Presentation Information
[T10-O-5]Tectonics of seamount subduction revealed by deformation structures in a forearc basin: a case study of the Neogene Miyazaki Group.
*Takeru YOSHIMOTO1, Yuzuru YAMAMOTO1 (1. Kobe University)
Keywords:
Seamount subduction,Forearc basin,Kyushu–Palau Ridge,Stress tensor inversion,Miyazaki Group
本研究は、新第三系宮崎層群における小断層解析から、沈み込む九州―パラオ海嶺の直上において海山列の沈み込み方向と平行する局所的な水平圧縮応力場をみいだした。また、堆積岩の鉛直有効応力とポアソン比、断層運動時の応力比から、局所的な主応力方向の変換に必要な水平応力の増加量を計算したので、報告する。
新第三系宮崎層群は、後期中新世―鮮新世の前弧海盆堆積物で構成される。砂泥互層の岩相とその固結度が側方に変化するため、宮崎層群は、固結度の高い砂岩優勢の南部(青島相)と、固結度の低い泥岩優勢の北部(宮崎相・妻相)に区分される(Shuto, 1961)。南北ブロックの境界は幅数百mの断層帯で隔てられ、南部は北部より約2000 m大きく隆起したと指摘されている(Yoshimoto et al., 2023)。この地域では、約500万年前以降から現在にかけて九州―パラオ海嶺が沈み込んでいる(Underwood, 2018)。宮崎層群の南北部境界と海山の沈み込み位置が一致することから、南部の局所的な隆起は、海山沈み込みと関連していると考えられている。したがって、宮崎層群、とくに南北ブロック境界付近の変形構造は、海山沈み込みに起因する変形を記録している可能性が高い。そこで本研究は、宮崎層群において小断層を用いた古応力解析を実施し、海山沈み込みが前弧海盆に与えた力学的影響を評価した。
宮崎層群南北部ともに、N–S、NE–SW、NW–SE方向の正断層が卓越している。一方で、南北部境界付近では左横ずれおよび斜めすべり正断層が優位に発達している。Hough変換による応力逆解法(Yamaji et al., 2006)を用いて、300条の断層スリップデータから古応力方向を推定した結果、二つの主要な独立した古応力状態が確認された。
第一の応力状態(応力α)は宮崎層群全域にわたって観察され、鉛直に近い最大主応力軸(σ1)とNW–SE方向の最小主応力軸(σ3)をもち、応力比(φ)は約0.2(σ1 > σ2 ≈ σ3)であった。この応力場は、九州全域で報告されている後期中新世―鮮新世のNW–SE引張応力と整合的である。一方、第二の応力状態(応力β)は南北部境界付近で卓越し、ほぼ鉛直かつWNW–ESE方向に大円分布するσ1およびNNE–SSW方向のσ3を示し、応力比は約0.7(σ1 ≈ σ2 > σ3)と高かった。この応力状態は、最大水平応力軸がNE–SWからWNW–ESE方向に転換した結果と解釈される。海溝軸と直交する引張応力(応力α)は、沖縄トラフの背弧リフティングおよび九州南部に沈み込むスラブの後退によって引き起こされたと考えられている(Tokushige and Fabbri, 1996)。一方で、海溝軸と直交する水平圧縮応力(応力β)は、九州―パラオ海嶺に沿った海山沈み込みに起因する局所的な圧縮応力場である可能性が高い。
本研究では、古応力解析で得られた応力比、圧密試験から得られた泥岩の鉛直有効応力(σ1 = 50 MPa)、堆積岩のポアソン比(ν ≈ 0.3)を用いて、断層が運動した際の主応力の絶対値を計算した。その結果、応力αではNW–SE方向の最小主応力(σ3 = 14.3 MPa)だったものが、応力βで中間主応力(σ2 = 41.4 MPa)に変化するためには、埋没深度5 kmにおいて27 MPaの水平圧縮応力の付加が必要であることが示された。このことは、海山の沈み込みが前弧海盆においても局所的な圧縮および横ずれ断層活動を引き起こすことを強く示唆する。
Reference
Shuto, T., 1961. Palaeontological Study of the Miyazaki Group: A General Account of Faunas. Kyushu University, Series D, Geology, 2, 73-206. https://doi.org/10.5109/1526109
Tokushige, H., Fabbri, O., 1996. Mesofaults and associated stress field in the Late Miocene to Pliocene forearc deposits of the Miyazaki district, southeast Kyushu Japan. Journal of the Geological Society of Japan, 1, 622-634. https://doi.org/10.5575/geosoc.102.622
Underwood, M., B., 2018. The origin of strata within the inner accretionary prism of Nankai Trough: Evidence from clay mineral assemblages along the NanTroSEIZE transect. Island Arc, 27: e12252. https://doi.org/10.1111/iar.12252
Yamaji, A., Otsubo, M., Sato, K., 2006. Paleostress analysis using the Hough transform for separating stresses from heterogeneous fault-slip data. Journal of Structural Geology 28, 980e990. https://doi.org/10.1016/j.jsg.2006.03.016
