆される.以上より,本岩体の火成活動は火山深成複合活動の側面から詳細な検討が必要であると考えられる.
