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[J-P-5]The Science of Unknown Phenomena (Shiranui Phenomenon) 6 -Why are Shiranui seen only on the night of Hassaku? -★ジュニアセッション奨励賞 受賞講演★

*Kumamoto Prefectural Uto High School Science Club Earth Science Group1 (1. Kumamoto Prefectural Uto High School Science Club Earth Science Group)
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 研究者氏名:
2年 徳丸 幸樹, 堀田 舞衣, 西田 琉花, 橋本 直大 
1年 田代 崇真

1 はじめに
不知火現象 (図1)とは、八朔(旧暦の8月1日)の晩に不知火海で見られるとされる蜃気楼現象のことである。

2 目的
 今回はなぜ八朔の晩に見られるのか気象の視点から以下の2つに注目して研究した。
A:不知火海における気温と海面水温の温度差
B:不知火海を吹く風の特徴

3 不知火海における気温と海水温の温度差について
(1)目的・仮説 
昨年の研究に使用していた海水温データに問題点が見つかったため、今回は自分たちで海水温を計測することにした。その際、八朔の時期は今まで使用していた水深5m地点の海水温よりも、海面付近の海水温のほうが高くなっているのではないかと仮説を立てた。
(2)  方法 
①  海水温測定器の作成
マイクロコンピュータ(ARDUINO UNO)や温度センサー、SDカードモジュールなどを用いて自動海水温測定器を作製した。測定は5分おきにできるようにし、取得した海水温データは自動的に取得した時間とともにSDカードに保存されるようにした。
②  不知火海への設置
地元の漁業協同組合さんの協力のもと、実際の不知火海への設置を行った。不知火海沖の牡蠣いかだと、不知火海へと流れる河川である鏡川の河口の2地点に設置した。
 ③データの解析
 今回牡蠣いかだに設置した装置は波や潮流の影響によって破損してしまったため、今回は、鏡川河口での海水温データを用いて一日の中での海水温の変化や、気温との温度差を調べる。
(3)結果・考察
まず、水深の浅い方が、1日の中で温度変化しやすいことが分かった。次に、月別での違いを見ると、9月から11月にかけて海水温は下がっていることが分かった。そして、これらのデータと今まで使用していた水深5mの海水温とを比較すると、10月になるとほとんど同じになり、11月では低くなっていたことから、水深の浅い方が、年間を通じて温度変化しやすいと言える。さらに、熊本県水産研究センターから提供してもらった水深0mのデータと、水深5mの海水温とを比較すると、海面水温の方が夏は高くなり、冬は低くなっており、これまでの水温変化の傾向と一致したため、温度差は冬が最大であるが、不知火海においては、八朔の時期も十分であり、蜃気楼が発生しやすい時期だと言える。

4 不知火海を吹く風の特徴
昨年の研究で、不知火海において、昼は季節風、夜は海陸風の陸風が吹いていると分かった。今回は、風速に注目した。結果、夜は弱い風が多く吹いており、昼は強い風が吹いていることが分かった。このように昼夜で風向や風速などが変わる要因は、地上と上空の気温差が関係しているのではないかと思われる。昼は、地上と上空の気温差が大きいため、地上と上空の空気がよく混ざり合い、上空の強い風が地上に降りて上空の季節風に影響される。一方、夜は気温差が小さいため、地上では弱い風だけが吹くと考えた。このことから、不知火の発生条件である「微風」が吹くのは、夏から八朔の時期である。

5 まとめ、今後の展望
気温と海水温の温度差:蜃気楼の発生条件である温度差は、夏は小さいが八朔頃は十分あ
る。
不知火海を吹く風:不知火の発生条件である夜間の微風は、夏や八朔の時期に多く、
冬は少ない。
よって、不知火発生の気象条件を満たす時期は八朔であるため、不知火は八
朔に見られるとされてきたと考えられる。

6 参考文献
・高校、高専気象観測機器コンテスト  ・気象庁  ・熊本県水産研究センター   
・地理院地図  ・不知火の研究(宮西通可、1943)  ・不知火新考(立石巌、1994)

キーワード:海陸風、季節風、不知火海、海水温、気温