Presentation Information
[T3-O-18]Comparison of stone materials used in stone structures from the early modern to modern periods distributed across the Tango Peninsula and lava in Pliocene Kyogamisaki Formation
*Norihito KAWAMURA1, Masato SAKIYAMA1 (1. Graduate School of Regional Resource Management, University of Hyogo)
Keywords:
Tango Peninsula,andesite,stone material,early modern period,modern period
はじめに
京都府京丹後市経ヶ岬には明治時代に近くの灯台を建設した際に採石された跡地があり,岬の先端部に露出する安山岩が近代には石材として活用されたことが知られている.しかし経ヶ岬灯台建設以前にこの石材を用いた石造物は,与謝野町の石仏1例(野田川町,1969)しか知られていなかった.
筆者らは,丹後半島周辺において江戸時代~大正時代の石造物に安山岩を用いた石造物を多数見出した.これらの石材は経ヶ岬付近から採石されたかもしれない.石材と採石地の岩石との対比のためには,双方の岩石学的な比較が直接的な根拠として必要である.そこで筆者らは,石造物の岩石の帯磁率測定を含めた岩石学的調査を行った.本稿ではその石材と経ヶ岬付近の岩石の比較結果を示し,近世~近代における採石地候補を検討する.
経ヶ岬周辺の地質
最近の地質図(中江ほか,2022)によると,経ヶ岬付近の地質は,鮮新統経ヶ岬層から構成される(辻野,2022).岩石は角閃石の斑晶が目立つ紫蘇輝石角閃石安山岩の溶岩を主体とし一部に火砕岩を伴う(山元・星住,1988).溶岩は塊状で,柱状節理や板状節理が発達(山元・星住,1988),色調は灰色~灰白色で,斜長石および有色鉱物の明瞭な斑晶を多量に含む(広川・黒田,1960).また,黒雲母,普通輝石斑晶を伴うものがある(山元・星住,1988).
調査
(1)対象
石造物については地理院地図に掲載の神社に加え,現地移動中に見出した寺社の境内において見出した紀年された石造物を調査対象とした.露頭の岩石は,経ヶ岬の先端付近の灯台用採石地跡および,国道178号線沿いを京丹後市袖志の東部~与謝郡伊根町蒲入間で調査した.
(2)方法
川村・﨑山(2021)と同様の方法で非破壊により,現地で岩石記載ならびに帯磁率測定を行った.測定機器には携帯型帯磁率計(Terraplus 社製 KT-10)を用意し,なるべく平坦な面を選び,20 点ずつ測定し平均値と標準偏差を求めた.
調査結果
(1)石造物
紀年された安山岩の石造物は,燈籠・鳥居・耳石・宝篋印塔ほか石塔であった.岩石記載上の特徴は,塊状緻密で,色調は主に淡灰色,斑状組織で,白色短柱状の斜長石(主に径1~5mm),黒色針状~長柱状の角閃石(主に径1~10mm)が見られるほか,輝石類(径2~4mm)を認めることがある.
(2)露頭
岩石記載上の特徴は,塊状緻密で,色調は主に淡灰色ないし灰色,斑状組織で,白色短柱状の斜長石(主に径1~5mm),黒色針状~長柱状の角閃石(主に径2~7mm)が見られる.
課題
石造物石材と露頭の岩石について岩石記載上の特徴はおおむね共通しているが,角閃石の長径の最大値が両者で異なる.また,径数mmの輝石類を含む岩石は露頭からはまだ見出していない.石造物の石材は経ヶ岬層の安山岩である可能性は高いと思われるが,採石地を確定するまでには至っていない.露頭の調査を追加することが必要である.
謝辞
本研究費用の一部にはJSPS科研費(基盤研究(B)21H00621,研究代表者 先山 徹)を使用した.お世話になった関係各位に謝意を表する.
文献
広川 治・黒田和男(1960)5萬分の1地質図幅説明書 宮津.地質調査所,23+6p.
川村教一・﨑山正人(2021)兵庫県養父市関宮町及び大屋町とその周辺に分布する近世・近代の蛇紋岩石造物の石材産地と用途の変遷, 人と自然, 31, 41–54.
中江 訓・辻野 匠・小松原琢・高木哲一・宮川歩夢(2022)20万分の1地質図幅「宮津」(第2版).産総研地質調査総合センター.
野田川町(1969)野田川町誌.野田川町,976p.国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/9572346
辻野 匠(2022)3,7 山陰—北陸区(新第三系).20万分の1地質図幅「宮津」(第2版),産総研地質調査総合センター.
