Presentation Information
[T2-P-22]Petrological characteristics of the Ichifusa-yama granodiorite body in Central Kyushu Mountains.
*Shinsei Sakamoto1, Keisuke ESHIMA2 (1. Yamaguchi Univ., 2. Yamaguchi Univ. Sci. Tech. innov.)
Keywords:
Miocene igneous activity,Outer Zone of Southwest Japan,Central Kyushu Mountains,Granite
[はじめに] 西南日本前弧域には中新世に活動した火成岩類が全長800 km, 幅150 kmの帯状に露出している.それらは岩石学的特徴から瀬戸内火山岩類,外帯花崗岩類および周縁帯火成岩類の3つに大別でき,それぞれ,高マグネシウム安山岩 (HMA),カルデラを伴う火山深成複合岩体およびソレアイト質の塩基性貫入岩で特徴づけられる(Shinjoe et al., 2019, Geological Magazine, 158, 47–71).これらの火成岩は定常的な海洋プレートの沈み込みに関連する火成作用では説明できず,海嶺の沈み込みによって引き起こされる異常高温現象が一例として説明されている.また,西南日本前弧域に分布する珪長質岩類の活動年代は15.5–13.5Maに集中しており,西南日本弧回転運度の停止直後であると報告されている (星,地雑, 124, 675–691; Shinjoe et al., 2019).このように,西南日本前弧域の火成岩類から得られる情報は当時の複雑なプレートモーションを考える上で,重要かつ利用価値のあるデータとなる.これまで,中新世のプレートモーションは1980年代から様々なものが提案されおり,古地磁気測定などの地球物理学的手法や地質年代学的手法を経て,進展してきた (例えば, Otofuji et al., 1985, Earth Planet. Sci. Lett., 75, 265–277; Shinjoe et al., 2019).これらのアプローチはプレートモーションの平面的な移動や回転を検討するには非常に優位性の高いが,プレートの深さ方向への移動や関連する火成活動との適用性には問題が残る.そこで,本研究は西南日本前弧域,九州中央山地に産する中新世市房山花崗閃緑岩体を調査対象とし,岩石学的特徴と形成プロセスの検討する.また,花崗閃緑岩と関連する岩相の各種化学組成分析からテクトニクス場を推定し,中新世プレートモーションに対して火成岩類から「制約条件」を提示する.
[地質概説]市房山花崗閃緑岩体(以降,市房山岩体)は熊本県水上村〜宮崎県椎葉村にかかる南北約6 km,東西約8 kmの範囲に露出する楕円形の岩体であり,古第三紀の四万十帯に貫入する.母岩である四万十帯は泥岩,砂岩,岩礫泥岩および泥質変成岩に分類できる.また,境界部付近には花崗閃緑岩と母岩が溶融・混合しており,両者が層状に混じりあう部分溶融帯が確認され,岩体を囲むように帯状に分布する.一方,市房山花崗閃緑岩は岩相変化に乏しい岩石であり,他の苦鉄質岩脈から貫かれるなどの産状は全く確認されない.しかし,母岩である四万十帯の泥岩や泥質片岩の捕獲岩(Xenolith)を大量に含むほか,少量のMME(暗色包有物)と火成包有物を含む特徴を持つ.
[岩石記載]市房山花崗閃緑岩は主成分鉱物として,黒雲母,斜長石,石英および少量のアルカリ長石から構成され,特徴的にシンプレクタイトを伴うザクロ石とクロットを形成する電気石を含む.岩相変化は乏しいが,半自形粒状組織を示すType 1と弱い斑状組織をもつType 2に区分される.いずれも,構成鉱物は同様であるが,前者のほうが岩相内での鉱物粒度変化が大きい特徴を持つ.MMEと同様な形態で市房山花崗閃緑岩に包有される火成包有岩は主成分鉱物として,直方輝石,単斜輝石,斜長石,黒雲母および少量の石英で構成され,グラノブラスティック組織を示すものと石英がポイキリティックに他鉱物を包有する組織を持つものに大別できる.また,前者の組織を持つものには一般に苦鉄質鉱物が密集するリムが存在し,後者には存在しない.
[形成プロセス] 市房山岩体の野外地質学的情報と記載岩石学的情報から以下の形成プロセスが考えられる.まず,市房山岩体は四万十帯(地殻浅所)に貫入し,貫入近傍では母岩を溶融し,層状の部分溶融帯を形成する.また,大量の母岩を捕獲岩として捕獲する.その際,地殻成分を取り込むことにより,電気石が晶出したと考えられる.さらに,市房山花崗閃緑岩には減圧よるザクロ石(分解)のシンプレクタイトが確認されるほか,レスタイト様の火成包有岩を伴う.このことは,市房山花崗閃緑岩マグマが深所で発生し,上昇過程でレスタイト様岩石を取り込んだと考えられる.このように,市房山花崗閃緑岩体はマグマ発生〜上昇・定置にかかる地殻深所〜浅所情報が記録されている可能性がある.
[地質概説]市房山花崗閃緑岩体(以降,市房山岩体)は熊本県水上村〜宮崎県椎葉村にかかる南北約6 km,東西約8 kmの範囲に露出する楕円形の岩体であり,古第三紀の四万十帯に貫入する.母岩である四万十帯は泥岩,砂岩,岩礫泥岩および泥質変成岩に分類できる.また,境界部付近には花崗閃緑岩と母岩が溶融・混合しており,両者が層状に混じりあう部分溶融帯が確認され,岩体を囲むように帯状に分布する.一方,市房山花崗閃緑岩は岩相変化に乏しい岩石であり,他の苦鉄質岩脈から貫かれるなどの産状は全く確認されない.しかし,母岩である四万十帯の泥岩や泥質片岩の捕獲岩(Xenolith)を大量に含むほか,少量のMME(暗色包有物)と火成包有物を含む特徴を持つ.
[岩石記載]市房山花崗閃緑岩は主成分鉱物として,黒雲母,斜長石,石英および少量のアルカリ長石から構成され,特徴的にシンプレクタイトを伴うザクロ石とクロットを形成する電気石を含む.岩相変化は乏しいが,半自形粒状組織を示すType 1と弱い斑状組織をもつType 2に区分される.いずれも,構成鉱物は同様であるが,前者のほうが岩相内での鉱物粒度変化が大きい特徴を持つ.MMEと同様な形態で市房山花崗閃緑岩に包有される火成包有岩は主成分鉱物として,直方輝石,単斜輝石,斜長石,黒雲母および少量の石英で構成され,グラノブラスティック組織を示すものと石英がポイキリティックに他鉱物を包有する組織を持つものに大別できる.また,前者の組織を持つものには一般に苦鉄質鉱物が密集するリムが存在し,後者には存在しない.
[形成プロセス] 市房山岩体の野外地質学的情報と記載岩石学的情報から以下の形成プロセスが考えられる.まず,市房山岩体は四万十帯(地殻浅所)に貫入し,貫入近傍では母岩を溶融し,層状の部分溶融帯を形成する.また,大量の母岩を捕獲岩として捕獲する.その際,地殻成分を取り込むことにより,電気石が晶出したと考えられる.さらに,市房山花崗閃緑岩には減圧よるザクロ石(分解)のシンプレクタイトが確認されるほか,レスタイト様の火成包有岩を伴う.このことは,市房山花崗閃緑岩マグマが深所で発生し,上昇過程でレスタイト様岩石を取り込んだと考えられる.このように,市房山花崗閃緑岩体はマグマ発生〜上昇・定置にかかる地殻深所〜浅所情報が記録されている可能性がある.
