Presentation Information
[T2-P-23]North–South compositional changes and growth processes of the Asakura granodiorite, Northern Kyushu, Japan.
*Yudai HAMANO1, Keisuke ESHIMA1, Raiki YAMADA2, Tatsunori YOKOYAMA3, Yasuhiro OGITA3 (1. Yamaguchi Univ. Sci. Tech. innov., 2. AIST, 3. JAEA)
Keywords:
Cretaceous,Northern Kyushu batholith,Granodiorite,Growth processes,Zircon U–Pb ages
【はじめに】 北部九州には白亜紀花崗岩類(北部九州バソリス)が広く分布しており,岩相や貫入関係などから17~19岩体が認識されている(大和田・亀井, 2010, 日本地方地質誌8, 朝倉書店, 304–311).近年では,ジルコンU–Pb年代測定を用いた地質年代学的な検討が精力的に進められ,白亜紀北部九州バソリス火成活動の時間軸がより明確になった(Miyazaki et al., 2018, Int. Geol. Rev. 61, 649–674;柚原ほか, 2019, 地質雑, 125, 405–420).一方で,同一岩体のジルコンU–Pb年代値が約10 Maも異なる事例があり,マグマ溜まり内の不均質性やマグマ供給イベントの多段階性などの可能性が示唆されている.そのため,各岩体単位でのマグマ溜まりの成長過程や結晶化作用の解析および3次元的な組成変化の検討から単一マグマ溜まりにおける包括的な成熟過程の理解が必要となる.そこで,北部九州バソリスの一つである朝倉花崗閃緑岩体(以降,朝倉岩体)を対象に検討を行った.朝倉岩体は糸島岩体(約800 km²),早良岩体(約450 km²)に次いで3番目の露出面積(約300 km²)を誇り,他の深成岩体と複合していない独立に近い岩体である.そのため隣接する岩体からの物理的・化学的影響を考慮する必要がなく,岩体固有の「結晶化作用」と「3次元組成変化」の検討に最適である.本研究では,東西約4.5 km,南北約9.0 kmの範囲について詳細な地質図を作成し,記載岩石学的特徴と岩石学的特徴およびジルコンU–Pb年代測定を多角的に検討し,岩体の南北縦断組成変化とマグマ溜まりの形態を明らかにする.本研究で展開する固有マグマ溜まりに対する基礎データは,大規模深成岩体の成長過程や大陸地殻形成メカニズムを解明するための突破口となる.
【地質概説】朝倉岩体は福岡県嘉麻市を中心に東西約25 km,南北約12 kmの範囲に露出する岩体である.岩体を構成する朝倉花崗閃緑岩には粗粒な角閃石結晶(最大粒径約3 cm)が観察され,一部の岩相では角閃石と斜長石結晶が定向配列し,流理構造を示す.さらに,岩体中央部と南部では楕円形の苦鉄質包有物(MME)を含み,高標高部域(約450 m)では塊状の細粒黒雲母花崗岩や岩脈状のアプライトなどの優白質岩脈が産する.朝倉花崗閃緑岩は周防変成岩類に貫入しており,貫入境界は北部で南傾斜,南部で北傾斜を示す.南北で岩種が異なり,北部は角閃岩,南部は泥質片岩が分布する.また,標高859.4 mの古処山山頂部には泥質片岩に伴って産する結晶質石灰岩が露出する.花崗閃緑岩は中粒~粗粒で,完晶質半自形粒状組織を示し,主に斜長石,角閃石,黒雲母,石英およびアルカリ長石で構成され,副成分鉱物としてジルコンや二次鉱物の緑泥石と緑簾石を含む.細粒黒雲母花崗岩は主に斜長石,黒雲母,石英,およびアルカリ長石で構成され,完晶質半自形粒状組織や,稀に完晶質斑状組織を示す.北部の貫入母岩である角閃岩は主に角閃石,斜長石および石英で構成され,南部の泥質片岩は主に黒雲母,斜長石,アルカリ長石および石英で構成される.南部の泥質片岩との境界では,片理に対して調和的な境界と非調和的な境界がみられ,非調和的な境界部では急冷周縁相や花崗閃緑岩中の泥質片岩ゼノリスが確認された.
