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[T2-P-19]Geochemical Study of the Okinoyama and Haga Zoned Plutonic Complexes in the Eastern Chugoku Mountains

*Shota KINAI1, Kazuya SHIMOOKA1, Motohiro TSUBOI1 (1. Kwansei Gakuin University)
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Keywords:

Cretaceous Granitoids,Zoned Plutonic,Magma Mixing,SW Japan

 累帯深成岩体は,岩体の周縁部から核部に向かってほぼ同心円状に類似する岩相が配列し,核部に向かうにつれて珪長質になる特徴を持つ(田結庄・野沢, 1985)。その形成過程についてはマグマ固結時の結晶分化やマグマ混合による岩相の変化が議論されているが未解明な点が多い。そこで本研究では,累帯深成岩体の特徴を示すとされる,中国山地東部に分布する沖ノ山岩体および波賀岩体(田結庄, 1985; 1986)について野外調査および鏡下観察を実施し,全岩化学組成分析から求めた記載岩石学的特徴と地球化学的特徴から,この地域の累帯深成岩体の形成過程について考察した。
 帯磁率は,沖ノ山岩体が5.24-18.4×10-3 SI,波賀岩体が0.27-23.6×10-3 SIを示し,どちらの岩体も磁鉄鉱系列に属する(Ishihara et al.,1995)。両岩体においてMafic Magmatic Enclaves(MME)やクロットのような苦鉄質マグマと花崗岩質マグマの混合を示すような野外産状が観察された。また,両岩体ともに,MMEや斑れい岩には針状の燐灰石,複数の花崗岩試料および斑れい岩試料において汚濁帯を持つ斜長石が観察された。観察された斜長石のコアからリムに対してラマン分光分析によるライン分析を行い,得られたピーク波数の差から斜長石のアノーサイト量を算出した(Bersani et al.,2018)。その結果アノーサイト量はコアから汚濁帯にかけて上昇し,リムにかけて減少する傾向を示した。XRF分析で得られた全岩化学組成は,どちらの岩体から得られた試料もSiO2含有量の増加とともに直線性のよい組成トレンドを形成する。主成分元素のハーカー図では,K2Oが正のトレンド,その他の元素(TiO2,Al2O3,Fe2O3,MnO,MgO,CaO,P2O5)が負のトレンドを示した。Total-Fe2O3の含有量は沖ノ山岩体では1.88-9.23 wt%,波賀岩体では1.20-5.88 wt%であり,ハーカー図上で重複する組成範囲を示す。微量成分元素分析では,Rb,Ba,Thで正のトレンドがみられ,V,Cr,Co,Zn,Sr,Yで負のトレンドがみられた。また,1.10-フェナントロリンを用いた吸光光度法(野上, 1996)によりFeOおよびFeO/Fe2O3を求めたところ,沖ノ山岩体ではFeO/Fe2O3=0.42-3.84,波賀岩体ではFeO/Fe2O3=0.04-1.08であった。
 沖ノ山および波賀岩体で見られるHibbard(1995)が示すようなマグマ混合を示す記載岩石学的特徴や,地球化学的特徴は,両累帯深成岩体が,花崗岩質マグマと苦鉄質マグマの混合によって岩相を多様化させたことを示唆する。そして斑れい岩試料の斜長石のアノーサイト量が,増減を繰り返したことから苦鉄質マグマにおいてもマグマ混合が起こったことが示唆される。また,FeO/Fe2O3の値が沖ノ山岩体と比較して波賀岩体の方が低いことから,波賀岩体のマグマが沖ノ山岩体のマグマより酸化的な環境で固結したことを示す。
【参考文献】
Bersani et al.,2018,J. Raman Spectrosc.,49,684-698
Hibbard, M. J. 1995,Prentice-Hall, New Jersey, 587p.
Ishihara et al., 1995, Geol.,18, 217–228
野上健治,1996,火山,41,275-278
田結庄良昭,野沢保,1985,MAGMA,73,1-17
田結庄良昭,1985,岩石鉱物鉱床学会誌,80,337-351
田結庄良昭,1986,岩石鉱物鉱床学会誌,81,32-45