Presentation Information
[T4-O-6]Experimental reproduction of fault-valve behavior and mineral vein formation driven by fluid pressure drop at the temperature of slow-to-fast seismogenic zones
*Ryoto TODA1, Masaoki UNO2, Atsushi OKAMOTO1 (1. Graduate School of Environmental Studies, TOHOKU University, 2. Graduate School of Science, The University of Tokyo)
Keywords:
Flow-through experiment,Fluid pressure drop,Silica vein
沈み込み帯の地震発生帯では、流体と岩石の相互作用により鉱物脈が形成される。断層バルブモデル[1]では、鉱物沈殿によるき裂のシーリング、鉱物脈の形成は地殻の透水性を支配し、地震周期を決定づける一因とされる。鉱物脈形成の駆動力として流体圧降下が提案され[2]、実験的にもシリカ沈殿が示されている[3]一方、過飽和シリカ溶液の圧入に伴うシリカ鉱物の成長も実験的に示されている[4]。しかしながら、室内実験で岩石内に鉱物脈を形成し閉塞させた例はなく、そのシーリングの時間スケールや透水性の変化幅は不定である。そこで本研究では、Slow地震発生帯からFast地震発生帯に相当する200–400℃で、流体圧降下によりシリカを岩石内に沈殿させ、鉱物脈を形成するフロースルー実験を行った。
本実験には庵治花崗岩のコア試料(直径6mm、高さ12mm)を用いた。600℃から急冷し空隙率1.1–2.8%の試料を作成し、地震発生深度に相当する高封圧(Pc)(=100 MPa)下で密封した。シリンジポンプで蒸留水を定圧注入し、上流50 MPa・下流大気圧で50 MPaの流体圧勾配を与えた。したがって液相流体が気相に相変化し、シリカ溶解度が急減する。実験条件は、200℃、300℃、400℃、Pcが100 MPa、上流圧(Pup)が50 MPa、下流圧(Pdown)が0.1 MPaとした。また対照実験として、200℃ではPdown=8 MPa、300℃ではPc=75 MPaまたは Pdown=20 MPaとした。実験中に試料の浸透率の経時変化を測定し、実験後、観察・分析した。
まず200℃実験では、両条件において上流で石英と長石が主に溶解した。Pdown = 8 MPaでは、シリカの沈殿は確認されず、Pdown = 0.1 MPaでは下流端面に網目状のアモルファスシリカ(AS)が沈殿し、浸透率は両条件で1-5×10-19 m2と一定だった。次に300℃では、同様に上流で石英と長石が主に溶解した。Pdown = 20 MPaではシリカの沈殿はなく、Pdown = 0.1 MPaでは下流端面に煙突状ASが局所的に沈殿した。Pc = 100 MPa、Pc = 75 MPaでは、浸透率は10-18-10-19から10-22-10-20 m2に低下した。さらに、Pc =100 MPa、Pdown = 0.1 MPaの実験では、下流端面付近の試料内部に流体流れ方向に垂直なAS脈が生成した。400℃では、下流側のSUS管内に析出物が観察された。16-17日目に、浸透率は10-21 m2から10-23 m2に低下し、その約4時間後に浸透率は10-21-10-20 m2に上昇した。さらにその1時間後には10-22 m2に再び低下し、最終的に10-21 m2でほぼ一定となった。
300℃で高Pc下では、AS脈は約10-20 µmの幅があり、両端が煙突状ASに接続していた。この実験の約2回の浸透率の増減は、次のAS脈形成プロセスに対応している可能性がある。上流で溶解後、流体圧降下で気相変化し、下流端面に煙突状沈殿物が形成され浸透率が低下した。その結果、下流端面付近の流体圧が上昇し、大きな差応力により流路に垂直なき裂が生じ、浸透率が再び上昇した。この繰り返しで浸透率の増減が生じた。
地震発生帯の条件に相当する100 MPa、300℃での流体圧降下により、断層バルブモデルの一部を再現できた。この実験では300℃の地震発生帯の天然と同様に、幅数十µmのシリカ脈が4日間で生成された。したがって、50 MPaの流体圧降下が生じる地震発生帯ではシリカ脈は短期間で生成され、これは西南日本の浅いプレート境界での低周波地震の発生間隔に匹敵し得る[5]。さらに、本研究の鉱物脈は、300℃未満での剪断運動によって生成される天然の鉱物脈と類似性があると考えられる[6]。したがって、本研究をもとに、その鉱物脈の形成プロセスと時間スケールを制限するモデルを提案する。
