Presentation Information
[T12-P-3]Morphological characteristics of Pliocene–Pleistocene planktic foraminifera Globoconella inflata lineage from the coastal area of the Japan Sea
*Makoto YAMASAKI1, Kenta TAKAO2, Hiroki MATSUI1, Osamu NISHIKAWA1, Harumasa KANO3, Shiro HASEGAWA3 (1. Akita Univ., 2. Niigata Prefectural Gov., 3. Tohoku Univ. Mus.)
Keywords:
Late Pliocene,Early Pleistocene,Planktic foraminifera,Japan Sea
日本海沿岸に沿って分布する最上部新生界の層序については,石油坑井の開発にともなって古くから検討がおこなわれてきた.特に上部鮮新統から最下部更新統の海成堆積岩類は微化石を豊富に含み,浮遊性有孔虫Globoconella inflata系列種群(Maiya et al., 1976)の多産層準は,日本海側地域の坑井の地質年代を決定する重要なマーカーとして利用されてきた(工藤,1967).
ところでこの時期,南太平洋から北西太平洋,および大西洋にかけては,G. inflataとその祖先種のG. puncticulataが産する(例えば,Lam and Leckie, 2020).Globoconella inflataは,後期鮮新世の温暖環境下で南太平洋に出現し,その後北半球に急激に分布を広げたことで知られ,G. puncticulataの絶滅は,北半球高緯度域の氷河作用との関連も示唆される(Scott et al., 2007).近年,大西洋では,G. puncticulataの産出上限は中-高緯度域にかけて異時性が示され,必ずしも単純な緯度分布(表層水温の南北方向の勾配)には従わないとの指摘がなされた(Brombacher et al., 2021).北西太平洋についても,鮮新世から更新世にかけてG. inflata系列種群が産し,大西洋同様に北半球高緯度の氷河作用に関連した分布の時空間変動が推測されるが,G. inflata praeinflataは,G. inflataに一括されるにとどまり(Lam et al., 2022),環境変動との関連には言及されていない.このように,G. inflata系列種群の層位分布の詳述は,日本海や北西太平洋の環境変動を議論するうえでも重要である.一方,日本海側地域で産するG. inflata系列種群については,その形態的特徴などの基本的情報の不足から,外洋域に産する同じ系列の種群との関係については,未だ十分に理解されていない.また,秋田地域以北の陸上セクションから産するG. inflata系列種群は,Maiya et al. (1976)で記載された模式種と異なり二次石灰化を伴わない個体が産し,G. puncticulataとの形態的な類似も指摘できる.
そこで本研究では,秋田県から北海道南部地域の海成層のうち,最上部鮮新統から下部更新統にかけて産するG. inflata系列種群に加え,北大西洋,北西太平洋およびタスマン海で採集された海洋コア試料中の同系列種群について,5地域の計9層準を対象に走査型電子顕微鏡画像をもとに,Scott et al. (2007)により同種群の形態的差異を捉えるのに適しているとされる口孔を含む外形について,ランドマーク法を用いて形態を比較した.その結果,上部鮮新統-下部更新統日本海地域産のG. inflata s.l.の形態は,口孔の形状と最終室の外形の特徴から,外洋域に産する系列種群G. puncticulataよりも,現生種のG. inflataとの類似性が示唆された.講演では,形態的特徴の時間変化についても考察する.
引用文献
Brombacher et al., 2021, Paleoceanogr. Paleoclimatol., doi: 10.1029/2020PA004205; 工藤,1967, 石技誌, 32, 304–305; Lam and Leckie, 2020, Micropaleontology, 66, 177–268; Lam et al., 2022, Geosciences, doi: 10.3390/geosciences12050190; Maiya et al., 1976, Prog. Micropaleontol., 395–422; Scott et al., 2007, Mar. Micropaleontol., 62, 235–253.
ところでこの時期,南太平洋から北西太平洋,および大西洋にかけては,G. inflataとその祖先種のG. puncticulataが産する(例えば,Lam and Leckie, 2020).Globoconella inflataは,後期鮮新世の温暖環境下で南太平洋に出現し,その後北半球に急激に分布を広げたことで知られ,G. puncticulataの絶滅は,北半球高緯度域の氷河作用との関連も示唆される(Scott et al., 2007).近年,大西洋では,G. puncticulataの産出上限は中-高緯度域にかけて異時性が示され,必ずしも単純な緯度分布(表層水温の南北方向の勾配)には従わないとの指摘がなされた(Brombacher et al., 2021).北西太平洋についても,鮮新世から更新世にかけてG. inflata系列種群が産し,大西洋同様に北半球高緯度の氷河作用に関連した分布の時空間変動が推測されるが,G. inflata praeinflataは,G. inflataに一括されるにとどまり(Lam et al., 2022),環境変動との関連には言及されていない.このように,G. inflata系列種群の層位分布の詳述は,日本海や北西太平洋の環境変動を議論するうえでも重要である.一方,日本海側地域で産するG. inflata系列種群については,その形態的特徴などの基本的情報の不足から,外洋域に産する同じ系列の種群との関係については,未だ十分に理解されていない.また,秋田地域以北の陸上セクションから産するG. inflata系列種群は,Maiya et al. (1976)で記載された模式種と異なり二次石灰化を伴わない個体が産し,G. puncticulataとの形態的な類似も指摘できる.
そこで本研究では,秋田県から北海道南部地域の海成層のうち,最上部鮮新統から下部更新統にかけて産するG. inflata系列種群に加え,北大西洋,北西太平洋およびタスマン海で採集された海洋コア試料中の同系列種群について,5地域の計9層準を対象に走査型電子顕微鏡画像をもとに,Scott et al. (2007)により同種群の形態的差異を捉えるのに適しているとされる口孔を含む外形について,ランドマーク法を用いて形態を比較した.その結果,上部鮮新統-下部更新統日本海地域産のG. inflata s.l.の形態は,口孔の形状と最終室の外形の特徴から,外洋域に産する系列種群G. puncticulataよりも,現生種のG. inflataとの類似性が示唆された.講演では,形態的特徴の時間変化についても考察する.
引用文献
Brombacher et al., 2021, Paleoceanogr. Paleoclimatol., doi: 10.1029/2020PA004205; 工藤,1967, 石技誌, 32, 304–305; Lam and Leckie, 2020, Micropaleontology, 66, 177–268; Lam et al., 2022, Geosciences, doi: 10.3390/geosciences12050190; Maiya et al., 1976, Prog. Micropaleontol., 395–422; Scott et al., 2007, Mar. Micropaleontol., 62, 235–253.
