Presentation Information
[G-P-2]Petrography and Genetic Interpretation of Pyroxenite Blocks in Serpentinite Mélange of the Kurosegawa Belt: A Case Study from Central Kochi, Southwest Japan
*Kazuki Tsuchida1, Hikaru Sawada2 (1. Yamaguchi University, 2. University of Toyama)
Keywords:
Monomineralic Rock,Pyroxenite,Kurosegawa Belt,Ultramafic Rock
日本列島各地に分布する黒瀬川帯においては,蛇紋岩メランジュ中に単一鉱物岩(monomineralic rock)が包含されることが報告されており,特に輝岩(pyroxenite)の存在が知られている(Yokoyama,1987).黒瀬川帯は九州中部から関東山地まで広く分布し,四国地方では愛媛県南部から高知県西部にかけて分布することが知られている(Ichikawa et al.,1956ほか).
本発表では,高知県南国市岡豊および高知市鏡去坂において採取された輝岩について,産出状況と岩石記載を行い,これらの岩石の成因について考察する.
1.高知県南国市岡豊
本地域では,標高約70 mの山腹の舗装路沿い(N33°35'41.39",E133°37'15.01")に約300 mにわたり蛇紋岩が露出する.輝岩は,この蛇紋岩メランジュ中にブロックとして産出し,最大50〜70 cm大の塊状で確認された.蛇紋岩自体は広範囲に剪断変形を受けているが,一部には比較的変形の少ない領域も認められる.輝岩ブロックには風化の程度により,淡黄緑色のもの(強風化)と淡灰色のもの(比較的新鮮)が見られた.
2.高知県高知市鏡去坂
この地域では,舗装道路(N33°35'44.99",E133°27'35.07")から東側にある沢に入ることができる.沢は東西へ流れており,ここでは輝岩の転石が認められる.転石のサイズは10 cm程度のものから1〜1.5 mに達する大型のものまで多様である.蛇紋岩の存在は露頭として確認できず,調査時には蛇紋岩の転石も確認されなかった.さらに沢を東へ登り,標高268 m地点に至ると,メタガブロの露頭が確認された.輝岩はおおまかに細粒・中粒・粗粒の3種のバリエーションがあり,粒度の粗いものほど風化が進行していた.各粒度における主要構成鉱物の差異についても併せて述べる.
本発表では,上記2地点で採取された輝岩試料について,岩石薄片による顕微鏡観察の結果を示すとともに,産状記載をあわせてその形成過程について考察する.これらの単一鉱物岩は,島弧下部地殻あるいは上部マントルを起源とする火成岩の断片である可能性があり,一部のオフィオライト岩体を除けば,下部地殻〜上部マントル起源の岩石の露出例は限られている.そのため,本研究は,沈み込み帯深部におけるメルトや流体との相互作用を解明するための貴重な手がかりを提供し,黒瀬川帯蛇紋岩メランジュの形成過程を理解する上でも重要な意義を持つ.
参考文献
・市川浩一郎・石井健一・中川衷三・須槍和彦・山下昇(1956):黒瀬川構造帯.地質学雑誌,62,82–103.
・Yokoyama,K.(1987):Ultramafic rocks in the Kurosegawa tectonic zone,Southwest Japan.J.
Japan Assoc.Mineral.Petrol.Econ.Geol.,82,
319–335.
本発表では,高知県南国市岡豊および高知市鏡去坂において採取された輝岩について,産出状況と岩石記載を行い,これらの岩石の成因について考察する.
1.高知県南国市岡豊
本地域では,標高約70 mの山腹の舗装路沿い(N33°35'41.39",E133°37'15.01")に約300 mにわたり蛇紋岩が露出する.輝岩は,この蛇紋岩メランジュ中にブロックとして産出し,最大50〜70 cm大の塊状で確認された.蛇紋岩自体は広範囲に剪断変形を受けているが,一部には比較的変形の少ない領域も認められる.輝岩ブロックには風化の程度により,淡黄緑色のもの(強風化)と淡灰色のもの(比較的新鮮)が見られた.
2.高知県高知市鏡去坂
この地域では,舗装道路(N33°35'44.99",E133°27'35.07")から東側にある沢に入ることができる.沢は東西へ流れており,ここでは輝岩の転石が認められる.転石のサイズは10 cm程度のものから1〜1.5 mに達する大型のものまで多様である.蛇紋岩の存在は露頭として確認できず,調査時には蛇紋岩の転石も確認されなかった.さらに沢を東へ登り,標高268 m地点に至ると,メタガブロの露頭が確認された.輝岩はおおまかに細粒・中粒・粗粒の3種のバリエーションがあり,粒度の粗いものほど風化が進行していた.各粒度における主要構成鉱物の差異についても併せて述べる.
本発表では,上記2地点で採取された輝岩試料について,岩石薄片による顕微鏡観察の結果を示すとともに,産状記載をあわせてその形成過程について考察する.これらの単一鉱物岩は,島弧下部地殻あるいは上部マントルを起源とする火成岩の断片である可能性があり,一部のオフィオライト岩体を除けば,下部地殻〜上部マントル起源の岩石の露出例は限られている.そのため,本研究は,沈み込み帯深部におけるメルトや流体との相互作用を解明するための貴重な手がかりを提供し,黒瀬川帯蛇紋岩メランジュの形成過程を理解する上でも重要な意義を持つ.
参考文献
・市川浩一郎・石井健一・中川衷三・須槍和彦・山下昇(1956):黒瀬川構造帯.地質学雑誌,62,82–103.
・Yokoyama,K.(1987):Ultramafic rocks in the Kurosegawa tectonic zone,Southwest Japan.J.
Japan Assoc.Mineral.Petrol.Econ.Geol.,82,
319–335.
