Presentation Information

[T2-P-20]Lithofacies division and correlation of granitic rocks in the Mizuguchi area, Tottori Prefecture, Japan

*Myu ISOYAMA1, Shunsuke ENDO1 (1. Shimane Univ.)
PDF DownloadDownload PDF

Keywords:

Ebi Granite,San'in granitoids

 はじめに
 鳥取県大山西麓,日野川東岸に位置する西伯郡伯耆町付近(以降溝口地域とする)には,石賀ほか(1989)により飛騨帯との関係が示唆された帰属未詳変成岩類や片麻状構造をもつ「江尾花崗岩」が分布している.Kawaguchi et al.(2023)は溝口地域の「江尾花崗岩」からトリアス紀とジュラ紀のジルコンU-Pb年代を報告した.一方,南方の江尾地域で江尾花崗岩として扱われていた岩体からは白亜紀以前の花崗岩類は確認されていない.そのため「江尾花崗岩」は,詳しい研究の後にその名称を含めて再定義が必要と考えられる.また堤ほか(2018)は北方の淀江地域の変花崗岩類からトリアス紀のジルコンU-Pb年代を報告した.トリアス紀およびジュラ紀の年代値は古期および新期飛騨花崗岩類の活動時期と一致する.これらの古い花崗岩類には,後期白亜紀~古第三紀の山陰花崗岩類が貫入し,接触変成作用を与えている.最近,松浦(2025)により溝口地域北部の地質図が改訂され,整理されてきているが,新旧の花崗岩類の分布や帰属については依然として不明な点が残る.本研究では野外調査と薄片観察により溝口地域に分布する花崗岩類の岩相区分を行い,既報の年代データを含めてそれらの帰属を検討した.また,一部の岩相については角閃石の化学分析を行い,岩体区分指標としての可能性や定置深度を検討した.

溝口地域に分布する花崗岩類
(1)片麻状の石英閃緑岩~トーナル岩
本岩相は角閃石の定向配列による顕著な面構造の発達した変花崗岩類で,本地域東部に南北方向に分布する.面構造はNW-SE走向・北傾斜で揃っている.珪長質(砕屑岩起源),苦鉄質の変成岩類を伴う.アルカリ長石は含まない.角閃石Al圧力計の適用条件を満たさないため,圧力推定はできないが,角閃石は淀江地域の変花崗岩類と同様にAlに富むため(2)の岩相とは区別可能である.変成岩的な組織から地殻深部での形成が伺われることと,Kawaguchi et al.(2023)の年代データから,本岩相はトリアス紀の「江尾花崗岩」である可能性が高い.

(2)塊状の石英閃緑岩~トーナル岩~花崗閃緑岩
南部の白水では石英閃緑岩~トーナル岩相が,中央部の谷川では花崗閃緑岩相が広く分布する.いずれの岩相も角閃石に富むが,細粒黒雲母集合体に再結晶している場合が多い.明瞭な片麻状構造はもたないが,石英は波動消光し,またカタクラスティックな変形を被っている.副成分鉱物として褐れん石に富む.角閃石Al圧力計により,定置圧力は183±10 MPa(深度約7.1 km)と推定された.既存の年代データの試料採取位置から,本岩相は前期ジュラ紀の「江尾花崗岩」に対比される.

(3)角閃石黒雲母花崗閃緑岩
本岩相は谷川地区の(2)と(4)の境界に沿って狭長な分布をもつ.(2)の岩相とは非変形であることや自形黒雲母を含むことで,(4)の岩相とは角閃石を含むことで区別される.本岩相は山陰花崗岩類と考えられるが,詳しい帰属は明らかでない.Yokoyama et al.(2016)は谷川の花崗岩類から約89 Maの閃ウラン鉱およびトール石のEPMA年代を報告している.岩石記載が無いため比較はできないが,本岩相に対応するかもしれない.

(4)黒雲母花崗岩
自形の黒雲母を含む狭義の花崗岩で,約65 Maの根雨花崗岩(Iizumi et al., 1984)に対比される.本地域西部に広く分布するほか,地下にも広く伏在していると考えられ「江尾花崗岩」に接触変成作用を与えている.また南部の宮原地区東方の標高370m以上に分布する流紋岩火砕岩にも貫入している.この貫入境界付近には石英が自形を示す斑岩相がみられる.

(5)アプライト~細粒黒雲母花崗岩
鬼住山周辺に多数の岩脈として産する.完晶質であるが,微文象組織や微細な珪長質鉱物の球顆を含むことがある.年代データの報告はないが,松浦(2025)では古第三紀岩脈とされる.

文献
Iizumi et al.(1984) J. Japan. Assoc. Mineral. Petrol. Econ. Geol., 79, 89-100.
石賀ほか(1989)地質雑 95,129-132.
Kawaguchi et al. (2023) Gondwana Res. 117, 56-85.
松浦(2025)第3, 4章 1/5万地質図幅「米子」, 19-31.
堤ほか(2018)日本地質学会講演要旨T3-O-4.
Yokoyama et al.(2016) Mem. Natl. Sci. Mus. (Tokyo), 51, 1-24.