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[J-P-7]Shimabara Great Higo Annoyance

*Kumamoto Prefectural Uto High School Science Club Earth Science Group1 (1. Kumamoto Prefectural Uto High School Science Club Earth Science Group)
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 研究者生徒氏名:
2年 徳丸 幸樹, 堀田 舞衣, 西田 琉花, 橋本 直大 
1年 田代 崇真

1:動機
熊本県宇土市にある石切場近くの橋には、ピンク色が特徴の馬門石が石材として使われている。調べるうちに、元々は木造の橋であったが、島原大変による津波で流失したことがきっかけで、その後石橋となったことを知った。そこで、島原大変肥後迷惑について 研究することにした。

2:島原大変肥後迷惑とは
日時:寛政4年4月1日(1792年5月21日)20時頃
場所:島原半島にある眉山
原因:眉山の山体崩壊
内容:海への土砂の流入による津波の発生
被害:死者約15000人

3:研究の目的
(1)島原大変での津波被害の実態把握を行い、災害の効果的な伝承方法を開発する。
(2)防災・減災を啓発するための津波被害の科学的特性を検証する。

4:研究内容
A 実態把握(現地調査)
宇土半島に分布する供養塔や津波石などの災害遺構を訪ね、聞き取り調査を行う。
(1) 震災遺構
①方法
宇土半島の北側にある戸口、緑川、円応寺、下網田、 長浜、大田尾の6ヶ所で行った。
②結果
殆どの地点は地図に表示されておらず、遺構までたどり着くのが大変であった。
(2) 住民への聞き取り調査
①方法
震災遺構周辺の地域住民に聞き取りを行う。
②結果
遺構の存在や島原大変があったことは知っていたが、詳しいことを知っている人はほとんどいなかった。
③考察
島原大変に関する詳細な内容に関する認知度は低いことがわかった。
B 効果的な伝承方法の開発
(1) 目的
聞き取り調査の考察から、震災遺構の存在を知り、できれば足を運んでもらえるような、伝承のための効果的なツールが必要であると考えたため。
(2) 方法
Googleマイマップを使用し、この災害をまとめたデジタルマップを作成する。
C 過去の災害から考える津波の科学的特性
(1) 文献調査と結果
文献を元にして津波被害についてまとめた結果、長浜や戸口は、被害が大きいことがわかった。近い地点での津波の被害の程度が大きく異なっていたことから、津波の発生源との距離以外に、被害の大きさを変動させる要素があるのではないかと考えた。
(2) 仮説
文献調査から、津波の被害の程度を左右する津波の高さは、「海岸線の地形」によって変わるのではないかと仮説を立てた。
(3) 方法
「島原大変肥後迷惑」の文献データを用いて、津波の被害が分かっている地域における「海岸線の地形」を調べる。
(4) 結果
特に被害が大きかった長浜-下網田では海岸線が入り組んでおり、津波高が15mにもなっていた。また、海岸線がゆるいU字型となっている大田尾では遡上高が22,5mと最も高かった。
(5) 考察
「津波高」や「遡上高」は、 海岸線が入り組んでいたら高くなり、直線的なら低くなるのではないかと考えた。
(6) 追加検証1:宇土半島以外の被害状況
玉名地域は宇土地域と同様に、熊本地域と比べて被害が大きくなっていた。これらの地域では、直線的ではなく、入り組んだ海岸地形をしていた。
(7) 追加検証2:東日本大震災
①目的
島原大変だけではデータが少ないため、東日本大震災でも同様に調べることにした。
②結果
津波高は「直線型」より「V字型・U字型」の方が大きかった。
③考察
島原大変と同様の結果であった。 よって、「海岸線の形によって津波高は異なる」と言える。
D津波の科学的特性とその検証
(1) 目的 津波高は海岸線の形によって異なることを、模型を用いた実験で確かめる。
(2) 方法 5色の発泡スチロールを重ね、発砲スチロールカッターで切り、海岸線の模型を作る。水槽に水を入れ、端に模型、もう一方にスロープを作り、水を入れたペットボトルを転がして波を発生させる。模型に波が到達した段の色を記録する。
(3) 結果 V字型>U字型>直線>袋型>岬 の順に波が高くなった。
(4) 考察 島原大変や東日本大震災と同様の結果となったため、実験は成功したと言える。

5:まとめ・感想
先人たちが残してくれた津波石や供養塔などの震災遺構を実際に訪ねることで、身近な所に津波が襲来したことを実感した。

6:謝辞・参考文献
研究を進めるにあたり本校教諭の本多栄喜先生、その他本研究に関わってくださった皆様に感謝申し上げます。
・気象庁HP(津波の基礎知識など)・新課程版スクエア最新図説地学(2022年、第一学習社)・熊本県潮害誌を参考にまとめられた「宇土市史研究(創刊号)」・カシミール3D・地理院地図・島原大変による寛政大津波(堀川治城、平成20年)・島原大変大地図(松平文庫所蔵資料)・日本の歴史上最大の火山災害島原大変(国土交通省九州地方整備局雲仙復興事務所、平成15年

キーワード:島原大変肥後迷惑、山体崩壊、津波、防災、減災