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[J-P-10]Proposal of a subsurface model based on fumarolic observations at Ibusuki volcanoes

*IKEDAGAKUEN Ikeda senior high school SSH1 (1. Ikeda senior high school)
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 研究者生徒氏名:中崎真央・牛嶋康太・木浦琉慧・澁谷百々花・内野亮太・茶屋道 玲・劉 謙・足立 光・薗田怜旺・岩谷明香里・加藤彩名・川路眞愛

1 動機
鹿児島県1)には11の活火山が存在し,中でも活火山「池田・山川」は成層火山を形成していないため,居住地域や観光客が多い。一方で,御嶽山のような水蒸気噴火による突然の災害リスクが高く,噴火予測は重要な課題である。実際に2007年以降に深さ10km以内でマグニチュード2~3の地震が多発している(Fig.1)。
2 池田・山川の地域特性
 池田・山川は鹿児島県薩摩半島南東端に位置し,池田カルデラと鰻池,山川などのマール群を含めた総称である。約6,400年前に現在の池田湖付近から激しい水蒸気噴火が始まり,その後大規模な火砕流の噴出が続いた。その噴火後にマール群が形成され, 山川マールからはベースサージが発生した。これら一連の噴火で現在の池田カルデラが形成された。現在は,鰻池周辺や権現,南迫田などで噴気活動が認められる。また,1967年8月5~8日には指宿地区で有感となる群発地震が発生した。2)
3 調査地と火山ガス濃度測定方法
 調査地は,熱水活動が活発で,かつ火山ガスを安全に採取できる池田・山川の中央に位置する指宿火山群の権現変質帯,南迫田変質帯,鰻池変質帯を選んだ(Fig.2)。2022年より,これらの地点において一ヶ月毎の定期観測を行っている。測定対象成分は,マグマ起源のCO₂及びSO2,熱水起源のH2Sである。CO2とH2Sはチャック付きポリ袋で約50倍に,一方SO2は約4倍にシリンジで希釈している。測定にはガスセンサーと気体検知管を併用し,得られた測定値は気体検知管による値を用いる。
4 結果(組成比変化)
 火山活動の化学的指標であるSO2/H2S,CO2/H2S(組成比の経時変化と地震)で評価する(Fig.3,4)。SO2/H2Sの経時変動は,3地点とも最初は減少傾向であったが,2023年8月7日の地震で長期的な現象が停止し,同年11月15日の直下地震(M2.4とM2.5)が起こると明瞭な増加が見られ,特に南迫田,鰻池で顕著である。その後のSO2/H2SのV字変動に比べCO2/H2S比は鰻池のみ増加に変動し,他の二点は変動が少ない。
5地震活動との関係
 Fig.3,4から,「地殻応力-火山ガス上昇モデル」を考案した(Fig.5)。マグマ由来の火山ガス(SO2やCO2)が上昇時に,地殻応力により阻害されるが,地震によって応力が解放されると熱水溜まりへと急激に上昇し,噴気孔から放出される。これにより,通常は減少傾向にある火山ガスが,地震発生時に増加する傾向があると推測される。このモデル及び先行文献4)5)に基づき,指宿火山群の地下構造モデルを提案する。火山ガスはマグマから構造線や断層に沿って上昇し,噴気孔から放出される。一方,熱水は海水や湖水から浸潤して形成された地下水が鰻池変質帯の下で加熱されて,大量の熱水溜まりとなり,そこから南迫田及び鰻池変質帯へと浸潤していくと考えられている4)5)。鰻池変質帯では高濃度のH2Sが観測されることから,浅部に大規模な熱水溜まりが存在すると推定される。また,噴気中のSO2濃度が3地点で最も低いのは,この豊富な熱水による希釈のためと考えられる。
 熱水は,鰻池直下の熱水溜まりからデイサイト火砕岩の帯水層に沿って南迫田変質帯に供給されるが,熱水溜まりは比較的小さいと考えられる(Fig.6)。
 権現変質帯も熱水は鰻池直下の帯水層から供給され,また,権現山から供給される天水の一部に火山ガスの酸性成分が溶け,指宿地区で唯一強酸性(pH2)の表層水が存在する。権現直下地震の直前に,権現だけではなく鰻池にもSO2の上昇が確認された(Fig.7)。
6 今後の課題
火山ガス各成分濃度と地震の関連性を調べモデルの検証を進めるために,地震のデータの収集も続けていく。これらを通じて活火山「池田・山川」における噴火や火山活動の指標となる特定の成分濃度変動や組成比変動等のデータを蓄積し,火山防災に繋がる長期的な基礎データの蓄積に励みたい。
参考文献
1) 井口正人,九州地方の火山活動と広域火山災害,防災研究所公開講座, 20181002
2)気象庁震度データベース検索
3)https://www.data.jma.go.jp/vois/data/fukuoka/518_Ikeda_Yamagawa/518_index.html
4)NEDO,地熱開発促進調査中間報告書「池田湖東部地域(第一次)」,2008
5) NEDO,地熱開発促進調査報告書「辻之岳地域」,2001
6)https://gbank.gsj.jp/volcano/Act_Vol/
7)川辺禎久他,産業技術総合研究所地質調査総合センター,地域地質研究報告,開聞岳地域の地質,2005

キーワード:噴気観測・火山ガス組成比・地殻応力・火山活動予測