Yoshimoto, T., Chiyonobu, S., Omori, Y., Zhang, F., Yamamoto, Y., 2023. Spatial variations in the consolidation of sediments in the Neogene Miyazaki forearc basin, Southwest Japan. Tectonophysics, 862, 229922. https://doi.org/10.1016/j.tecto.2023.229922
新第三系宮崎層群は、後期中新世―鮮新世の前弧海盆堆積物で構成される。砂泥互層の岩相とその固結度が側方に変化するため、宮崎層群は、固結度の高い砂岩優勢の南部(青島相)と、固結度の低い泥岩優勢の北部(宮崎相・妻相)に区分される(Shuto, 1961)。南北ブロックの境界は幅数百mの断層帯で隔てられ、南部は北部より約2000 m大きく隆起したと指摘されている(Yoshimoto et al., 2023)。この地域では、約500万年前以降から現在にかけて九州―パラオ海嶺が沈み込んでいる(Underwood, 2018)。宮崎層群の南北部境界と海山の沈み込み位置が一致することから、南部の局所的な隆起は、海山沈み込みと関連していると考えられている。したがって、宮崎層群、とくに南北ブロック境界付近の変形構造は、海山沈み込みに起因する変形を記録している可能性が高い。そこで本研究は、宮崎層群において小断層を用いた古応力解析を実施し、海山沈み込みが前弧海盆に与えた力学的影響を評価した。
宮崎層群南北部ともに、N–S、NE–SW、NW–SE方向の正断層が卓越している。一方で、南北部境界付近では左横ずれおよび斜めすべり正断層が優位に発達している。Hough変換による応力逆解法(Yamaji et al., 2006)を用いて、300条の断層スリップデータから古応力方向を推定した結果、二つの主要な独立した古応力状態が確認された。
第一の応力状態(応力α)は宮崎層群全域にわたって観察され、鉛直に近い最大主応力軸(σ1)とNW–SE方向の最小主応力軸(σ3)をもち、応力比(φ)は約0.2(σ1 > σ2 ≈ σ3)であった。この応力場は、九州全域で報告されている後期中新世―鮮新世のNW–SE引張応力と整合的である。一方、第二の応力状態(応力β)は南北部境界付近で卓越し、ほぼ鉛直かつWNW–ESE方向に大円分布するσ1およびNNE–SSW方向のσ3を示し、応力比は約0.7(σ1 ≈ σ2 > σ3)と高かった。この応力状態は、最大水平応力軸がNE–SWからWNW–ESE方向に転換した結果と解釈される。海溝軸と直交する引張応力(応力α)は、沖縄トラフの背弧リフティングおよび九州南部に沈み込むスラブの後退によって引き起こされたと考えられている(Tokushige and Fabbri, 1996)。一方で、海溝軸と直交する水平圧縮応力(応力β)は、九州―パラオ海嶺に沿った海山沈み込みに起因する局所的な圧縮応力場である可能性が高い。
本研究では、古応力解析で得られた応力比、圧密試験から得られた泥岩の鉛直有効応力(σ1 = 50 MPa)、堆積岩のポアソン比(ν ≈ 0.3)を用いて、断層が運動した際の主応力の絶対値を計算した。その結果、応力αではNW–SE方向の最小主応力(σ3 = 14.3 MPa)だったものが、応力βで中間主応力(σ2 = 41.4 MPa)に変化するためには、埋没深度5 kmにおいて27 MPaの水平圧縮応力の付加が必要であることが示された。このことは、海山の沈み込みが前弧海盆においても局所的な圧縮および横ずれ断層活動を引き起こすことを強く示唆する。
Reference
Shuto, T., 1961. Palaeontological Study of the Miyazaki Group: A General Account of Faunas. Kyushu University, Series D, Geology, 2, 73-206. https://doi.org/10.5109/1526109
Tokushige, H., Fabbri, O., 1996. Mesofaults and associated stress field in the Late Miocene to Pliocene forearc deposits of the Miyazaki district, southeast Kyushu Japan. Journal of the Geological Society of Japan, 1, 622-634. https://doi.org/10.5575/geosoc.102.622
Underwood, M., B., 2018. The origin of strata within the inner accretionary prism of Nankai Trough: Evidence from clay mineral assemblages along the NanTroSEIZE transect. Island Arc, 27: e12252. https://doi.org/10.1111/iar.12252
Yamaji, A., Otsubo, M., Sato, K., 2006. Paleostress analysis using the Hough transform for separating stresses from heterogeneous fault-slip data. Journal of Structural Geology 28, 980e990. https://doi.org/10.1016/j.jsg.2006.03.016
Yoshimoto, T., Chiyonobu, S., Omori, Y., Zhang, F., Yamamoto, Y., 2023. Spatial variations in the consolidation of sediments in the Neogene Miyazaki forearc basin, Southwest Japan. Tectonophysics, 862, 229922. https://doi.org/10.1016/j.tecto.2023.229922
