Presentation Information
[J-P-15]Temperature and Pressure of Late Magma Differentiation of Bingi Bingi Complex, Southeast NSW, Australia
*Hyogo Prefectural Himejihigashi Senior High School1 (1. Hyogo Prefectural Himejihigashi Senior High School)
研究者生徒氏名:辻本ゆき乃、西川大貴、藤本知真、松岡沙和、山口歩珠、冨士佳蓮
マグマは開放系環境で分化するため、マグマ分化過程の解明は容易ではない。Kawakatsu and Yamaguchiは、大東-横田花崗閃緑岩の角閃石から波状累帯構造を発見し1)、既に晶出した鉱物が、変成作用よりずっとエネルギーの小さい熱水残液の循環によって、二次的に置換されることを示唆した。これに触発された筆者らは、揖保川花崗閃緑岩の角閃石から波状累帯構造を発見し、その形成メカニズムを明らかにした2)。鉱物全体が置換されてしまうと、どのような環境で何が起こったのかを追跡することは困難だが、波状累帯構造は、いったん晶出した鉱物が経験した二次的な影響の証拠を残すものであり、これからマグマ分化過程末期の環境を推定することができる。深成岩類の角閃石に見られる波状累帯構造は、市販の深成岩類の角閃石にも普遍的に見られる。
筆者らは、2022年に、豪州NSW州南東部Bingi Bingi Point複合深成岩体で採取した閃緑岩とトーナル岩の角閃石から波状累帯構造を発見した3)。京都大学理学部の協力を得て、筆者ら自身が角閃石の波状累帯構造のEPMA分析を行った結果、マグマ分化末期に酸化的環境でマグマの発泡・脱水に伴う熱水残液の循環が起こり、既に晶出していた角閃石のリム部に波状累帯構造が発達したと推定した3)。
今回、角閃石に波状累帯構造を形成した熱水残液の温度、圧力を明らかにするために、波状累帯構造が発達している角閃石のリム部と、角閃石のリム部と共存する斜長石とアルカリ長石のEPMA分析を行った。Mutchらによる角閃石のAl含量による圧力推定値の計算方法4)によると、淡緑色リム部の平衡圧力は1.7 kb~1.0 kbと推定された。またOttenによる角閃石のTi含量による温度推定値の計算方法5)によると、平衡温度は645~545 ℃であった。斜長石-アルカリ長石温度計6)によって、波状累帯構造部の再平衡温度を計算すると、1 kbで400 ℃、10 kbで500 ℃となった。さらに根建らによる不透明鉱物の共存関係7)に基づく分圧推定値は、酸素分圧log fO2=-19.5 ~-19.0となり、これらはいずれも、角閃石のリム部および波状累帯構造がサブソリダス環境における累進的酸化によって形成されたことを示している。
1)Kawakatsu,K. and Yamaguchi, Y. 1987. Geochim.Cosmocim.Acta,51, 535-540.
2)兵庫県立姫路東高等学校科学部地学系研究部. 2023. 日本地質学会第130年学術大会要旨.
3)兵庫県立姫路東高等学校科学部地学系研究部. 2024. 日本地質学会第131年学術大会要旨.
4)Mutch,E.J.F.,Blundy,J.D.,Tattitch,B.C.,Cooper,F.J. and Brooker,R.A. 2016. Contrib.Mineral.Petrol, 171:85.
5)Otten,M.T. 1984. Contrib.Mineral.Petrol,86, 189-199.
6)Whitney,J.A. and Stormer,J.C. 1977. Amer.Mineral.62, 687-691.
7)根建心具・大貫仁・吉田武義・田切美知雄. 1984. 岩鉱.79.,5.,200-213.
キーワード:波状累帯構造、熱水残液、発泡・脱水、サブソリダス環境、累進的酸化
マグマは開放系環境で分化するため、マグマ分化過程の解明は容易ではない。Kawakatsu and Yamaguchiは、大東-横田花崗閃緑岩の角閃石から波状累帯構造を発見し1)、既に晶出した鉱物が、変成作用よりずっとエネルギーの小さい熱水残液の循環によって、二次的に置換されることを示唆した。これに触発された筆者らは、揖保川花崗閃緑岩の角閃石から波状累帯構造を発見し、その形成メカニズムを明らかにした2)。鉱物全体が置換されてしまうと、どのような環境で何が起こったのかを追跡することは困難だが、波状累帯構造は、いったん晶出した鉱物が経験した二次的な影響の証拠を残すものであり、これからマグマ分化過程末期の環境を推定することができる。深成岩類の角閃石に見られる波状累帯構造は、市販の深成岩類の角閃石にも普遍的に見られる。
筆者らは、2022年に、豪州NSW州南東部Bingi Bingi Point複合深成岩体で採取した閃緑岩とトーナル岩の角閃石から波状累帯構造を発見した3)。京都大学理学部の協力を得て、筆者ら自身が角閃石の波状累帯構造のEPMA分析を行った結果、マグマ分化末期に酸化的環境でマグマの発泡・脱水に伴う熱水残液の循環が起こり、既に晶出していた角閃石のリム部に波状累帯構造が発達したと推定した3)。
今回、角閃石に波状累帯構造を形成した熱水残液の温度、圧力を明らかにするために、波状累帯構造が発達している角閃石のリム部と、角閃石のリム部と共存する斜長石とアルカリ長石のEPMA分析を行った。Mutchらによる角閃石のAl含量による圧力推定値の計算方法4)によると、淡緑色リム部の平衡圧力は1.7 kb~1.0 kbと推定された。またOttenによる角閃石のTi含量による温度推定値の計算方法5)によると、平衡温度は645~545 ℃であった。斜長石-アルカリ長石温度計6)によって、波状累帯構造部の再平衡温度を計算すると、1 kbで400 ℃、10 kbで500 ℃となった。さらに根建らによる不透明鉱物の共存関係7)に基づく分圧推定値は、酸素分圧log fO2=-19.5 ~-19.0となり、これらはいずれも、角閃石のリム部および波状累帯構造がサブソリダス環境における累進的酸化によって形成されたことを示している。
1)Kawakatsu,K. and Yamaguchi, Y. 1987. Geochim.Cosmocim.Acta,51, 535-540.
2)兵庫県立姫路東高等学校科学部地学系研究部. 2023. 日本地質学会第130年学術大会要旨.
3)兵庫県立姫路東高等学校科学部地学系研究部. 2024. 日本地質学会第131年学術大会要旨.
4)Mutch,E.J.F.,Blundy,J.D.,Tattitch,B.C.,Cooper,F.J. and Brooker,R.A. 2016. Contrib.Mineral.Petrol, 171:85.
5)Otten,M.T. 1984. Contrib.Mineral.Petrol,86, 189-199.
6)Whitney,J.A. and Stormer,J.C. 1977. Amer.Mineral.62, 687-691.
7)根建心具・大貫仁・吉田武義・田切美知雄. 1984. 岩鉱.79.,5.,200-213.
キーワード:波状累帯構造、熱水残液、発泡・脱水、サブソリダス環境、累進的酸化