【岩体の組成変化と成長過程】貫入形態やゼノリスの存在から,朝倉花崗閃緑岩は母岩のストーピングを伴いながら貫入したと考えられる.朝倉花崗閃緑岩の肉眼鑑定では,岩石粒度や有色鉱物の含有量比などの特徴が異なり,岩体の周縁部で細粒-苦鉄質,中央部で粗粒-珪長質の傾向を示すことから,花崗閃緑岩の冷却速度が岩体内で異なることが考えられる.モード組成分析では,朝倉岩体の苦鉄質鉱物量比の増減が優白質鉱物に比べて大きく,岩体内組成変化を示す最大の要因であることが示唆された.全岩化学組成分析では,SiO2含有量が62.2–67.4 wt.%の範囲を示し,ハーカー図では単一の組成トレンドを形成する.また,SiO2含有量は岩体周縁部から内部へと増加し,苦鉄質鉱物のモード比は減少する.花崗閃緑岩5試料中のジルコンを分離し,レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析法によってU–Pb年代測定を行った.結果,岩体周縁部の206Pb/238U加重平均年代値は98–101 Maの範囲である.また,岩体中央部のジルコンの206Pb/238U単粒子年代値は95–99 Maであり,2つのコンコーダントな年代集団(95 Maと96–99 Ma)が確認されたため,多段階のマグマ供給があった可能性が考えられる.以上の結果から,本調査範囲の朝倉岩体は,岩体の周縁部および岩体の中央部から有色鉱物の結晶化が進行し,岩体内部へと結晶分化作用が進行したことで成長したと考えられる.
【地質概説】朝倉岩体は福岡県嘉麻市を中心に東西約25 km,南北約12 kmの範囲に露出する岩体である.岩体を構成する朝倉花崗閃緑岩には粗粒な角閃石結晶(最大粒径約3 cm)が観察され,一部の岩相では角閃石と斜長石結晶が定向配列し,流理構造を示す.さらに,岩体中央部と南部では楕円形の苦鉄質包有物(MME)を含み,高標高部域(約450 m)では塊状の細粒黒雲母花崗岩や岩脈状のアプライトなどの優白質岩脈が産する.朝倉花崗閃緑岩は周防変成岩類に貫入しており,貫入境界は北部で南傾斜,南部で北傾斜を示す.南北で岩種が異なり,北部は角閃岩,南部は泥質片岩が分布する.また,標高859.4 mの古処山山頂部には泥質片岩に伴って産する結晶質石灰岩が露出する.花崗閃緑岩は中粒~粗粒で,完晶質半自形粒状組織を示し,主に斜長石,角閃石,黒雲母,石英およびアルカリ長石で構成され,副成分鉱物としてジルコンや二次鉱物の緑泥石と緑簾石を含む.細粒黒雲母花崗岩は主に斜長石,黒雲母,石英,およびアルカリ長石で構成され,完晶質半自形粒状組織や,稀に完晶質斑状組織を示す.北部の貫入母岩である角閃岩は主に角閃石,斜長石および石英で構成され,南部の泥質片岩は主に黒雲母,斜長石,アルカリ長石および石英で構成される.南部の泥質片岩との境界では,片理に対して調和的な境界と非調和的な境界がみられ,非調和的な境界部では急冷周縁相や花崗閃緑岩中の泥質片岩ゼノリスが確認された.
【岩体の組成変化と成長過程】貫入形態やゼノリスの存在から,朝倉花崗閃緑岩は母岩のストーピングを伴いながら貫入したと考えられる.朝倉花崗閃緑岩の肉眼鑑定では,岩石粒度や有色鉱物の含有量比などの特徴が異なり,岩体の周縁部で細粒-苦鉄質,中央部で粗粒-珪長質の傾向を示すことから,花崗閃緑岩の冷却速度が岩体内で異なることが考えられる.モード組成分析では,朝倉岩体の苦鉄質鉱物量比の増減が優白質鉱物に比べて大きく,岩体内組成変化を示す最大の要因であることが示唆された.全岩化学組成分析では,SiO2含有量が62.2–67.4 wt.%の範囲を示し,ハーカー図では単一の組成トレンドを形成する.また,SiO2含有量は岩体周縁部から内部へと増加し,苦鉄質鉱物のモード比は減少する.花崗閃緑岩5試料中のジルコンを分離し,レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析法によってU–Pb年代測定を行った.結果,岩体周縁部の206Pb/238U加重平均年代値は98–101 Maの範囲である.また,岩体中央部のジルコンの206Pb/238U単粒子年代値は95–99 Maであり,2つのコンコーダントな年代集団(95 Maと96–99 Ma)が確認されたため,多段階のマグマ供給があった可能性が考えられる.以上の結果から,本調査範囲の朝倉岩体は,岩体の周縁部および岩体の中央部から有色鉱物の結晶化が進行し,岩体内部へと結晶分化作用が進行したことで成長したと考えられる.
