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[J-P-3]What!? Are the islands floating? The science of the inferior mirage phenomenonⅢ - The Mystery of Mirage Revealed by Visibility -★ジュニアセッション奨励賞 受賞講演★
*Kumamoto Prefectural Uto High School Science Club Earth Science Group1 (1. Kumamoto Prefectural Uto High School Science Club Earth Science Group)
研究者氏名:
2年 徳丸 幸樹, 堀田 舞衣, 西田 琉花, 橋本 直大
1年 田代 崇真
1 背景・目的
蜃気楼の一種とされる不知火現象の研究を進める中で、浮島現象も蜃気楼であることを知った。そこで、不知火より発生しやすい浮島を観測し、よく浮いて見える浮島現象の発生・観測条件を明らかにするため研究を始めた。
昨年度までの研究から、①気温と海水温の温度差が大きい、12~1月の良く晴れた日の早朝②高さの低い観測点③観測対象まで約10㎞の距離が浮島の観測条件であると分かっている。
今回の研究目的は、以下の3つである。
Aよく浮いた浮島現象を観測し、条件を確認する
B視程が良い時期を明らかにし、蜃気楼の観測に最適な時期を探る
C再現実験から光の屈折に必要な温度層の位置を調べる
2 研究内容
A 野外観測
宇城市不知火町にある永尾神社の海岸(高さ1m)から大島方面へ向けて、2024年11月下旬から2025年3月までの5ヶ月間に計15回の観測を行った。観測では、過去の研究からわかっていた観測条件である温度差や観測点の高さ、対象までの距離も同じであるにも関わらず、浮き具合に大きな差がある浮島現象が観測された。
そこで、観測時の不知火海の様子に注目したところ、約200cmの潮位差が生じていた。このことから、この潮位が浮島の観測に大きく影響しており、潮位が高いほどより浮いた浮島を観測でき、満潮時の中でも潮位が高くなっているタイミングが最適であると考えた。また、過去の研究から浮島の発生には、温度差が大きくなる早朝(冬ならば朝7時頃)が適していることが分かっているため、不知火海での蜃気楼の観測には、早朝と潮位が最も高くなる満潮時刻が重なるタイミングである「満月、新月の日の2~3日前」が最適であることが分かった。
B 視程の影響
野外観測の際、視程が良い日と悪い日があり、視程、見通しのよさが浮島の観測に大きな影響を与えていることが分かった。そこで、視程が良い時期を明らかにすることで、蜃気楼の観測に最適な時期を探ることを目的とした。観測は、宇土高校から熊本市方向(北方向)に存在する距離の違う3つの対象に対して、毎日、朝8時に定点で写真撮影を行い、撮影した写真の視程はどの対象まで見えたかをもとに1,2、3のどれかに分類し、月ごとのその平均値の比較を行った。また、視程に影響されると考えられる黄砂やpm2.5、水蒸気量などの大気中の微粒子のデータを収集し、視程への影響を調べた。結果、視程が良かった時期も、大気中の微粒子が少なかった時期も、夏から秋であったため、視程が良く、浮島観測に適する時期は夏から秋であることが分かった。
一年の視程の変化に加え、一日の中の視程の変化も調査した。黄砂等の微粒子が飛来していない天気の良い日に一時間ごとに視程観測を行い、一日の中で視程の変化を明らかにする。観測は計三日間、朝八時から一時間ごとに行った。観測の結果、朝から昼になるにつれて視程が良くなっていった。
また、気象庁の地点熊本のデータを用いて視程の傾向を確認する。ただし、使用するデータは天気の影響を除くために降水量が0の日のみとする。結果、1年の中では定点観測と同様に冬から春に視程が悪く、夏から秋に視程が良いとわかった。一日の中では、気象庁でのデータでも朝に視程が最も悪く、昼頃に最もよいという傾向が見られた。
C 光の屈折に必要な温度層の位置
浮島の発生に必要な温度層の位置を調べるために、ヒーターを用いた浮島の再現実験を行った。実験はヒーターを対象側から8枚並べ、観測点の高さを0㎜、5㎜に変えてそれぞれ一枚ずつずらす場合と一枚以外ずらす場合で行った。結果、②③付近で浮き具合が変化したことから、高さを高くするとその変化が生じた位置が対象側に近づいたことから①下位蜃気楼の観測には対象付近の気温差が重要であること、②観測点の高さが高くなると光が屈折する場所が対象側に近づくということが分かった。また、この結果を独自のシミュレーションに当てはめたところ同様のことが確認できた。
3 まとめ
不知火海での浮島の観測条件(浮島の観測と今回のモデル実験より)
①気温と海水温の温度差がある…12~1月の早朝
②観測点の高さが低い…満潮時の海岸
③適当な距離がある…10km程度
④潮位が高く、満潮時刻が日の出時刻に近い・・・満月・新月の2~3日前
⑤視程がよい…夏から秋
⑥対象付近の温度差がある
4 参考文献
◆国土地理院 ◆気象庁 ◆YAHOO!天気 ◆気象衛星ひまわり9号
◆蜃気楼のすべて!(日本蜃気楼協議会) ◆熊本県水産研究センター
◆川合秀明、北村祐二、柴田清孝
(2020、下位蜃気楼の光路計算マダガスカルで見た蜃気楼)
キーワード:浮島現象、蜃気楼、視程、再現実験、温度差

