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[T8-O-4]Relationship between cooling process of granitic rock body and formation of pathway of mass transfer

*Eiji SASAO1, Takashi YUGUCHI2 (1. Japan Atomic Energy Agency, 2. Kumamoto University)
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Keywords:

grannite,mass transfer,cooling process

 花崗岩などの結晶質岩中の割れ目は地下水や物質の移行経路として機能する。日本学術会議(2014)は「地下水の通路である割れ目の少ない岩盤を処分場候補とすることが望まし」く,「地質履歴から割れ目の少ない領域を探す論理立てを確立することが必須」であるとした。
報告者は,中部日本に分布する土岐花崗岩体で花崗岩の構成鉱物の変質に伴って空隙が形成され,空隙には物質移行経路として機能するものがあることを明らかにした(Yuguchi et al.,2024)。土岐花崗岩体では,冷却速度と割れ目頻度との間に相関が認められているが(Yuguchi et al.,2019a),鉱物の変質と割れ目頻度との間にも相関が認めれており(Yuguchi et.,2021b,2022b),冷却速度が割れ目頻度だけではなく変質も規制している可能性がある。本報告では,花崗岩冷却過程と物質移行経路(割れ目および鉱物中の空隙)の形成との関係を述べる。
土岐花崗岩では,ブロック試料の拡散試験の結果,斜長石中心部に空隙があり,トレーサーの濃集が確認された(石橋ほか,2016)。斜長石は一般に中央部から縁辺部にアルバイト成分が増加する累帯構造を示すこと,アノーサイト成分の多い斜長石ほど溶解しやすいことが実験的に確認されていることや空隙が変質領域において優位に分布する岩石学的特徴から,斜長石中心部の空隙は花崗岩冷却過程において広範囲で生じる熱水による初生変質によって形成されたと考えられた(石橋ほか,2016;Yuguchi et al.,2019b)。
変質については,緑泥石温度計や変質鉱物のカリ長石の年代測定(Yuguchi et al.,2015,2021a),近傍のDH-2号孔試料の冷却曲線に基づくと,花崗岩体が水の臨界温度(374℃)にまで冷却された直後から黒雲母の緑泥石化が生じ,続いて斜長石の変質(空隙とイライト等の形成)が生じたと解釈できる。さらにはいくつかのステージで方解石の沈殿などが生じている(他にも角閃石やカリ長石の緑泥石化も認められるが,これらと黒雲母-斜長石の変質との関連はわからない)。
さらに,Yuguchi et al.(2021b)は,空隙の面積は黒雲母に対する緑泥石化の割合に相関すること,割れ目頻度と空隙の面積および緑泥石化の割合には正の相関が認められることを明らかにした。同様の関係は斜長石でも認められる(Yuguchi et al.,2022b)。物質移行の観点では,変質の強い場所ほど拡散に寄与する空隙が多く,物質の移行を遅延する機能が大きい。
Yuguchi et al.(2019a)によれば,800~300℃の冷却速度と割れ目発生頻度の間に相関があり,冷却速度が遅いと割れ目の発生頻度が高く,冷却時間が速いと割れ目の発生頻度が低い。冷却時間と割れ目頻度になぜ相関があるのかはわかっていないが,冷却速度が遅い領域は岩体中央部にあり,高温状態が比較的長期間,維持される領域にあり,熱水が高温状態を保持し得るため,鉱物の溶解および熱水中の元素移動が活発に生じ,鉱物の変質が促進された一方で,冷却速度が速い領域では熱水が比較的短時間で冷却されるため,鉱物の変質も弱かったと考えられる。
本報告では,岩体の冷却履歴を把握することによって割れ目や鉱物中の空隙といった物質移行経路の多寡を概括的に把握できることを示した。ただし,この結論は土岐花崗岩体のみの結果から導かれたものであり,他岩体での研究成果の蓄積が必要である。
【謝辞】本研究の一部には,経済産業省資源エネルギー庁から受託した「令和6・7年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業 (JPJ007597)(核種移行総合評価技術開発)」の成果を使用した。

引用文献
石橋ほか(2016)原子力バックエンド研究,23,121–129.
日本学術会議(2014)高レベル放射性廃棄物の暫定保管に関する技術的検討.
Yuguchi et al.(2015)Am. Mineral.,100,1134–1152.
Yuguchi et al.(2019a)J. Asian Earth Sci.,169,47–66.
Yuguchi et al.(2019b)Am. Mineral.,104,536–556.
Yuguchi et al.(2021a)Heliyon,7,e06750_1–e06750_9.
Yuguchi et al.(2021b)PLOS ONE,16,e0251198_1–e0251198_17.
Yuguchi et al.(2022b)J. Mineral. Petrol. Sci.,117,220415_1–220415_12.
Yuguchi et al.(2024)Heliyon,10,e37417_1–e37417_17.