Presentation Information
[T11-O-2]New findings on marker tephras in the Middle Pleistocene Yabu Formation, Shimosa Group .
*Hiroomi NAKAZATO1, Keiya YONEOKA1, Tsutomu NAKAZAWA1, Toru TAMURA1 (1. AIST,GSJ)
Keywords:
Middle Pleistocene,Shimosa Group,tephra,MIS10,Kanto Plain
関東平野に広く分布する中部更新統下総層群薮層(徳橋・遠藤,1984)では厚い海成の砂層が発達し,首都圏の重要な帯水層となっている(風岡ほか,2018).最下部に河川成の砂礫層が発達する場合には,地下水流速が大きいことから地下水汚染の観点からも重要視されている(吉田ほか,2024).また,武蔵野台地では「東京礫層」と呼ばれた礫層が構造物基礎の支持層として利用されてきたが,従来の「東京礫層」の形成時期は複数の層準にわたり,その多くは薮層基底の礫層であることが明らかにされている(納谷ほか,2021).以上のことから薮層を的確に追跡することは,首都圏の地下水学・土木地質学の観点からも極めて重要である.
薮層の認定・追跡に有効な指標テフラとして,徳橋・遠藤(1984)はYb0~5を記載しており,Yb1はA4Pm(鈴木,2003),Yb5はGoP1に対比されている.Yb1は広域テフラKktと混在する(納谷ほか,2021など).薮層下半部ではこれらに加え,Yb1.1(張ほか,2023),Yb1.5(納谷ほか,2021)が記載され,Yb2,3層準には,UR1-No.8(米岡ほか,2025),So-TN,So-OTが挟在する(中里ほか,2024)ことが明らかにされてきた.これらのテフラのうちYb0,Yb1.5,Yb3は直方輝石の屈折率が1.714前後の高いモード値を示す特徴がある.町田ほか(1974)において,大磯丘陵の多摩ロームで地蔵堂層のJ4に対比されるTE-5と上泉層のKm2の対比されるTCu-1の間で同様の特徴を持つテフラを探索すると,TDl-7があげられる.今回,相模原市立博物館所蔵のTDl-7試料について上記3テフラと火山ガラスの主成分化学組成を比較したところ,Yb0とほぼ同じ組成を示すことが明らかとなった(表1).上杉ほか(1985)によればTDl-7(Tll-49)の上位のTll-51層準が海退最末期とされており,この層準が地蔵堂層と薮層境界の低海面期(MIS10)に相当すると考えられる.
Yb1.1は市原市瀬又,成田コア(中里ほか,2004)などで薮層下部の泥層中でYb1の上位に認められる角閃石に富む軽石質テフラで,茨城県かすみがうら市におけるGS-KUR-1コアの薮層下部の陸成泥層でも認められた(張ほか,2023).今回,成田コアとGU-KUR-1コアではYb1.1の上位の泥層に,黒雲母に富み低屈折率火山ガラスと高屈折率角閃石を含む大町APmテフラ群の特徴を示す層厚1-2cmのテフラが認められ,これはA5Pmに対比される可能性が高い(表1).A5Pmは給源付近で分布が狭いとされ(鈴木ほか,2004),群馬県下までは追跡されるものの栃木県鬼怒川低地帯では確認されてこなかった.しかし,成田市及びかすみがうら市での検出により,従来よりも広い分布が推定される.
本報告では,薮層の指標テフラについて新たにYb0が大磯丘陵のTDl-7に対比されること,A4Pmに対比されるYb1の上位にA5Pmに対比可能なテフラがあることを示した.これらの指標テフラの検出により,薮層の基底層準が南関東から北関東にかけてより正確に把握され,薮層最下部の砂礫層の分布や連続性が詳細に評価可能になることが期待される.なお,相模原市立博物館河尻清和氏にはTDlテフラ試料をご提供いただいた.ここに謝意を表します.
