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[G-P-1]Zircon geochronology and geochemistry of indialite-staurolite-bearing hornfelses in the Unazuki area, Toyama Prefecture

*Mami Takehara1, Kenji Horie1, Yoshikuni Hiroi2, Tatsuro Adachi3, Tomokazu Hokada1 (1. National Institute of Polar Research, 2. Chiba University, 3. Kyushu University)
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 宇奈月地域は飛騨帯の東縁部に位置し、含藍晶石‐十字石結晶片岩に代表される時計回りのP-Tパスをもつ中圧型変成作用(525–700 ℃, 0.5–0.6 GPa)を経験した地域である(Hiroi, 1983)。本地域ではパーアルミナスな泥質片岩及び石炭紀の不純石灰岩(廣井、1978)と、バイモーダルな化学組成の火山岩が産することから、宇奈月変成岩類の原岩は後期古生代に大陸縁辺上に堆積した陸棚堆積物由来である可能性が示唆される(Isozaki, 1997等)。このように広域地質学的な視点から、本地域は日本海拡大以前の日本列島と韓半島を含むユーラシア大陸東縁部との位置関係やテクトニクスを考える上で重要である。本地域の中圧型変成作用の時期は、石英長石質片岩(いわゆるレプタイト)の原岩である流紋岩と、石英長石質片岩を捕獲岩として含む花崗岩の2つの火成作用で制約される(Horie et al., 2018)。Horie et al. (2018)では、石英長石質片岩のジルコン年代が258±2.3 Maを示すのに対し、石英長石質片岩片を取り込んだ花崗岩のジルコン年代が253±1.9 Maであった。この結果は、中圧変成作用が約258Ma以降に生じ、約253Maには主要な変成作用が終了したことを示す。本地域北部の中谷上流では、マイロナイト化した紅色花崗岩中に残晶状の十字石、藍晶石、ザクロ石を含み、インド石と紅柱石に富む複変成泥質ホルンフェルスが捕獲岩として存在している(Hiroi, 2022)。インド石は菫青石の高温型の多形であり、一般にホルンフェルス中でインド石として成長した場合も降温過程で菫青石に転移する(例えばKitamura & Yamada, 1987)。すなわち中谷の深成岩中の捕獲岩にインド石が産出することは例外的であり、中圧型の広域変成作用と低圧高温(約700 ℃, 0.3 GPa)での熱変成作用が順次進行し、その後急冷したことを示唆している。したがって原岩形成から中圧型広域変成作用、花崗岩による接触変成作用、冷却が極めて短期間のうちに進行した可能性がある。本研究では複変成ホルンフェルス試料に着目し、ジルコン年代ならびに微量元素組成分析から宇奈月変成岩の熱史について検証した。ホルンフェルス試料中のジルコン粒子は、凹凸のある外形をしており、コアの周囲に幅10μm以下の石英や斜長石、黒雲母を包有する多孔質なリムが観察された。同様の構造を示すジルコンはHay & Dempster (2009)等によって「outgrowth rim」として報告されており、低温環境において形成したとされる。高感度高分解能イオンマイクロプローブ(SHRIMP-IIe、国立極地研究所設置)を用いて、ホルンフェルス試料のジルコンU-Pb年代測定を行ったところ、コアからは350-290Ma程度の年代が得られたのに対して、リムからは加重平均値254.8±3.5 Ma(N:10, MSWD: 1.1)が得られた。コアの年代分布は宇奈月地域イシワ谷から採取された泥質片岩中のジルコンの年代分布と調和的である。リムから得られた年代はHorie et al.(2018)の報告した中圧変成作用の期間に含まれる。さらに同試料のジルコンのコア及びリムについて微量元素存在度分析を行った結果、両者に異なる傾向が見られた。特にリムの希土類元素組成が重希土類元素に富み、Ce及びEu異常をほぼ示さないことから、リム成長時にザクロ石及び斜長石の成長はなかったと考えられる。また、リムのLi、K、Fe、Mn等の存在度がコアと比較すると高いことから、リム成長時に黒雲母や十字石、ザクロ石の分解の影響を受けた可能性が示唆される。本試料中にインド石が保存されていることから、ジルコンのリムの成長がホルンフェルス化と関連すると推定される。 引用文献:Hiroi (1983) Contributions to Mineralogy and Petrology, 82, 334-350; 廣井 (1978) 地質学雑誌, 84, 521-530; Isozaki (1997) Island Arc, 6, 2-24; Horie et al. (2018) Chemical Geology, 484, 148-167; Hiroi (2022)日本地質学会第129年学術大会(T1-O-25); Kitamura & Yamada (1987) Contributions to Mineralogy and Petrology, 97, 1-6. Hay & Dempster (2009) Journal of Petrology, 50, 571-589.