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[J-P-17]The relation between the paleo-current directions and the paleo-incline directions of the Morozaki group near the Utsumi fault at the southern end of the Chita peninsula, Aichi prefecture, Japan

*Nagoya Senior High School and Nagoya Junior High School1 (1. Nagoya Senior High School and Nagoya Junior High School)
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 研究者生徒氏名:牧野航大(Kouta Makino) ・足立健人(Kento Adachi)・堀越健太郎(Kentaro Horikoshi )・鈴木凜士(Rinto Suzuki)

1. 背景と目的
 師崎層群は18Ma-15Maに(近藤・木村,1987)深海底で堆積したと考えられている地層である.宮川他(2021)は,重力探査の結果から,師崎層群堆積当時に正断層として活動していた内海断層が逆断層としてはたらくことにより知多半島が隆起して山地となったと述べている.2024年6月,南知多町の海岸で地質調査をしていた我々は,砂岩層の底面に見られる荷重痕の変形に興味を持ち,牧野他(2024)において変形荷重痕の存在と変形の系統性からわかる古傾斜の方向について報告した.古傾斜の方向と古流向について,追加調査を行い,考察を加えたのが本発表である.

2. データおよび解析方法
 調査地域は村宮他(2020)のstop 3にあたる.Transverse erosional marksによる古流向の判定は Allen(1971) を参考にした.古傾斜の方向の判定は Moretti(2001) を参考にした.

3. 結果
 変形荷重痕からわかる古傾斜の方向は主に北東方向であるのに対し,transverse erosional marks からわかる古流向は主に東北東方向であり,クロスラミナからわかる古流向は主に東南東への古流向を示した.よって,古傾斜の方向と古流向は一致していなかった.さらに,古流向を層準ごとに見ると,主な古流向について,概ね東向きだが,下位から中位,上位にかけて左回りするように南寄りから北寄りに変化する傾向が見られる(図1).Transverse erosional marks の示す古流向とクロスラミナの示す古流向は同じ層準では概ね一致した(図1).

4. 考察
 古川他(2021)によれば,師崎層群の砂岩層の後背地は調査地域の北北東80km付近に分布する瑞浪層群狭間層である.師崎層群を構成する主な砕屑物は混濁流により,北北東から運ばれてきたあと,内海断層付近の深海に堆積したものと考えられる.混濁流が北北東から流れてきたのに地層の表面の斜面が北東傾斜になっていることから,北東-南西断面で考えると,砕屑物を運搬した混濁流が内海断層の断層崖に突き当たり,慣性により逆斜面をさかのぼって,断層崖と同じ向きの傾斜を持つ地層を堆積させたのではないかと考えた.我々は,モデル実験を行ってこの考察の確信を深めた.調査地域は断層崖から450mから750m程度しか離れていないため,北北東からの混濁流が断層崖に突き当たった場合,堆積する地層の層理面が図3のように北東向き傾斜の斜面となったであろう.伊勢湾断層も内海断層と同様に師崎層群堆積当時に正断層として東側が低くなるような断層活動を行っていたとすれば,混濁流は伊勢湾断層の近傍の水深の深い地域を経由して調査地域に到達したと考えられ,断層の屈曲点付近で断層崖に突き当たっていたと推定できる.このようすを立体的に表したものが図4のモデルである.図4のモデルには混濁流が断層崖に突き当たったあと行き場のなくなった水が,断層崖に沿った方向流れていくようすが描かれている.地層に残される水流の方向が断層崖の延びる方向に沿った方向になりやすいことも,このモデルで説明できる.また,地層が堆積した年代は日本海の拡大期に一致し,東日本は反時計回りに,西日本は時計回りに回転したとされる.内海断層の上盤が西日本と同じ回転をし,下盤が東日本と同じ回転をしたと仮定したならば,調査地域において時間の経過とともに水流の方向が反時計回りに変化したことが説明できる.

5.文献
ALLEN, J. R. L., 1971,Sediment. Geol., 5: 167-385.
古川邦之・谷健一郎・金丸龍夫・星博幸,2021,日本地質学会学術大会講演要旨第128学術大会セッションID: R5-P-9
近藤善教・木村一朗,1987,地質調査所,93 p.
牧野航⼤・堀越健太郎・鈴⽊凜⼠・⾜⽴健⼈,2024, ⽇本地質学会学術大会講演要旨第131年学術⼤会セッションID:J-P-13 
宮川歩夢・阿部朋弥・住田達哉・大坪誠,2021,GSJ 地質ニュース Vol. 10 No. 1.p4-8.
Moretti M, Soria JM, Alfaro P and Walsh N, 2001, Facies, 44: 283-294.
村宮悠介・氏原温・大路樹生・吉田英一,2020,地質学雑誌,126巻7号p.355-363

キーワード:変形荷重痕,Transverse erosional marks,モデル実験,師崎層群,クロスラミナ