Presentation Information
[J-P-22]Spatial and Temporal Distribution of Microplastics in Beach Sand: Developing Teaching Materials to Encourage Personal Engagement with the Microplastics Issue
*Tokyo Gakugei University Senior Senior High School1 (1. Tokyo Gakugei University Senior High School)
研究者生徒氏名:野田百花
1.目的
近年,マイクロプラスチック(MPs)による国際的な海洋汚染が問題となっている。海洋ごみ問題を自分ごととして捉えるため,関東の身近な海岸におけるMPsによる汚染被害の状況を調べることにした。本研究では,高校生でも簡単に実践できるMPs検出法を確立し,MPsの空間分布と時間分布の両方から分析する。さらに,研究成果を本校の地学基礎の授業に取り入れ,生徒のMPs問題への関心向上に役立てる。
2. 方法
2-1. サンプリング方法
空間分布と時間分布を,本研究では図1のように定義する。
2-1-1. 実地調査①
2024年7月11日,千葉県柳島海岸の4地点と,東京都葛西臨海公園の11地点で,海岸の地表から深度20cmまでの砂サンプルを検土杖で採取した。(図2参照)
2-1-2. 実地調査②
2024年11月23日,東京都葛西臨海公園の10地点で,地表から深度30cmまでの砂サンプルを検土杖で採取した。砂サンプルは,1地点につき10cmごとの3サンプルに分類した。(図3参照)
2-1-3. 実地調査③
2025年4月19日,東京都葛西臨海公園の12地点で,2-1-2. と同様に採取した。(図4参照)
2-2. 染色方法
染色の前に砂サンプルに含まれるMPsの分離と精製を行った。比重が2.3g/cm3である飽和炭酸カリウム水溶液を重液に用いて,超音波機で振動を与え,比重分離を行った。大部分の堆積物を取り除き,MPsを含む上澄みを回収した。上澄みを濾過し,濾紙に残ったMPsをナイルレッド染色液で染色した。
2-3. 蛍光観察
暗室で青色LEDを照らしながら,赤色フィルターを通して肉眼で観察した。発光するMPs粒子があるかどうかを目視で確認し,その個数を記録した。
2-4. 教材化
2024年2月26日から3月6日にかけて,本校1年生の3クラスを対象に,計2時間の染色実験と発光観察を体験する授業を行った。授業を受けた生徒に,授業評価アンケートを実施した。
3. 結果
3-1. 実地調査①
MPsの発光の有無を確認したところ,柳島海岸で4地点のうち0地点,葛⻄臨海公園で11地点のうち7地点で発光が確認された。
3-2. 実地調査②
空間分布について,地点Bでは前浜でMPsの個数が一番多かったが,地点A,C,Dでは前浜と後浜の境界上がMPsの個数が最大となった。一方,鉛直方向の分布について,深度0cm~10cmでMPsの個数が最大となった。(図5参照)
3-3. 実地調査③
空間分布について,地点A,Bは前浜と後浜の境界上でMPs量が最大となった。鉛直分布について,地点Aは深度20cm~30cm,地点Bは深度10cm~20cmでMPs量が最大となった。(図6参照)
4. 考察
空間分布について,実地調査②と実地調査③では,ともに前浜と後浜の境界部分でMPsの個数が最大となった。前浜は満潮時に波が押し寄せる範囲であるため,前浜と後浜の境界部分で最も波が弱くなり,運ばれたMPsは停滞しやすく,堆積していたMPsは波にさらわれにくくなると考察できる。
時間分布について,実地調査②では,結果より,深度0cm~10cmでMPsが多く観察された。さらに,海岸部分の0cm~10cmの層ではMPsの個数が分散しているが,深度10cm~30cmの層では個数の変動が少ないことから,表層部分で波の影響を受けたことで,MPsが一時的に移動したと考えられる。実地調査③では,地点A,Bともに深度0cm~10cmよりも深度10cm~30cmで多くのMPsが観察された。表層のMPsは波の影響のみならず,清掃活動など人為的活動にも影響されていることが考えられる。一方で,深度10cm~30cmのMPs量は,実地調査②と比較して増加していることから,MPsの堆積に従って個数が増えると推測できる。
教材化について,87.3%の生徒が関心の変化を感じたと回答したことから啓発効果が高いと言える。一方,発光観察では観察者によって測定値が大きく変動したが,これは発光しているMPsの見分け方に関する指導が不十分であったためと考えられる。
5. 結論
本研究では,観光地である葛西臨海公園において柳島海岸よりも多くのMPsが確認され,人為的要因による影響の大きさが示唆された。空間分布では,前浜と後浜の境界部分にMPsが集中する傾向が見られ,波のエネルギーが弱まる特徴が影響していると考えられる。時間分布では,表層のMPsは波や清掃活動により変動が大きく,深層では堆積が進行している様子が確認された。また,教材化について,啓発効果が確認されたため,発光観察の精度向上と指導方法の改善を図る。
