Presentation Information
[G-P-5]Automatic analysis of heavy minerals in sand by SEM-EDX
*Ritsuko Sugita1 (1. National Research Institute of Police Science)
Keywords:
Fornesic geology,SEM-EDX,Classification of heavy minerals,Automatic analysis
事件や事故の証拠資料の鑑定では,客観性や迅速性が求められており,土や砂もその例外ではない.また,試料量が少なく,破壊検査に用いることのできる量は限られてしまうこともしばしばある.そのため,顕微鏡による検査が重要となるが,検査者の熟練度による同定精度の違いや客観性の担保が問題となる可能性がある.さらに,不透明鉱物については顕微鏡よる検査では鉱物種の同定に至らないことも多いため,元素分析やX線回折が有効である.しかし,通常の粉末XRDは破壊検査であるため,鉱物ごとの大きさや形態的な特徴の把握は困難であり,含有量が少ないと検出されない可能性もある.
そこで,客観性を担保し,迅速な分析法としてエネルギー分散型X線分析装置付き走査型電子顕微鏡(SEM-EDX)による自動分析が有効であると考えられる.昨年までに,海岸砂から分離した重鉱物のSEM-EDXによる主成分元素分析が,異同識別や地域推定への活用が可能であるとの結果を得ている(杉田,2024).しかしながら,一個ずつ手作業で測るのは時間と労力が必要である.自動分析では多数の粒子を比較的短時間で測定し分類することが可能であるため,実務での利用が期待される.軽鉱物については,Kikkawa et al. (2019)によって法地質学的利用の有効性が示されているが,重鉱物については検討されていない.鉄酸化鉱物や燐灰石などは包有物として鉱物中に認められることも多く,このような微細な鉱物や少量しか含有されない鉱物の見落とし防止にも効果が期待できる.
実験には,0.2~1 mmの粒径の砂をポリタングステン酸ナトリウムによる重液分離で得られた重鉱物画分で,エポキシ樹脂でスライドガラスに固定し研磨し,炭素蒸着したものを使用した.分析はエネルギー分散型X線検出装置(オックスフォードインストゥルメンツ ULTIM MAX)を装着した電解放出型走査電子顕微鏡(日立ハイテク SU8230)を使用し,自動分析はULTIM MAXの解析ソフトウェアAZtecFeatureを用いた.
使用した試料は偏光顕微鏡による観察で,カンラン石,単斜輝石,直方輝石,角閃石,ザクロ石,不透明鉱物などが含まれていることが明らかとなっている.解析にはあらかじめ鉱物を識別するために元素組成をスキームとして設定する必要があるため,既存の文献(Deer et al., 1992 ほか)を基に機器の特性を考慮して設定を行った.また,薄片上の傷や凹凸などによる影響を避け,かつ包有物も検出できるように,形態的な特徴検出のフィルターを設定した.
その結果,約2000個の粒子を2時間程度で分析することができ,使用した試料では鉱物の分類がおおむね可能であった.しかし,包有物まで分析するためには小さい粒子を認識させる必要があり,そのために大きい粒子でもクラックが入っていたり内部の輝度にムラがあるものでは粒子の検出の際にそれぞれの小さい領域が一個の鉱物として認識されてしまうこととなった.そのため,一個の鉱物が複数の粒子から構成されていることになり,実際に確認される鉱物の数と分析点数は大きく乖離していた.一方で,鉱物ごとの総面積を算出することが可能であるため,分析領域に含まれている鉱物の量を試料間で比較することは可能である.
今回の粒子検出およびスキームの設定が,あらゆる試料に適用できるとは考えられない.しかし,ある特定の試料に対して有効な設定を行い,その設定で別の試料を分析した場合にクラス分けが可能か否か自体を識別の指標として類似の試料を選別するために活用することができると考えられる.また,包有物を無視して大粒径の鉱物のみをターゲットとした粒子検出の設定を行い,類似した傾向の試料に対して包有物に着目した粒子検出による再分析でさらに識別を行うという利用法も考えられる.
引用文献
Deer et al., 1992, An Introduction to the Rock – Forming Minerals. Longman Scientific & Technical.
Kikkawa et al., 2019, Forensic Sc. Int., 305, 109947.
杉田律子, 2024, 日本地質学会第131年学術大会講演要旨, G6-O-7.
そこで,客観性を担保し,迅速な分析法としてエネルギー分散型X線分析装置付き走査型電子顕微鏡(SEM-EDX)による自動分析が有効であると考えられる.昨年までに,海岸砂から分離した重鉱物のSEM-EDXによる主成分元素分析が,異同識別や地域推定への活用が可能であるとの結果を得ている(杉田,2024).しかしながら,一個ずつ手作業で測るのは時間と労力が必要である.自動分析では多数の粒子を比較的短時間で測定し分類することが可能であるため,実務での利用が期待される.軽鉱物については,Kikkawa et al. (2019)によって法地質学的利用の有効性が示されているが,重鉱物については検討されていない.鉄酸化鉱物や燐灰石などは包有物として鉱物中に認められることも多く,このような微細な鉱物や少量しか含有されない鉱物の見落とし防止にも効果が期待できる.
実験には,0.2~1 mmの粒径の砂をポリタングステン酸ナトリウムによる重液分離で得られた重鉱物画分で,エポキシ樹脂でスライドガラスに固定し研磨し,炭素蒸着したものを使用した.分析はエネルギー分散型X線検出装置(オックスフォードインストゥルメンツ ULTIM MAX)を装着した電解放出型走査電子顕微鏡(日立ハイテク SU8230)を使用し,自動分析はULTIM MAXの解析ソフトウェアAZtecFeatureを用いた.
使用した試料は偏光顕微鏡による観察で,カンラン石,単斜輝石,直方輝石,角閃石,ザクロ石,不透明鉱物などが含まれていることが明らかとなっている.解析にはあらかじめ鉱物を識別するために元素組成をスキームとして設定する必要があるため,既存の文献(Deer et al., 1992 ほか)を基に機器の特性を考慮して設定を行った.また,薄片上の傷や凹凸などによる影響を避け,かつ包有物も検出できるように,形態的な特徴検出のフィルターを設定した.
その結果,約2000個の粒子を2時間程度で分析することができ,使用した試料では鉱物の分類がおおむね可能であった.しかし,包有物まで分析するためには小さい粒子を認識させる必要があり,そのために大きい粒子でもクラックが入っていたり内部の輝度にムラがあるものでは粒子の検出の際にそれぞれの小さい領域が一個の鉱物として認識されてしまうこととなった.そのため,一個の鉱物が複数の粒子から構成されていることになり,実際に確認される鉱物の数と分析点数は大きく乖離していた.一方で,鉱物ごとの総面積を算出することが可能であるため,分析領域に含まれている鉱物の量を試料間で比較することは可能である.
今回の粒子検出およびスキームの設定が,あらゆる試料に適用できるとは考えられない.しかし,ある特定の試料に対して有効な設定を行い,その設定で別の試料を分析した場合にクラス分けが可能か否か自体を識別の指標として類似の試料を選別するために活用することができると考えられる.また,包有物を無視して大粒径の鉱物のみをターゲットとした粒子検出の設定を行い,類似した傾向の試料に対して包有物に着目した粒子検出による再分析でさらに識別を行うという利用法も考えられる.
引用文献
Deer et al., 1992, An Introduction to the Rock – Forming Minerals. Longman Scientific & Technical.
Kikkawa et al., 2019, Forensic Sc. Int., 305, 109947.
杉田律子, 2024, 日本地質学会第131年学術大会講演要旨, G6-O-7.
