Presentation Information
[G-P-9]Sedimentary environments about 50,000 to 43,000 years ago at the Tategahana Excavation Site of Lake Nojiri-ko, northern Nagano Prefecture, Japan
*Yoshihiro TAKESHITA1, Kuniaki HANAOKA, Chuljae CHO, Takayuki KAWABE5, Chizuko NAKAGAWA3, Masahiro KOBAYASHI, Kazuhiro KOBAYASHI4, Megumi SEKI2, Geological Research Group for Nojiri-ko Excavation (1. Shinshu Univ., 2. Nojiriko Naumann Elephant Museum, 3. Kyoto Univ., 4. Ueda High School, 5. Yamagata Univ.)
Keywords:
Nojiri-ko,Tategahana Excavation Site,Sedimentary environments,Stratigraphy,Living floor
野尻湖地質グループは,1976年の発足以来一貫して野尻湖西岸の立が鼻遺跡とその周辺に分布する上部更新統~完新統を対象に,それらの高精度な層序と形成過程の解明を目指して調査・研究を進めてきた.立が鼻遺跡の北東部はⅠ区と呼ばれ、その周辺は,“月と星”と呼ばれるナウマンゾウの切歯とヤベオオツノジカの掌状角をはじめ,ナウマンゾウの頭骨や肋骨群、骨製クリーヴァーや骨の接合資料といった立が鼻遺跡を特徴づける化石や遺物が発見された地域である(Kondo et al., 2018).本発表では,2014年~2025年に実施された第20次~24次野尻湖発掘,およびその間の地質調査で明らかとなった立が鼻遺跡のⅠ区周辺に分布する野尻湖層立が鼻砂部層のT2,T4,T5ユニット(野尻湖地質グループ,2004)の単層単位の区分と堆積環境に焦点を当て述べる.
ナウマンゾウ化石が多産するⅠ区周辺の立が鼻砂部層T2ユニット(約4.9~4.4万年前)は,砂礫層と砂層からなるs0,s1,s2,s3,s4の5つのサブユニットに細区分できる(野尻湖地質グループ,2025).本ユニットは南北方向に層相変化が激しく,湖水面の上昇と低下の繰り返しによって形成された可能性が示唆されている(野尻湖地質グループ・野尻湖火山灰グループ,2016).北部(湖岸寄り)のT2ユニットs1とs4には大量の中礫~巨礫(多くが亜角礫)が含まれており,現在の湖岸の堆積物とよく似るため,現在とよく似た環境であったと考えらえる.当時ヒトがいたならば,水位が下がって湖底面が露出した期間は,活動の場として利用された可能性があり,s1とs4,特にそれらの上面(層理面)は,立が鼻遺跡の立地とその変化を探る上で重要な層準(生活面)である.また,T2ユニットs1とs4に含まれる礫は,大きさ,形状,礫種構成などから見て湖底もしくは湖岸の侵食にともない基盤の泥流堆積物から洗い出されたものであることが明らかとなっている(中村・竹下,2017).礫を供給した要因は,気候変動や季節変化,短期の気象変化,あるいは地殻変動などによる水位変化も念頭において解明を進める必要がある.
立が鼻砂部層T4ユニット(約4.4~4.3万年前;野尻湖地質グループ・火山灰グループ,2016)は,スコリア層と砂礫層,火山灰層,砂層からなり,4つのサブユニット(下位より順にb,c,d下,d上)に区分することができる(野尻湖地質グループ,2025).狩猟・解体場の状況証拠ではないかとして注目された旧層序区分の中部野尻湖層Ⅰの化石や遺物の産出層(野尻湖人類考古グループ,1990)を現在の地質層序に当てはめると,その多くがT4ユニットの上部(T4ユニットd下・上)に含まれることがわかってきた.T4ユニットd上は北東-南西方向に伸びる3~4列の湖岸州を構成し,1シーズンにも満たない短期間に形成されたと考えられ,その上面の存続期間もごく短期である.湖岸州から10m足らず陸側(北側)のT4ユニットd上の上面(生活面)には,スコリア層(T5ユニットa)が埋める大型偶蹄類の足跡も見つかっており(野尻湖生痕グループ・足跡化石班,2016),この面からは短期間のヒトを含む動物の歩様が復元できる可能性がある.
立が鼻砂部層T5ユニット(約4.3万年前)は,スコリア層と砂礫層,火山灰層,砂層からなり,4つのサブユニット(下位より順にa,b,c,d)に細区分することができる.本ユニットの基底部付近からはヤベオオツノジカ上腕骨の接合資料(野尻湖人類考古グループ,2018)が発見されたほか,本ユニットに含まれる大礫・巨礫がT5ユニットbやT5ユニットaの上面を荷重か加圧で変形させている様子が確認された(野尻湖地質グループ・野尻湖火山灰グループ,2016).