400℃実験では下流で沈殿が観察され、300℃実験と同様の周期的な浸透率の増減が示された。この挙動は岩石内部での新たなき裂や鉱物脈形成を示唆しており、スロー地震の時間スケールに関する知見をもたらす可能性がある。
[1]Sibson, 1992 Tectonophys., vol. 211, 283-293; [2]Weatherley and Henley, 2013 Nat. Geosci., vol. 6, 294-298; [3]Amagai et al., 2019 Sci. Rep., vol. 9, 1–9; [4]Okamoto and Vinis, 2025 Nat. Commun., vol. 19, 1791; [5]Sekine et al., 2010 J. Geophys. Res. 115, B00A27; [6] Fagereng et al., 2010 Nat. Geosci, vol. 38, 751-754;
本実験には庵治花崗岩のコア試料(直径6mm、高さ12mm)を用いた。600℃から急冷し空隙率1.1–2.8%の試料を作成し、地震発生深度に相当する高封圧(Pc)(=100 MPa)下で密封した。シリンジポンプで蒸留水を定圧注入し、上流50 MPa・下流大気圧で50 MPaの流体圧勾配を与えた。したがって液相流体が気相に相変化し、シリカ溶解度が急減する。実験条件は、200℃、300℃、400℃、Pcが100 MPa、上流圧(Pup)が50 MPa、下流圧(Pdown)が0.1 MPaとした。また対照実験として、200℃ではPdown=8 MPa、300℃ではPc=75 MPaまたは Pdown=20 MPaとした。実験中に試料の浸透率の経時変化を測定し、実験後、観察・分析した。
まず200℃実験では、両条件において上流で石英と長石が主に溶解した。Pdown = 8 MPaでは、シリカの沈殿は確認されず、Pdown = 0.1 MPaでは下流端面に網目状のアモルファスシリカ(AS)が沈殿し、浸透率は両条件で1-5×10-19 m2と一定だった。次に300℃では、同様に上流で石英と長石が主に溶解した。Pdown = 20 MPaではシリカの沈殿はなく、Pdown = 0.1 MPaでは下流端面に煙突状ASが局所的に沈殿した。Pc = 100 MPa、Pc = 75 MPaでは、浸透率は10-18-10-19から10-22-10-20 m2に低下した。さらに、Pc =100 MPa、Pdown = 0.1 MPaの実験では、下流端面付近の試料内部に流体流れ方向に垂直なAS脈が生成した。400℃では、下流側のSUS管内に析出物が観察された。16-17日目に、浸透率は10-21 m2から10-23 m2に低下し、その約4時間後に浸透率は10-21-10-20 m2に上昇した。さらにその1時間後には10-22 m2に再び低下し、最終的に10-21 m2でほぼ一定となった。
300℃で高Pc下では、AS脈は約10-20 µmの幅があり、両端が煙突状ASに接続していた。この実験の約2回の浸透率の増減は、次のAS脈形成プロセスに対応している可能性がある。上流で溶解後、流体圧降下で気相変化し、下流端面に煙突状沈殿物が形成され浸透率が低下した。その結果、下流端面付近の流体圧が上昇し、大きな差応力により流路に垂直なき裂が生じ、浸透率が再び上昇した。この繰り返しで浸透率の増減が生じた。
地震発生帯の条件に相当する100 MPa、300℃での流体圧降下により、断層バルブモデルの一部を再現できた。この実験では300℃の地震発生帯の天然と同様に、幅数十µmのシリカ脈が4日間で生成された。したがって、50 MPaの流体圧降下が生じる地震発生帯ではシリカ脈は短期間で生成され、これは西南日本の浅いプレート境界での低周波地震の発生間隔に匹敵し得る[5]。さらに、本研究の鉱物脈は、300℃未満での剪断運動によって生成される天然の鉱物脈と類似性があると考えられる[6]。したがって、本研究をもとに、その鉱物脈の形成プロセスと時間スケールを制限するモデルを提案する。
400℃実験では下流で沈殿が観察され、300℃実験と同様の周期的な浸透率の増減が示された。この挙動は岩石内部での新たなき裂や鉱物脈形成を示唆しており、スロー地震の時間スケールに関する知見をもたらす可能性がある。
[1]Sibson, 1992 Tectonophys., vol. 211, 283-293; [2]Weatherley and Henley, 2013 Nat. Geosci., vol. 6, 294-298; [3]Amagai et al., 2019 Sci. Rep., vol. 9, 1–9; [4]Okamoto and Vinis, 2025 Nat. Commun., vol. 19, 1791; [5]Sekine et al., 2010 J. Geophys. Res. 115, B00A27; [6] Fagereng et al., 2010 Nat. Geosci, vol. 38, 751-754;
