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[T4-O-5]A Rotary Hydrothermal Friction Apparatus for Exploring Dynamic Faulting Processes in Fault Zones under Seismogenic Conditions

*Takehiro Hirose1, Hanaya Okuda1, Wataru Tanikawa1, Yohei Hamada1, Keishi Okazaki2, John D Bedford3 (1. JAMSTEC, 2. Hiroshima Univ., 3. Univ. Liverpool)
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Keywords:

Earthquake,Fault,Hydrothermal,Friction

 大地震の発生時には、断層は秒速数メートルの高速で大きなすべりを起こす。この高速すべりに伴い、断層面では摩擦熱によって熔融や脱水反応などの熱活性反応が瞬時に励起され、断層の摩擦強度が劇的に低下することが明らかになってきた(e.g., Di Toro et al., 2011)。しかし、これらの知見の多くは常温・常圧下での高速摩擦実験に基づいており、震源域の高温・高圧かつ熱水を伴う環境下での地震性高速すべりの実態解明は、いまだ十分に進んでいない。この課題を克服するため、我々は過去10年間にわたり、熱水環境下での低〜高速摩擦試験機の開発に取り組んできた。本講演では、実用化の目途が立った新しい回転式熱水摩擦試験機の概要ついて報告する。

本試験機では、円筒状に成形した岩石試料(外径32 mm、内径22 mm)の端面を重ね合わせる、あるいは円筒状のメタル製ホルダーに粒状試料(外径34 mm、内径22 mm)を充填することで、模擬断層をつくる。片側の試料を固定し、垂直荷重(最大100 MPa)を載荷した状態で、もう片側の試料を最大等価変位速度2.0 m/sで回転させることにより、高速・大変位すべりを再現している。これらの試料アセンブリは水で満たされた圧力容器(最大水圧 120 MPa)の中に封入され、内熱式シーズヒーターにより周囲を加熱することで、現在450℃(設計温度600℃)の熱水環境下での摩擦実験が可能となっている。

本試験機を用いた予察的な実験では、斑レイ岩および石英ガウジを対象に高速すべり実験(すべり速度1.4 m/s、垂直応力~30 MPa、水圧~20 MPa、温度20〜350℃、変位~9 m)を実施した。斑レイ岩を用いた実験では、(1) 常温での結果と同様に、300℃の熱水環境下でも摩擦係数が0.8から0.2へと大きく低下する顕著なすべり軟化挙動が確認された。また、(2) すべり軟化に要するせん断エネルギーが温度上昇とともに減少する傾向も明らかとなり、震源域のような高温条件下では破壊の伝播がより容易になる可能性が示唆された。さらに、石英ガウジを用いた実験では、300℃以上の熱水環境下で石英粒の顕著な細粒化および溶解現象が観察された。摩擦発熱によって断層帯内の水が超臨界状態に達していることから、高速すべりに伴い動的な水−岩石反応が劇的に進行した可能性が高い。

本講演では、これらの予察的な実験結果を紹介するとともに、高温・高圧・熱水環境における地震性高速すべり、およびそれを支配する物理化学プロセスの理解に向けた今後の展望について議論する。

Di Toro et al., 2011, Fault lubrication during earthquakes, Nature, 471, 494-498.