Presentation Information
[J-P-14]Estimating of the source of serpentine in the rivers of Shikoku Chuo City and Mihama City - Through comparison using serpentine boulders -
*Ehime university senior high schooluniversity1 (1. Ehime university senior high school)
研究者生徒氏名:元木希歩
[はじめに]
愛媛県四国中央市土居町を流れる関川と浦山川の上流域には、主に低温高圧型の変成岩類を産する三波川帯が分布しているが、その中にあるEclogite unitではより高温高圧条件で変成を受けた岩石を産することが知られている。そのため、関川と浦山川の下流域では多様な変成度の転石を見ることができる。そこには、構成鉱物の違いにより多様な外観を有する蛇紋岩も存在しており、昨年の研究では、当該地域にて採集した変成岩類の観察に加え、蛇紋岩を対象にX線回折実験を行い、採集した蛇紋岩の供給源の推測を行った。
しかしながら、蛇紋岩の供給源は1つでは無く、Higashi-Akaishi ultramafic bodyとSmall Serpentiniteが挙げられる。昨年の研究ではHigashi-Akaishi ultramafic bodyを供給源とした蛇紋岩について推測したが、今回の研究ではSmall Serpentiniteを供給源とした蛇紋岩について分析することにした。そこで、Higashi-Akaishi ultramafic bodyを流路に含まず、Small Serpentiniteを含む新居浜市の国領川と西条市の加茂川で岩石を採集し、新たに分析実験を行い、Small Serpentiniteを考慮したより正確な蛇紋岩の供給源の推定を行った。
[方法]
愛媛県新居浜市の国領川と西条市の加茂川において転石を採集し観察した。採集した岩石のうち蛇紋岩と思われる岩石について、岩石カッターでカットした後、粉末状にしてRIGAKU製粉末X線回折装置Ultima IVを用いてX線回折実験を行い、岩石を構成する鉱物の分析を行った。そして、分析結果と論文や地質図を照らし合わせ、供給源を推定した。
[結果]
国領川の蛇紋岩には、蛇紋石のひとつであるAntigoriteの他にMagnetite、Diopside、Bruciteが含まれ、加茂川の蛇紋岩にはAntigoriteの他にMagnetite、Diopside、Brucite、Clinochlore、Forsteriteが含まれていた。BruciteやForsteriteを含む蛇紋岩がみられたことから、かんらん岩が熱水と反応して蛇紋岩となる蛇紋岩化作用があまり進んでいないことがわかった。
さらに4つの河川で採集した、蛇紋岩以外の変成岩についてまとめたところ、多く見られた変成岩はそれぞれ、関川についてはザクロ石角閃岩や曹長石角閃石片岩、浦山川については曹長石角閃石片岩や泥質片岩、国領川についてはザクロ石角閃岩や泥質片岩、加茂川については泥質片岩、緑色片岩であった。
[考察]
分析結果と地質図を照らし合わせると、Antigoriteのみの蛇紋岩とMagnetiteを含む蛇紋岩については、4つの河川で共通し、数も一番多いことから、すべての河川の流路をすべてカバーしているAlbite-biotite zoneのSmall Serpentiniteから供給されたと考えられる。そして、二番目に多く見つかったBruciteを含む蛇紋岩は、蛇紋岩化作用があまり進んでいないこと、また浦山川以外の河川で見られたため、関川のものはHigashi-Akaishi ultramafic bodyから、国領川と加茂川は二つの河川の流路に含まれているAlbite-biotite zoneのSmall Serpentiniteから供給されたと考えられる。さらに浦山川だけで見つかったClinochloreとTalcを含んだ蛇紋岩は他の河川の流路にないGarnet zoneのSmall Serpentiniteから供給されたと考えられる。
上記の蛇紋岩の供給源の考察について、それぞれの河川で採集した蛇紋岩以外の変成岩の特徴や量を比較したところ、Albite-biotite zoneとGarnet zone由来の変成岩が多く見られたことからも、今回の結果を支持している。