引用文献:風岡ほか(2018)都市域の地質地盤図「千葉県北部地域」(説明書),35–44;町田ほか(1974)地学雑誌,302-338;中里ほか(2004)日本第四紀学会講演要旨集,34,59-60;中里ほか(2024)日本地質学会第131年学術大会講演要旨,T8-O-1;納谷ほか(2021)都市域の地質地盤図「東京都区部」(説明書),82p.;鈴木(2003)第四紀研究,42,157-163;鈴木ほか(2004)地学雑誌,113,38-61;徳橋・遠藤(1984)姉崎地域の地質,136p.;上杉ほか(1985)関東の四紀,11,3-15;米岡ほか(2025)都市域の地質地盤図「埼玉県南東部」(説明書),74p.;吉田ほか(2024)日本地質学会第131年学術大会講演要旨,T8-P-2;張ほか(2023)日本第四紀学会2023年大会講演要旨集,60-60.
薮層の認定・追跡に有効な指標テフラとして,徳橋・遠藤(1984)はYb0~5を記載しており,Yb1はA4Pm(鈴木,2003),Yb5はGoP1に対比されている.Yb1は広域テフラKktと混在する(納谷ほか,2021など).薮層下半部ではこれらに加え,Yb1.1(張ほか,2023),Yb1.5(納谷ほか,2021)が記載され,Yb2,3層準には,UR1-No.8(米岡ほか,2025),So-TN,So-OTが挟在する(中里ほか,2024)ことが明らかにされてきた.これらのテフラのうちYb0,Yb1.5,Yb3は直方輝石の屈折率が1.714前後の高いモード値を示す特徴がある.町田ほか(1974)において,大磯丘陵の多摩ロームで地蔵堂層のJ4に対比されるTE-5と上泉層のKm2の対比されるTCu-1の間で同様の特徴を持つテフラを探索すると,TDl-7があげられる.今回,相模原市立博物館所蔵のTDl-7試料について上記3テフラと火山ガラスの主成分化学組成を比較したところ,Yb0とほぼ同じ組成を示すことが明らかとなった(表1).上杉ほか(1985)によればTDl-7(Tll-49)の上位のTll-51層準が海退最末期とされており,この層準が地蔵堂層と薮層境界の低海面期(MIS10)に相当すると考えられる.
Yb1.1は市原市瀬又,成田コア(中里ほか,2004)などで薮層下部の泥層中でYb1の上位に認められる角閃石に富む軽石質テフラで,茨城県かすみがうら市におけるGS-KUR-1コアの薮層下部の陸成泥層でも認められた(張ほか,2023).今回,成田コアとGU-KUR-1コアではYb1.1の上位の泥層に,黒雲母に富み低屈折率火山ガラスと高屈折率角閃石を含む大町APmテフラ群の特徴を示す層厚1-2cmのテフラが認められ,これはA5Pmに対比される可能性が高い(表1).A5Pmは給源付近で分布が狭いとされ(鈴木ほか,2004),群馬県下までは追跡されるものの栃木県鬼怒川低地帯では確認されてこなかった.しかし,成田市及びかすみがうら市での検出により,従来よりも広い分布が推定される.
本報告では,薮層の指標テフラについて新たにYb0が大磯丘陵のTDl-7に対比されること,A4Pmに対比されるYb1の上位にA5Pmに対比可能なテフラがあることを示した.これらの指標テフラの検出により,薮層の基底層準が南関東から北関東にかけてより正確に把握され,薮層最下部の砂礫層の分布や連続性が詳細に評価可能になることが期待される.なお,相模原市立博物館河尻清和氏にはTDlテフラ試料をご提供いただいた.ここに謝意を表します.
引用文献:風岡ほか(2018)都市域の地質地盤図「千葉県北部地域」(説明書),35–44;町田ほか(1974)地学雑誌,302-338;中里ほか(2004)日本第四紀学会講演要旨集,34,59-60;中里ほか(2024)日本地質学会第131年学術大会講演要旨,T8-O-1;納谷ほか(2021)都市域の地質地盤図「東京都区部」(説明書),82p.;鈴木(2003)第四紀研究,42,157-163;鈴木ほか(2004)地学雑誌,113,38-61;徳橋・遠藤(1984)姉崎地域の地質,136p.;上杉ほか(1985)関東の四紀,11,3-15;米岡ほか(2025)都市域の地質地盤図「埼玉県南東部」(説明書),74p.;吉田ほか(2024)日本地質学会第131年学術大会講演要旨,T8-P-2;張ほか(2023)日本第四紀学会2023年大会講演要旨集,60-60.

