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[J-P-6]Is the red color of the Makado stone hematite? 3
*Kumamoto Prefectural Uto High School Science Club Earth Science Group1 (1. Kumamoto Prefectural Uto High School Science Club Earth Science Group)
研究者氏名:
2年 徳丸 幸樹, 堀田 舞衣, 西田 琉花, 橋本 直大
1年 田代 崇真
[1:はじめに]
熊本県宇土市網津町馬門で産出される馬門石(まかどいし)は、約9万年前の阿蘇山の噴火によるAso-4火砕流堆積物の阿蘇溶結凝灰岩の一種であり、赤色が特徴的な岩石。また、古墳時代には近畿地方まで運ばれ、権力者の古墳の石棺材に利用された。⁽¹⁾
本研究では、Aso-4火砕流堆積物の阿蘇溶結凝灰岩のうち、赤いものを「馬門石」、黒い
ものを「Aso-4」と呼ぶ。⁽²⁾
[2:目的]
馬門石の赤色の原因について過去の文献で調べたところ、「酸化が関係しているのでは」
とあったが、詳細は不明であった。そこで、私たちは馬門石の赤色の原因を探ることにした。
[3:研究内容]
今回は、以下の4点から研究を行った。
A:文献調査・実験
B:成分分析・焼成試験(熊本県産業技術センター)
C:現地調査(熊本県宇土市馬門地区)
D:薄片の製作・観察
A:文献調査・実験
(1)文献調査
赤色の鉄の酸化物にはFe₂O₃(ヘマタイト)とFeO(OH)があることが分かった。⁽¹⁾
(2)実験
馬門石とAso-4の相違点について調べた。密度、磁性に大きな違いはなかったが、硬さはAso-4の方が硬かった。Aso-4を用いてFeO(OH)の生成実験を行ったが変化は見られなかったため赤色の原因はFeO(OH)ではないと考えられる。⁽⁴⁾
B:成分分析・焼成試験(熊本県産業技術センター)
(1)蛍光X線分析
どの資料も成分組成はほぼ同一で約10%の鉄を含んでいた。⁽⁵⁾
(2)X線回折
Fe₂O₃の存在を明瞭に確認することはできなかった。⁽⁶⁾
(3)焼成実験
馬門石とAso-4を電気炉で24時間加熱すると、1000℃で加熱後はどちらも鮮やかな赤色に変化した。このことから含まれている鉄が馬門石の赤色の原因ではないかと考えられる。
C:現地調査(熊本県宇土市馬門地区)
(1)馬門地区
水路や谷沿いでの観察で、水平、鉛直方向ともに分布が散らばっていることを確認できた。
(2)工事による大規模露頭
馬門石とAso-4の分布や、境界面や色の変化を広範囲で連続的かつ立体的に観察できた。 ⁽⁷⁾
馬門石とAso-4は、ともに黒曜石レンズや礫を含み、岩相色以外はほぼ同じで、境界面は不明瞭で、漸移変化していた。このことから元々は同じ岩石だったと考えられる。
馬門石中にAso-4が塊状に分布していたり、狭い範囲で馬門石とAso-4が複雑に混在したりしている部分もあり、 馬門石の生成には「高温」の他にも条件があると考えた。
D:薄片の製作・観察(御船町恐竜博物館)
御船町恐竜博物館の協力の下、岩石薄片の製作や観察を行った。溶けて形が崩れた火山ガラスや凝灰岩の特徴である多孔質の隙間を観察できた。この多孔質の隙間により、火砕流として堆積直後の高温なAso-4中に空気が流入することができたと考えた。 馬門石中にAso-4が塊状に分布したり、両者が複雑に混在したりしていた露頭も、局所的な空気の流入の程度により、「充分な酸素」の獲得に違いが生まれたためと考えられ、充分な酸素が得られた部分は赤い馬門石になり、得られなかった部分が黒いAso-4のまま残ったと考えられる。
[4:考察]
赤色の原因はヘマタイト(Fe₂O₃)で、火砕流として堆積した直後の高温下で、多孔質によって流入した空気中の酸素を充分に得られた部分が高温酸化し、Fe₂O₃(ヘマタイト)を生じて馬門石になったと考えた。⁽⁸⁾
地表や基盤近くのオレンジ色の部分は、温度が不十分なため非溶結で、風化・侵食されやすく、その後の変化でFeO(OH)を形成したと考えた。
[5:まとめ]
・馬門石の赤色の原因は、Fe₂O₃(ヘマタイト)である。
・馬門石は、堆積直後はAso-4と同様に黒かったが、火山ガラスが溶結し黒曜石レンズできるほど高温で、なおかつガス交換により流入した酸素を充分に得られた一部が、高温酸化によってFe₂O₃(ヘマタイト)を生成し、赤い馬門石となった。
[6:参考文献]
[1]「馬門石 噴火の軌跡に触れる」熊本日日新聞朝刊(2021年6月13日)
[2]高田利夫(1969) 酸化鉄、水酸化鉄系化合物の生成と物性
[3]三沢俊平(1983) 鉄サビ生成の現状と未解明点
[4]鈴木茂(2008)鉄さびの形成過程と構造変化