最後にこの研究を通し、転石を分析することで、河川の上流には何の岩石の露頭が存在するのかを知ることができ、実際に露頭へ行かなくても河川の流路に含まれる地質について確認でき、岩石を採集できるため、高校生にとっても効率よく研究を進められることがわかった。
キーワード:蛇紋岩 関川 浦山川 国領川 加茂川 三波川変成岩類 X線回折実験
[はじめに]
愛媛県四国中央市土居町を流れる関川と浦山川の上流域には、主に低温高圧型の変成岩類を産する三波川帯が分布しているが、その中にあるEclogite unitではより高温高圧条件で変成を受けた岩石を産することが知られている。そのため、関川と浦山川の下流域では多様な変成度の転石を見ることができる。そこには、構成鉱物の違いにより多様な外観を有する蛇紋岩も存在しており、昨年の研究では、当該地域にて採集した変成岩類の観察に加え、蛇紋岩を対象にX線回折実験を行い、採集した蛇紋岩の供給源の推測を行った。
しかしながら、蛇紋岩の供給源は1つでは無く、Higashi-Akaishi ultramafic bodyとSmall Serpentiniteが挙げられる。昨年の研究ではHigashi-Akaishi ultramafic bodyを供給源とした蛇紋岩について推測したが、今回の研究ではSmall Serpentiniteを供給源とした蛇紋岩について分析することにした。そこで、Higashi-Akaishi ultramafic bodyを流路に含まず、Small Serpentiniteを含む新居浜市の国領川と西条市の加茂川で岩石を採集し、新たに分析実験を行い、Small Serpentiniteを考慮したより正確な蛇紋岩の供給源の推定を行った。
[方法]
愛媛県新居浜市の国領川と西条市の加茂川において転石を採集し観察した。採集した岩石のうち蛇紋岩と思われる岩石について、岩石カッターでカットした後、粉末状にしてRIGAKU製粉末X線回折装置Ultima IVを用いてX線回折実験を行い、岩石を構成する鉱物の分析を行った。そして、分析結果と論文や地質図を照らし合わせ、供給源を推定した。
[結果]
国領川の蛇紋岩には、蛇紋石のひとつであるAntigoriteの他にMagnetite、Diopside、Bruciteが含まれ、加茂川の蛇紋岩にはAntigoriteの他にMagnetite、Diopside、Brucite、Clinochlore、Forsteriteが含まれていた。BruciteやForsteriteを含む蛇紋岩がみられたことから、かんらん岩が熱水と反応して蛇紋岩となる蛇紋岩化作用があまり進んでいないことがわかった。
さらに4つの河川で採集した、蛇紋岩以外の変成岩についてまとめたところ、多く見られた変成岩はそれぞれ、関川についてはザクロ石角閃岩や曹長石角閃石片岩、浦山川については曹長石角閃石片岩や泥質片岩、国領川についてはザクロ石角閃岩や泥質片岩、加茂川については泥質片岩、緑色片岩であった。
[考察]
分析結果と地質図を照らし合わせると、Antigoriteのみの蛇紋岩とMagnetiteを含む蛇紋岩については、4つの河川で共通し、数も一番多いことから、すべての河川の流路をすべてカバーしているAlbite-biotite zoneのSmall Serpentiniteから供給されたと考えられる。そして、二番目に多く見つかったBruciteを含む蛇紋岩は、蛇紋岩化作用があまり進んでいないこと、また浦山川以外の河川で見られたため、関川のものはHigashi-Akaishi ultramafic bodyから、国領川と加茂川は二つの河川の流路に含まれているAlbite-biotite zoneのSmall Serpentiniteから供給されたと考えられる。さらに浦山川だけで見つかったClinochloreとTalcを含んだ蛇紋岩は他の河川の流路にないGarnet zoneのSmall Serpentiniteから供給されたと考えられる。
上記の蛇紋岩の供給源の考察について、それぞれの河川で採集した蛇紋岩以外の変成岩の特徴や量を比較したところ、Albite-biotite zoneとGarnet zone由来の変成岩が多く見られたことからも、今回の結果を支持している。
最後にこの研究を通し、転石を分析することで、河川の上流には何の岩石の露頭が存在するのかを知ることができ、実際に露頭へ行かなくても河川の流路に含まれる地質について確認でき、岩石を採集できるため、高校生にとっても効率よく研究を進められることがわかった。
キーワード:蛇紋岩 関川 浦山川 国領川 加茂川 三波川変成岩類 X線回折実験