キーワード:マイクロプラスチック,空間分布,時間分布,教材化,ナイルレッド染色,ボーリング調査
1.目的
近年,マイクロプラスチック(MPs)による国際的な海洋汚染が問題となっている。海洋ごみ問題を自分ごととして捉えるため,関東の身近な海岸におけるMPsによる汚染被害の状況を調べることにした。本研究では,高校生でも簡単に実践できるMPs検出法を確立し,MPsの空間分布と時間分布の両方から分析する。さらに,研究成果を本校の地学基礎の授業に取り入れ,生徒のMPs問題への関心向上に役立てる。
2. 方法
2-1. サンプリング方法
空間分布と時間分布を,本研究では図1のように定義する。
2-1-1. 実地調査①
2024年7月11日,千葉県柳島海岸の4地点と,東京都葛西臨海公園の11地点で,海岸の地表から深度20cmまでの砂サンプルを検土杖で採取した。(図2参照)
2-1-2. 実地調査②
2024年11月23日,東京都葛西臨海公園の10地点で,地表から深度30cmまでの砂サンプルを検土杖で採取した。砂サンプルは,1地点につき10cmごとの3サンプルに分類した。(図3参照)
2-1-3. 実地調査③
2025年4月19日,東京都葛西臨海公園の12地点で,2-1-2. と同様に採取した。(図4参照)
2-2. 染色方法
染色の前に砂サンプルに含まれるMPsの分離と精製を行った。比重が2.3g/cm3である飽和炭酸カリウム水溶液を重液に用いて,超音波機で振動を与え,比重分離を行った。大部分の堆積物を取り除き,MPsを含む上澄みを回収した。上澄みを濾過し,濾紙に残ったMPsをナイルレッド染色液で染色した。
2-3. 蛍光観察
暗室で青色LEDを照らしながら,赤色フィルターを通して肉眼で観察した。発光するMPs粒子があるかどうかを目視で確認し,その個数を記録した。
2-4. 教材化
2024年2月26日から3月6日にかけて,本校1年生の3クラスを対象に,計2時間の染色実験と発光観察を体験する授業を行った。授業を受けた生徒に,授業評価アンケートを実施した。
3. 結果
3-1. 実地調査①
MPsの発光の有無を確認したところ,柳島海岸で4地点のうち0地点,葛⻄臨海公園で11地点のうち7地点で発光が確認された。
3-2. 実地調査②
空間分布について,地点Bでは前浜でMPsの個数が一番多かったが,地点A,C,Dでは前浜と後浜の境界上がMPsの個数が最大となった。一方,鉛直方向の分布について,深度0cm~10cmでMPsの個数が最大となった。(図5参照)
3-3. 実地調査③
空間分布について,地点A,Bは前浜と後浜の境界上でMPs量が最大となった。鉛直分布について,地点Aは深度20cm~30cm,地点Bは深度10cm~20cmでMPs量が最大となった。(図6参照)
4. 考察
空間分布について,実地調査②と実地調査③では,ともに前浜と後浜の境界部分でMPsの個数が最大となった。前浜は満潮時に波が押し寄せる範囲であるため,前浜と後浜の境界部分で最も波が弱くなり,運ばれたMPsは停滞しやすく,堆積していたMPsは波にさらわれにくくなると考察できる。
時間分布について,実地調査②では,結果より,深度0cm~10cmでMPsが多く観察された。さらに,海岸部分の0cm~10cmの層ではMPsの個数が分散しているが,深度10cm~30cmの層では個数の変動が少ないことから,表層部分で波の影響を受けたことで,MPsが一時的に移動したと考えられる。実地調査③では,地点A,Bともに深度0cm~10cmよりも深度10cm~30cmで多くのMPsが観察された。表層のMPsは波の影響のみならず,清掃活動など人為的活動にも影響されていることが考えられる。一方で,深度10cm~30cmのMPs量は,実地調査②と比較して増加していることから,MPsの堆積に従って個数が増えると推測できる。
教材化について,87.3%の生徒が関心の変化を感じたと回答したことから啓発効果が高いと言える。一方,発光観察では観察者によって測定値が大きく変動したが,これは発光しているMPsの見分け方に関する指導が不十分であったためと考えられる。
5. 結論
本研究では,観光地である葛西臨海公園において柳島海岸よりも多くのMPsが確認され,人為的要因による影響の大きさが示唆された。空間分布では,前浜と後浜の境界部分にMPsが集中する傾向が見られ,波のエネルギーが弱まる特徴が影響していると考えられる。時間分布では,表層のMPsは波や清掃活動により変動が大きく,深層では堆積が進行している様子が確認された。また,教材化について,啓発効果が確認されたため,発光観察の精度向上と指導方法の改善を図る。
キーワード:マイクロプラスチック,空間分布,時間分布,教材化,ナイルレッド染色,ボーリング調査

