Presentation Information
[G-P-8]Surface collupse at the nothern coast of Lake Shikotsu, associated with strong ground motions by the 2018 Hokkaido Eastern Iburi Earthquake
*Wataru HIROSE1 (1. Hokkaido Research Organization)
Keywords:
2018 Hokkaido Eastern Iburi Earthquake,Stratified Tephra Slide
2018年9月6日午前3時6分に発生した平成30年(2018年)北海道胆振東部地震では,厚真町周辺で発生したテフラ層すべりで甚大な被害が発生した(廣瀬ほか,2018など).一方,千歳市や札幌~北広島市内など,震源である胆振東部地域から約60km以上離れた地域でも,小規模ながら土層すべりが発生していた.厚真町,札幌市周辺に注目が集まっていたこともあり,支笏湖周辺の斜面崩壊については情報が極めて少ない.本研究では,支笏湖北岸周辺で発生した土層すべりについて,崩壊前後の空中写真および衛星写真,現地調査に基づき分布等の再検討を行った.
支笏湖周辺の土層すべりに関する資料として,西本・伊東(2018),伊東・西本(2020)および石川・川村(2022)などがある.伊東・西本(2020)によれば,土層すべりは,9月5日未明の降雨と,9月6日3時7分の北海道胆振東部地震に関連して発生した.9月5日の土層すべりは,支笏湖北岸の国道453号山側の斜面(千歳市幌美内西部)で4時30分に確認された.傾斜約50度の急斜面に堆積していた,水分を多く含む軽石混じり火山灰からなる移動体が,国道山側から道路を横断し支笏湖に達した.土層すべりの規模は斜面長120m×幅20mにおよぶ.北西約5km付近にある道路気象テレメータ(北奥漁)では,9月3日~5日にかけて連続雨量263mm,時間最大雨量51mm/h(9/5,02:00)が記録されている.
9月6日の土層すべりは、3時7分の地震発生直後に支笏湖北岸の国道453号山側の斜面(千歳市幌美内東部)で確認された.傾斜約50度の急斜面に堆積していた直径20~30cm程度の軽石混じり火山灰を移動体とする土層すべりで,国道453号を横断して反対側の法面に到達した.土層すべりの規模は斜面長60m×幅40mである.近傍の震度観測点(千歳市支笏湖温泉、東南東へ約7km)で震度5強が観測されている.
9月5日~6日に発生した土層すべりは上記2か所以外に知られていない.しかし降雨の強度および震動の強さからは他の箇所でも発生した可能性は否定できないため,空撮資料および衛星写真を用いて分布を検討した.
使用した写真は,土層すべり発生前はSPOT6(2018年9月2日撮影;地上分解能パンクロマティック1.5m),発生後は株式会社パスコ撮影の固定翼斜め写真(2018年9月7日撮影)およびGoogle Earthの画像(2018年9月11日),林野庁撮影のデジタル空中写真(C19-14 第6白老:2019年7月9日撮影;地上分解能30cm)である.
9月2日以降9月7~11日にかけて発生した可能性のある土層すべりは,支笏湖の北西で少なくとも3地点確認された.斜面長40~80m,幅10~30m程度の裸地として認められ,斜面下方に倒木が折り重なるように分布していること,裸地内に植生がほとんど認められず,ガリーが形成されているように見える.すべり面は支笏湖北岸のものよりやや色が明るく,当該地域に分布する新第三系漁川層の変質火山岩の風化部が崩落したものである可能性がある.
支笏湖北岸の土層すべり発生個所では,黄白色で直径数cm~30cm程度の粗粒な軽石が認められ,輝石斑晶を多数含むことから恵庭-a降下軽石と判断される.土層すべりは,粘土~細砂サイズの基質を有する軽石で覆われる斜面の遷急線直下から発生している.軽石はやや円摩され,降下堆積後にやや再移動した可能性が高い.ただし冷却による破断面とみられるやや鋭角な部分も残っているため,移動距離はそれほど長くはないとみなされる.また,観察した箇所では再堆積軽石層の厚さは十数~数十cm程度と厚くはなく,その下方には基盤岩である新第三系が部分的に露出している.透水性に乏しい基盤岩を覆う,軽石堆積物が降雨により水分に飽和することで崩壊に至ったと考えられるが,斜面の微地形による集水地形の効果など,引き続き検討が必要である.
【引用文献】
廣瀬 亘・川上源太郎・加瀬善洋・石丸 聡・輿水健一・小安浩理・高橋 良(2018)平成30年北海道胆振東部地震に伴う厚真町およびその周辺地域での斜面崩壊調査(速報).北海道地質研究所報告,90,33-44.
石川達也・川村志麻(2022)気候変動脆弱地域の複合地盤災害リスクの評価に関する取り組み.地盤工学会誌,70(3),30-34.