山元孝広・星住英夫(1988)丹後半島新第三系の層序と中期中新世の火山活動.地質学雑誌、94 (10), 769-781.
京都府京丹後市経ヶ岬には明治時代に近くの灯台を建設した際に採石された跡地があり,岬の先端部に露出する安山岩が近代には石材として活用されたことが知られている.しかし経ヶ岬灯台建設以前にこの石材を用いた石造物は,与謝野町の石仏1例(野田川町,1969)しか知られていなかった.
筆者らは,丹後半島周辺において江戸時代~大正時代の石造物に安山岩を用いた石造物を多数見出した.これらの石材は経ヶ岬付近から採石されたかもしれない.石材と採石地の岩石との対比のためには,双方の岩石学的な比較が直接的な根拠として必要である.そこで筆者らは,石造物の岩石の帯磁率測定を含めた岩石学的調査を行った.本稿ではその石材と経ヶ岬付近の岩石の比較結果を示し,近世~近代における採石地候補を検討する.
経ヶ岬周辺の地質
最近の地質図(中江ほか,2022)によると,経ヶ岬付近の地質は,鮮新統経ヶ岬層から構成される(辻野,2022).岩石は角閃石の斑晶が目立つ紫蘇輝石角閃石安山岩の溶岩を主体とし一部に火砕岩を伴う(山元・星住,1988).溶岩は塊状で,柱状節理や板状節理が発達(山元・星住,1988),色調は灰色~灰白色で,斜長石および有色鉱物の明瞭な斑晶を多量に含む(広川・黒田,1960).また,黒雲母,普通輝石斑晶を伴うものがある(山元・星住,1988).
調査
(1)対象
石造物については地理院地図に掲載の神社に加え,現地移動中に見出した寺社の境内において見出した紀年された石造物を調査対象とした.露頭の岩石は,経ヶ岬の先端付近の灯台用採石地跡および,国道178号線沿いを京丹後市袖志の東部~与謝郡伊根町蒲入間で調査した.
(2)方法
川村・﨑山(2021)と同様の方法で非破壊により,現地で岩石記載ならびに帯磁率測定を行った.測定機器には携帯型帯磁率計(Terraplus 社製 KT-10)を用意し,なるべく平坦な面を選び,20 点ずつ測定し平均値と標準偏差を求めた.
調査結果
(1)石造物
紀年された安山岩の石造物は,燈籠・鳥居・耳石・宝篋印塔ほか石塔であった.岩石記載上の特徴は,塊状緻密で,色調は主に淡灰色,斑状組織で,白色短柱状の斜長石(主に径1~5mm),黒色針状~長柱状の角閃石(主に径1~10mm)が見られるほか,輝石類(径2~4mm)を認めることがある.
(2)露頭
岩石記載上の特徴は,塊状緻密で,色調は主に淡灰色ないし灰色,斑状組織で,白色短柱状の斜長石(主に径1~5mm),黒色針状~長柱状の角閃石(主に径2~7mm)が見られる.
課題
石造物石材と露頭の岩石について岩石記載上の特徴はおおむね共通しているが,角閃石の長径の最大値が両者で異なる.また,径数mmの輝石類を含む岩石は露頭からはまだ見出していない.石造物の石材は経ヶ岬層の安山岩である可能性は高いと思われるが,採石地を確定するまでには至っていない.露頭の調査を追加することが必要である.
謝辞
本研究費用の一部にはJSPS科研費(基盤研究(B)21H00621,研究代表者 先山 徹)を使用した.お世話になった関係各位に謝意を表する.
文献
広川 治・黒田和男(1960)5萬分の1地質図幅説明書 宮津.地質調査所,23+6p.
川村教一・﨑山正人(2021)兵庫県養父市関宮町及び大屋町とその周辺に分布する近世・近代の蛇紋岩石造物の石材産地と用途の変遷, 人と自然, 31, 41–54.
中江 訓・辻野 匠・小松原琢・高木哲一・宮川歩夢(2022)20万分の1地質図幅「宮津」(第2版).産総研地質調査総合センター.
野田川町(1969)野田川町誌.野田川町,976p.国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/9572346
辻野 匠(2022)3,7 山陰—北陸区(新第三系).20万分の1地質図幅「宮津」(第2版),産総研地質調査総合センター.
山元孝広・星住英夫(1988)丹後半島新第三系の層序と中期中新世の火山活動.地質学雑誌、94 (10), 769-781.
