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[T10-O-8]Differences in mean activity intervals between two types of fracture zones in the Futagawa Fault Zone
*Tatsuro YOSHIMURA1 (1. Daiichi Fukken Co.,Ltd.)
Keywords:
Futagawa Fault Zone,fault-bend fold,mean activity intervals
断層は,広域応力場に支配されて,系統性をもつ断層系をともなって断裂帯を形成することが多い。地層中には衝上断層や低角正断層の活動によって,その上盤側の地層中に断層運動に起因する褶曲が形成されることがある。このような断層運動と密接に関連して形成される褶曲は,断層関連褶曲と称される(天野・狩野,2009)。日本海東縁海域では,2007年能登半島地震や2024年能登半島地震のような沿岸域でも地震が発生しており,海底活断層が海底地形や地質構造の特徴をもとに認定されてきた。日本海東縁・庄内沖の反射断面では地下浅部で断層構造やこれに伴う背斜構造的な変形構造が認められている(森木ほか,2024)。九州北西部に分布する佐々川衝上断層では,断層関連褶曲の1つである「断層折れ曲がり褶曲」が観られる(沢田,1958)。断層折れ曲がり褶曲部において,γ線探査を用いて2種類の断裂帯を検出した。中村(1989)は,プレートの沈み込む境界を「物質境界」,プレート間のずれが実際に生じるところを「力学境界」と称した。この観点から断層構造が「物質境界」,変形構造が「力学境界」に対応すると考え,本稿では,佐々川衝上断層近傍の断裂SB(断裂幅:150m)を「物質境界断裂帯」,変形構造に該当する断裂SA(断裂幅:425m)を「力学境界断裂帯」と称する。「力学境界断裂帯」の断裂幅は,「物質境界断裂帯」の断裂幅の約3倍である。曲げ褶曲構造(木村ほか,1996)を,佐々川衝上断層で見られる事象と対応させた場合,「物質境界断裂帯(断裂SB)」は,圧縮応力によって形成され,「力学境界断裂帯(断裂SA)」は引張り応力によって形成される。佐々川衝上断層において認められた2種類の断裂帯は,活断層分布地(警護断層・宇美断層・由布院断層・安田断層・出ノ口断層・布田川断層)でも認められる。「力学境界断裂幅」(DW)と,「物質境界断裂幅」(MW)の対応を図-1に示した。図-1より,「力学境界断裂幅(DW)」と「物質境界断裂幅(MW)」には,【DW≒3・MW ①式】の関係が認められる。断裂幅は,地層の年代が古いほど広くなる傾向から累積性が推定され,断裂幅[FW(m)]と地層が断層変位を受けた時間[T(万年)]には【FW=a・T a:平均断裂幅拡張速度(m/万年)②式】の関係が認められる(吉村,2006)。物質境界断裂帯と力学境界断裂帯は,同じ期間に応力を受けているため①式と②式から,力学境界断裂幅(DW)は物質境界断裂幅(MW)より約3倍の平均断裂幅拡張速度で累積すると考えられる。この断裂幅拡張速度の違いによって,「力学境界断裂」の平均活動間隔の約3倍が「物質境界断裂」の平均活動間隔になると推定される。布田川断層の平均活動間隔は,8,100~26,000年とされていた(地震推進本部,2013)。岩佐ほか(2022)の布田川断層帯トレンチ調査では,平均活動間隔は2,400~3,800年と考えられている。熊本地震後の平均活動間隔(2,400~3,800年)の約3倍が,熊本地震前の平均活動間隔(8,100~26,000年)に相当する。このことは,熊本地震前は「物質境界断裂」を調査し,熊本地震後は「力学境界断裂」を調査した可能性があり,横ずれ断層においても「断層関連褶曲」が生じていると推定される。この事象は,警固断層においても認められる。 文献 1)天野一男・狩野健一(2009):フィールドジオロジー6 構造地質学,共立出版株式会社,177p.2) 岩佐佳哉・熊原康博・後藤秀昭・石村大輔・細矢卓志(2022):熊本県西原村小森におけるトレンチ掘削調査に基づく布田川断層帯の活動履歴,活断層研究,56号,47-58. 3) 地震調査研究推進本部地震調査委員会,2013,布田川断層帯・日奈久断層帯の評価(一部改訂).4) 木村敏雄・佐藤 正・徳山 明(1996):小地質構造,鉱山地質,16(78),192-203.5) 森木ひかる・中田 高・後藤秀昭・杉戸信彦・徳山英一・隈本 崇(2025):変動地形学的手法による海底活断層の認定と意義,活断層研究,61号,17-42. 5) 中村一明(1989):火山とプレートテクトニクス,東京出版会,323p.6) 沢田秀穂(1958):日本炭田図Ⅱ 北松炭田地質図ならびに説明書,地質調査所.7)吉村辰朗(2006):破砕幅の成長過程から推定される活断層の発生数と発生時期-破砕幅の累積性とべき乗則-,活断層研究,23,7-14. キーワード:布田川断層帯,断層関連褶曲,物質境界断裂,力学境界断裂,平均活動間隔