伊東佳彦・西本 聡(2020)5.5 支笏湖の土層すべりと岩盤崩壊.地震による地すべり災害-2018年北海道胆振東部地震-.「地震による地すべり災害」刊行委員会,189-192.
西本 聡・伊東佳彦(2018)国道453号の斜面崩壊.平成30年北海道胆振東部地震による地盤災害調査団速報会,公益社団法人地盤工学会・公益社団法人土木学会.2018年10月2日.
支笏湖周辺の土層すべりに関する資料として,西本・伊東(2018),伊東・西本(2020)および石川・川村(2022)などがある.伊東・西本(2020)によれば,土層すべりは,9月5日未明の降雨と,9月6日3時7分の北海道胆振東部地震に関連して発生した.9月5日の土層すべりは,支笏湖北岸の国道453号山側の斜面(千歳市幌美内西部)で4時30分に確認された.傾斜約50度の急斜面に堆積していた,水分を多く含む軽石混じり火山灰からなる移動体が,国道山側から道路を横断し支笏湖に達した.土層すべりの規模は斜面長120m×幅20mにおよぶ.北西約5km付近にある道路気象テレメータ(北奥漁)では,9月3日~5日にかけて連続雨量263mm,時間最大雨量51mm/h(9/5,02:00)が記録されている.
9月6日の土層すべりは、3時7分の地震発生直後に支笏湖北岸の国道453号山側の斜面(千歳市幌美内東部)で確認された.傾斜約50度の急斜面に堆積していた直径20~30cm程度の軽石混じり火山灰を移動体とする土層すべりで,国道453号を横断して反対側の法面に到達した.土層すべりの規模は斜面長60m×幅40mである.近傍の震度観測点(千歳市支笏湖温泉、東南東へ約7km)で震度5強が観測されている.
9月5日~6日に発生した土層すべりは上記2か所以外に知られていない.しかし降雨の強度および震動の強さからは他の箇所でも発生した可能性は否定できないため,空撮資料および衛星写真を用いて分布を検討した.
使用した写真は,土層すべり発生前はSPOT6(2018年9月2日撮影;地上分解能パンクロマティック1.5m),発生後は株式会社パスコ撮影の固定翼斜め写真(2018年9月7日撮影)およびGoogle Earthの画像(2018年9月11日),林野庁撮影のデジタル空中写真(C19-14 第6白老:2019年7月9日撮影;地上分解能30cm)である.
9月2日以降9月7~11日にかけて発生した可能性のある土層すべりは,支笏湖の北西で少なくとも3地点確認された.斜面長40~80m,幅10~30m程度の裸地として認められ,斜面下方に倒木が折り重なるように分布していること,裸地内に植生がほとんど認められず,ガリーが形成されているように見える.すべり面は支笏湖北岸のものよりやや色が明るく,当該地域に分布する新第三系漁川層の変質火山岩の風化部が崩落したものである可能性がある.
支笏湖北岸の土層すべり発生個所では,黄白色で直径数cm~30cm程度の粗粒な軽石が認められ,輝石斑晶を多数含むことから恵庭-a降下軽石と判断される.土層すべりは,粘土~細砂サイズの基質を有する軽石で覆われる斜面の遷急線直下から発生している.軽石はやや円摩され,降下堆積後にやや再移動した可能性が高い.ただし冷却による破断面とみられるやや鋭角な部分も残っているため,移動距離はそれほど長くはないとみなされる.また,観察した箇所では再堆積軽石層の厚さは十数~数十cm程度と厚くはなく,その下方には基盤岩である新第三系が部分的に露出している.透水性に乏しい基盤岩を覆う,軽石堆積物が降雨により水分に飽和することで崩壊に至ったと考えられるが,斜面の微地形による集水地形の効果など,引き続き検討が必要である.
【引用文献】
廣瀬 亘・川上源太郎・加瀬善洋・石丸 聡・輿水健一・小安浩理・高橋 良(2018)平成30年北海道胆振東部地震に伴う厚真町およびその周辺地域での斜面崩壊調査(速報).北海道地質研究所報告,90,33-44.
石川達也・川村志麻(2022)気候変動脆弱地域の複合地盤災害リスクの評価に関する取り組み.地盤工学会誌,70(3),30-34.
伊東佳彦・西本 聡(2020)5.5 支笏湖の土層すべりと岩盤崩壊.地震による地すべり災害-2018年北海道胆振東部地震-.「地震による地すべり災害」刊行委員会,189-192.
西本 聡・伊東佳彦(2018)国道453号の斜面崩壊.平成30年北海道胆振東部地震による地盤災害調査団速報会,公益社団法人地盤工学会・公益社団法人土木学会.2018年10月2日.