引用文献
Kondo et al. (2018) Quaternary International, 471, 385-395.
中村文洋・竹下欣宏(2017)野尻湖ナウマンゾウ博物館研究報告,25,1-17.
野尻湖地質グループ(2004)野尻湖ナウマンゾウ博物館研究報告,12,1-13.
野尻湖地質グループ(2025)野尻湖ナウマンゾウ博物館研究報告,33,13-32.
野尻湖地質グループ・野尻湖火山灰グループ(2016)野尻湖ナウマンゾウ博物館研究報告,24,15-32.
野尻湖人類考古グループ(1990)地団研専報,37,145-160.
野尻湖人類考古グループ(2018)野尻湖ナウマンゾウ博物館研究報告,26,21-38.
野尻湖生痕グループ・足跡化石班(2016)野尻湖ナウマンゾウ博物館研究報告,24,107-113.
ナウマンゾウ化石が多産するⅠ区周辺の立が鼻砂部層T2ユニット(約4.9~4.4万年前)は,砂礫層と砂層からなるs0,s1,s2,s3,s4の5つのサブユニットに細区分できる(野尻湖地質グループ,2025).本ユニットは南北方向に層相変化が激しく,湖水面の上昇と低下の繰り返しによって形成された可能性が示唆されている(野尻湖地質グループ・野尻湖火山灰グループ,2016).北部(湖岸寄り)のT2ユニットs1とs4には大量の中礫~巨礫(多くが亜角礫)が含まれており,現在の湖岸の堆積物とよく似るため,現在とよく似た環境であったと考えらえる.当時ヒトがいたならば,水位が下がって湖底面が露出した期間は,活動の場として利用された可能性があり,s1とs4,特にそれらの上面(層理面)は,立が鼻遺跡の立地とその変化を探る上で重要な層準(生活面)である.また,T2ユニットs1とs4に含まれる礫は,大きさ,形状,礫種構成などから見て湖底もしくは湖岸の侵食にともない基盤の泥流堆積物から洗い出されたものであることが明らかとなっている(中村・竹下,2017).礫を供給した要因は,気候変動や季節変化,短期の気象変化,あるいは地殻変動などによる水位変化も念頭において解明を進める必要がある.
立が鼻砂部層T4ユニット(約4.4~4.3万年前;野尻湖地質グループ・火山灰グループ,2016)は,スコリア層と砂礫層,火山灰層,砂層からなり,4つのサブユニット(下位より順にb,c,d下,d上)に区分することができる(野尻湖地質グループ,2025).狩猟・解体場の状況証拠ではないかとして注目された旧層序区分の中部野尻湖層Ⅰの化石や遺物の産出層(野尻湖人類考古グループ,1990)を現在の地質層序に当てはめると,その多くがT4ユニットの上部(T4ユニットd下・上)に含まれることがわかってきた.T4ユニットd上は北東-南西方向に伸びる3~4列の湖岸州を構成し,1シーズンにも満たない短期間に形成されたと考えられ,その上面の存続期間もごく短期である.湖岸州から10m足らず陸側(北側)のT4ユニットd上の上面(生活面)には,スコリア層(T5ユニットa)が埋める大型偶蹄類の足跡も見つかっており(野尻湖生痕グループ・足跡化石班,2016),この面からは短期間のヒトを含む動物の歩様が復元できる可能性がある.
立が鼻砂部層T5ユニット(約4.3万年前)は,スコリア層と砂礫層,火山灰層,砂層からなり,4つのサブユニット(下位より順にa,b,c,d)に細区分することができる.本ユニットの基底部付近からはヤベオオツノジカ上腕骨の接合資料(野尻湖人類考古グループ,2018)が発見されたほか,本ユニットに含まれる大礫・巨礫がT5ユニットbやT5ユニットaの上面を荷重か加圧で変形させている様子が確認された(野尻湖地質グループ・野尻湖火山灰グループ,2016).
引用文献
Kondo et al. (2018) Quaternary International, 471, 385-395.
中村文洋・竹下欣宏(2017)野尻湖ナウマンゾウ博物館研究報告,25,1-17.
野尻湖地質グループ(2004)野尻湖ナウマンゾウ博物館研究報告,12,1-13.
野尻湖地質グループ(2025)野尻湖ナウマンゾウ博物館研究報告,33,13-32.
野尻湖地質グループ・野尻湖火山灰グループ(2016)野尻湖ナウマンゾウ博物館研究報告,24,15-32.
野尻湖人類考古グループ(1990)地団研専報,37,145-160.
野尻湖人類考古グループ(2018)野尻湖ナウマンゾウ博物館研究報告,26,21-38.
野尻湖生痕グループ・足跡化石班(2016)野尻湖ナウマンゾウ博物館研究報告,24,107-113.
