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[J-P-26]Tectonics and History of the subaqueous volcanism from late Miocene to Pliocene in the Oshoro and Momonai district West Casts of the Otaru area in southwest Hokkaido Japan

*Hokkaido Ryukokugakuen Otaru Futaba High School Science Club1 (1. Hokkaido Ryukokugakuen Otaru Futaba High School Science Club)
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 研究者生徒氏名:中村真子,細田美桜

動機と目的
 北海道小樽西部の忍路・桃内の地質は約1000万年前から500万年前の海底火山の噴出物で構成されている。昨年忍路に位置する海底火山の特徴をより深く知るために海底火山の噴出物の種類やそれぞれの特徴を理解し噴火活動史と層序を明らかにすることをテーマとして研究を行った。そこで今研究ではこの噴火活動が地中でどういった力がはたらくことによって引き起こされたものなのかを明らかにしたいと考えたため、噴火活動史に加えその土地の当時のテクトニクスについても調査することにした。
 さらに忍路に位置する海底火山の噴出物である枕状溶岩周辺とハイアロクラスタイトの直径を測定することにより、岩石の大きさに規則性があるのかについても研究を行うことを予定している。

1.はじめに
 忍路では枕状溶岩、ハイアロクラスタイト、フィーダーダイクやダイクなどが見られたうえ、先行研究の岩石の偏光顕微鏡観察の結果より、玄武岩質の噴出物が多く見られたことから、穏やかな噴火が起こったと考えられている。また桃内では軽石や火山弾、凝灰質砂岩や軽石凝灰岩などが見られたうえ、忍路と同様に先行研究の岩石の偏光顕微鏡観察の結果より安山岩質や流紋岩質の噴出物が多く見られたことから水中火砕流による激しい噴火が起こったと考えられている。
 さらに忍路から桃内にかけての海岸沿いの地質を船から観察したところ地層が忍路から桃内にかけて斜め下に傾いていたため、層序は忍路から桃内の順であり噴火の順も同様であると思われる。
 今研究ではこの噴火活動と大地のテクトニクスがどのように関わっているかを調査し、その結果を忍路と桃内で分けて考察した。

2.方法
 フィーダーダイクやダイクはマグマが地中に貫入したものであり、大地に伸長の力が働いて引っ張られて断裂が生じて形成される。忍路ではそのフィーダーダイクやダイクが数か所見られたためクリノメーターによりその方向を計測した。
 一方で桃内では水中火砕流の激しい噴火により忍路のようなフィーダーダイクやダイクなどの大地へ力がかかったことを確認できる形跡を観測することができなかった。そのため桃内の地層から続いている塩谷地域の地層を観察したところ海底火山噴火終息頃に形成されたと思われる凝灰質の地層中に逆断層を見つけることができた。ちなみに逆断層は大地に圧縮の力が働くことによって形成されるものであることを「こんにゃく」を使ったモデル実験を行って確認することが出来た。そこで桃内の近くに位置している約500万年前(新第三紀鮮新世)に形成されたとされている塩谷地域の地層でも忍路同様にクリノメーターで逆断層の方向を計測した。

3.結果
 クリノメーターを用いた計測により、約1000万年前から約660万年前にマグマが貫入して形成されたとされる忍路のフィーダーダイクの方向は兜岬から南東方向に位置する2カ所と国道5号線付近の桃内橋から観測できる2カ所の計4カ所で北西-南東方向に貫入したものであることが判明した。つまりこのことはフィーダーダイクの方向と垂直な直角の方向である北東-南西方向に伸長の力が働いていたと推定できる。
 また、桃内の逆断層も北西-南東方向性をもって形成されていた。すなわち逆断層と垂直な方向である北東-南西方向に圧縮の力がはたらいたと予想推定することができる。

4.考察
 昨年度の研究により北海道南西部小樽西部海岸忍路地域~桃内地域の海底火山の噴火は、約1000万年前~約660万年前に玄武岩質マグマによる枕状溶岩の噴火に始まる穏やかな噴火による海底火山の活動から開始し、次に玄武岩質マグマの水中でのやや激しい噴火による水冷火山弾の噴出と集塊岩の形成、その後安山岩質マグマによるハイアロクラスタイトの噴出・堆積があり、最後に流紋岩質マグマの活動による爆発的な水中火砕流の流出と軽石凝灰岩の堆積があり、凝灰質砂岩の堆積とともに火山活動が終息に向かっていったことが解明できた。小樽南西部に位置する海底火山の噴火は大地の伸長の力が働くことによって断裂が生じ、そこにフィーダーダイクが貫入して忍路地域で穏やかな噴火を引き起こした。そして海底火山噴火活動の終息後の約500万年前に大地に働く力が今度は圧縮の力へと変換したものと考えられる。しかしこれらの大地の力の変換がいかなる要素により引き起こされたものなのかは本研究では解明することができなかった。さらに大地の伸長の力から圧縮の力へと変換した理由についても解明することができなかったため、このことの解明を今後の研究課題としていきたいと思う。

キーワード:海底火山、噴火活動史、テクトニクス、枕状溶岩、ハイアロクラスタイト