[5]椙山正孝(1959) 金属材料の高温酸化とその対策
[6]井上勝也(1983) 鉄酸化物の種々相
[7]熊本県地質図(10万分の1) 熊本県地質図編纂委員会(2008)
[8]地理院地図
キーワード:馬門石、Aso-4、Fe₂O₃(ヘマタイト)、酸素、高温酸化
2年 徳丸 幸樹, 堀田 舞衣, 西田 琉花, 橋本 直大
1年 田代 崇真
[1:はじめに]
熊本県宇土市網津町馬門で産出される馬門石(まかどいし)は、約9万年前の阿蘇山の噴火によるAso-4火砕流堆積物の阿蘇溶結凝灰岩の一種であり、赤色が特徴的な岩石。また、古墳時代には近畿地方まで運ばれ、権力者の古墳の石棺材に利用された。⁽¹⁾
本研究では、Aso-4火砕流堆積物の阿蘇溶結凝灰岩のうち、赤いものを「馬門石」、黒い
ものを「Aso-4」と呼ぶ。⁽²⁾
[2:目的]
馬門石の赤色の原因について過去の文献で調べたところ、「酸化が関係しているのでは」
とあったが、詳細は不明であった。そこで、私たちは馬門石の赤色の原因を探ることにした。
[3:研究内容]
今回は、以下の4点から研究を行った。
A:文献調査・実験
B:成分分析・焼成試験(熊本県産業技術センター)
C:現地調査(熊本県宇土市馬門地区)
D:薄片の製作・観察
A:文献調査・実験
(1)文献調査
赤色の鉄の酸化物にはFe₂O₃(ヘマタイト)とFeO(OH)があることが分かった。⁽¹⁾
(2)実験
馬門石とAso-4の相違点について調べた。密度、磁性に大きな違いはなかったが、硬さはAso-4の方が硬かった。Aso-4を用いてFeO(OH)の生成実験を行ったが変化は見られなかったため赤色の原因はFeO(OH)ではないと考えられる。⁽⁴⁾
B:成分分析・焼成試験(熊本県産業技術センター)
(1)蛍光X線分析
どの資料も成分組成はほぼ同一で約10%の鉄を含んでいた。⁽⁵⁾
(2)X線回折
Fe₂O₃の存在を明瞭に確認することはできなかった。⁽⁶⁾
(3)焼成実験
馬門石とAso-4を電気炉で24時間加熱すると、1000℃で加熱後はどちらも鮮やかな赤色に変化した。このことから含まれている鉄が馬門石の赤色の原因ではないかと考えられる。
C:現地調査(熊本県宇土市馬門地区)
(1)馬門地区
水路や谷沿いでの観察で、水平、鉛直方向ともに分布が散らばっていることを確認できた。
(2)工事による大規模露頭
馬門石とAso-4の分布や、境界面や色の変化を広範囲で連続的かつ立体的に観察できた。 ⁽⁷⁾
馬門石とAso-4は、ともに黒曜石レンズや礫を含み、岩相色以外はほぼ同じで、境界面は不明瞭で、漸移変化していた。このことから元々は同じ岩石だったと考えられる。
馬門石中にAso-4が塊状に分布していたり、狭い範囲で馬門石とAso-4が複雑に混在したりしている部分もあり、 馬門石の生成には「高温」の他にも条件があると考えた。
D:薄片の製作・観察(御船町恐竜博物館)
御船町恐竜博物館の協力の下、岩石薄片の製作や観察を行った。溶けて形が崩れた火山ガラスや凝灰岩の特徴である多孔質の隙間を観察できた。この多孔質の隙間により、火砕流として堆積直後の高温なAso-4中に空気が流入することができたと考えた。 馬門石中にAso-4が塊状に分布したり、両者が複雑に混在したりしていた露頭も、局所的な空気の流入の程度により、「充分な酸素」の獲得に違いが生まれたためと考えられ、充分な酸素が得られた部分は赤い馬門石になり、得られなかった部分が黒いAso-4のまま残ったと考えられる。
[4:考察]
赤色の原因はヘマタイト(Fe₂O₃)で、火砕流として堆積した直後の高温下で、多孔質によって流入した空気中の酸素を充分に得られた部分が高温酸化し、Fe₂O₃(ヘマタイト)を生じて馬門石になったと考えた。⁽⁸⁾
地表や基盤近くのオレンジ色の部分は、温度が不十分なため非溶結で、風化・侵食されやすく、その後の変化でFeO(OH)を形成したと考えた。
[5:まとめ]
・馬門石の赤色の原因は、Fe₂O₃(ヘマタイト)である。
・馬門石は、堆積直後はAso-4と同様に黒かったが、火山ガラスが溶結し黒曜石レンズできるほど高温で、なおかつガス交換により流入した酸素を充分に得られた一部が、高温酸化によってFe₂O₃(ヘマタイト)を生成し、赤い馬門石となった。
[6:参考文献]
[1]「馬門石 噴火の軌跡に触れる」熊本日日新聞朝刊(2021年6月13日)
[2]高田利夫(1969) 酸化鉄、水酸化鉄系化合物の生成と物性
[3]三沢俊平(1983) 鉄サビ生成の現状と未解明点
[4]鈴木茂(2008)鉄さびの形成過程と構造変化
[5]椙山正孝(1959) 金属材料の高温酸化とその対策
[6]井上勝也(1983) 鉄酸化物の種々相
[7]熊本県地質図(10万分の1) 熊本県地質図編纂委員会(2008)
[8]地理院地図
キーワード:馬門石、Aso-4、Fe₂O₃(ヘマタイト)、酸素、高温酸化

