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[T8-O-7]Current status on development of dating techniques at the Toki Geochronological Research Laboratory, Tono Geoscience Center, JAEA

*Takahiro HANAMURO1 (1. Japan Atomic Energy Agency)
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Keywords:

Geological Disposal of HLW,Geochronology

 日本原子力研究開発機構東濃地科学センター土岐地球年代学研究所では、高レベル放射性廃棄物等の地層処分技術に関する研究開発の一環として地質環境の長期安定性に関する研究を実施している。この中で、地質試料を対象とした年代測定技術の開発を進めており、加速器質量分析装置による年代測定など、各種の年代測定技術を整備してきた(たとえば、丹羽ほか,2024)。
地層処分では、将来数十万年程度にわたって地質環境を予測・評価することが求められることから、過去数百万年程度から現在までの地質環境の変化の傾向を将来に外挿することで予測する手法が考えられる。このため、過去数百万年程度までの年代を精度良く求める手法の整備が求められている。年代測定には様々な手法があるが、その原理に起因して対象となる試料や測定可能な年代幅に制約があることから、いくつかの手法を組み合わせて、得られるデータの信頼性を向上させる取り組みを進めるとともに、地層処分で必要とされる数百万年~数万年前の年代測定を行うための手法の適用性確認や高度化に重点的に取り組んできた。
これまで整備してきた年代測定技術については、地層処分事業において必要とされる断層の活動性評価手法や隆起・侵食速度の推定手法としての活用が期待されている。土壌や火砕流堆積物中の植物片のC-14年代測定による堆積年代の推定(たとえば、廣内ほか,2012)や、火山岩や断層破砕帯に含まれる粘土鉱物のK-Ar年代測定による生成年代の推定(たとえば、Zwingmann et al., 2024)など、試料の年代から断層活動や火成活動の時期を特定することができる。これにより、概要調査において、対象地域に分布する火山岩の噴出時期や断層の活動性を評価するためのデータを提供することができる。また、年代測定手法の特徴(ある温度条件において年代値がリセット・スタートする)を利用して、複数の年代測定手法の組み合わせにより得られる岩石試料の熱履歴の情報から岩石試料の隆起・削剥史を復元して隆起・侵食速度を推定する手法の開発(たとえば、梶田ほか,2020)も進めている。この手法により、対象地域の隆起・侵食速度を評価するためのデータを提供することができると考えられる。なお、この手法で実施しているフィッション・トラック年代測定については、国内初となるフィッション・トラックをカウントするための自動計測装置を導入して多数の分析を迅速に実施する環境を整備している(たとえば、末岡ほか,2020)。その他、海成段丘の対比などに適用可能な、長石を対象としたOSL年代測定(たとえば、Ogata et al., 2024)に係る技術開発なども進めている。
また、地層処分の分野にとどまらず、原子力施設の立地に係る活断層評価へも貢献してきている(たとえば、石丸ほか,2013)。さらに、加速器質量分析装置の技術開発において得られた知見をもとに超小型AMSの開発(たとえば、Jinno et al., 2024)を進めており、実用化されれば、C-14年代測定が安価に実施できるようになるなど、関連する分野への大きな波及効果が期待できる。本講演では、東濃地科学センター土岐地球年代学研究所における年代測定技術開発の現状とそれらの適用事例について報告する。

【謝辞】
 本報告には経済産業省資源エネルギー庁委託事業「令和5~7年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に
 関する技術開発事業(JPJ007597)(地質環境長期安定性総合評価技術開発)」の成果の一部を使用
 している。

【参考文献】
丹羽ほか(2024):JAEA-Research 2024-013, 65p.
廣内ほか(2012):日本活断層学会2012年度秋季学術大会講演予稿集, pp.52-53.
Zwingmann, et al. (2024): Earth, Planets and Space, 76, pp.27_1-27_16.
梶田ほか(2020):フィッション・トラックニュースレター, 33, pp.28-30.
石丸ほか(2013):日本地質学会第120年学術大会講演要旨,R24-O-8.
末岡ほか(2020):フィッション・トラックニュースレター, 33, pp.15-18.
Ogata et al. (2024): Earth, Planets and Space, 76, pp.123_1 - 123_11.
Jinno et al. (2024): Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section B: Beam Interactions
 with Materials and Atoms, 165545.